[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
一日の終わりです。
それなりに甘い文章を目指しましたが、微妙です…。
清×悠のみ。
大人の時間をご一緒に。
たまには甘い、飲み物と。
『コーヒーリキュール』
可憐の家からの帰り道、外で夕食という話になって。
一応2人ともスーツだから、ちょっとグレード高めのレストラン。
……と、なるわけもなく。
全国チェーンの、ありふれた居酒屋の一角で。
向かいの悠理が、中ジョッキをこくこくと音を立てて飲み干すのを、僕は眺めていた。
「あー、美味いっ!やっぱ頭使ったあとのビールって美味いなぁ」
満面の笑みで、空のジョッキをテーブルに置く悠理は、いかにもなOL風。
この豪快な呑みっぷりを見て、よもや大財閥の令嬢だとは、誰も思うはずがあるまい。
「何を言うやら。お前はほとんど使ってなかったでしょう?頭なんて」
「ひっでー。ったく、お前の口の悪いのも、直んないよなぁ」
僕の指摘に頬を膨らませるなど、まさに子供の仕草。
黙っていれば相当の美女として通るのに、こうまでギャップが激しいと、笑うしかなかった。
「さーて、食おうぜ!あたい、超腹ペコだもんな」
「はいはい。胃薬を使わずに済むような食べ方にして下さいよ」
「わーかってるっつーの!もう、小言多過ぎだよお前。飯が不味くなる」
僕へひたすら悪態をつきつつも、メニュー片手に店員をさっそく捕まえる、その旺盛な食欲に。
心の中で、乾杯。
悠理に奢った割には財布に優しい会計を済ませ、タクシーで辿り着いたのは、僕のマンション。
公には一人暮らしであるが、昨年から荷物の如く悠理が転がり込んで、半同棲状態。
僕としても大歓迎だし、剣菱家からの苦情も全くないので、今の所は交際も順調そのもの。
今日は互いにスーツ姿であったため、上着をリビングに放り出して、とりあえずソファへ直行。
「つっかれたー」
「少々呑みすぎましたかね?」
珍しく愚痴を零す悠理に、ネクタイを緩めながら尋ねると、彼女は眼を丸くして否定。
「まっさかー、あんな程度でそんなのないって!まだまだいけるし」
「……さすがはおじさんの子。見事な肝臓ですねえ」
褒め言葉になるかどうか、微妙な返答をしてしまった。
そんな自分を見て、悠理は曖昧に笑みを浮かべ、席を立とうとした。
「清四郎、水でも飲む?それともビールかな」
「ああ、悠理、ちょっと待ってて下さい」
「ん?」
悠理を制して立ち上がり、僕はカップボードの片隅にひっそりと鎮座していたものを取り出す。
それを見て、悠理が一瞬眉を顰めてから、歓声を上げた。
「何だこれ……って、わ、スタバじゃん!」
悠理の視線は、僕が手に握っていた、スターバックスのコーヒーリキュールに注がれて。
僕は苦笑いしつつ、彼女に尋ねた。
「もらいものです。1杯どうですか?」
「呑む呑むー!」
満面の笑みで手を叩く悠理は、例えようもなく可愛らしいと、本気で思った。
面倒なレシピは抜きで、生クリームをそのままフロートさせるのが、悠理の好みらしい。
適当なグラスを2つ取り出して、酒瓶の栓を切れば、コーヒーの香りが漂った。
「ほら」
「ありがと。うわ、おいしそー」
悠理はいかにも甘めな、そのとろりとした液体が入ったグラスを早速傾ける。
それから、ほうっと息を吐いた。
「やっぱ、甘い酒も美味いなぁ」
「アルコール度数はかなりのものなのに……。お前には脱帽ですよ」
「放っとけ。あたいはどうせ飲兵衛だよん」
僕の皮肉にも、悠理は開き直ったような台詞を返し、またリキュールを一口。
美味ーい、と目元を綻ばせるのが、大変に可愛らしい。
そんな彼女を眺めつつ、自分のグラスを傾けてみる。
とろりとした感触と甘さが、口中を即座に支配して、コーヒーの香りが鼻を抜けていった。
ふと僕は悪戯を思いつき、グラスを持ったまま、悠理に声をかけた。
「悠理」
「ん?」
無意識だろうか、小首を傾げる彼女の細い肩を掴み、グラスの中身を一口含んで。
そのまま唇を重ね、僕から彼女へと送り込む。
「んんっ……」
逃げる舌を強引に絡め、深く深く口付ければ、悠理は抵抗を諦めて。
やがて名残り惜しく離した唇からは、微かにコーヒーの香りが漂った。
「………何すんだよ、馬鹿………」
「カクテル味のキスも、おつなものかと思いまして」
上目遣いで責める悠理の真っ赤な頬に、再びキスを贈ってから。
僕は彼女の耳元で、そっと囁いた。
「悠理、もう一口、どうですか?」
*
大人の時間は、甘く香る。
それは何より、貴方がいるから。
04 | 2025/05 | 06 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | ||||
4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 |
18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 |
25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。