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暇人が開設した二次創作保管庫です。「二次創作」をご存知ない・嫌悪を覚える方は閲覧をご遠慮ください。漫画『有閑』の会長と運動部部長を推してます。
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先月末に書いた『ほんの少し、変わる日常』のその後、悠理一人称の話です。ラブ度低、駄文度高(爆)
関係ない事をだらだらと綴ってしまったようで……反省しきりでございます。

毎年の事だけど、結構悩みの種。
だから今年は、あいつを頼ってみた。

それだけの事、だったけど。

 

 『ほんの少し、変わった気持ち』

 

100%お義理で出席となった、後輩の誕生パーティー。
今日みたいな暑い日用にと作ったスーツは、チュニックタイプのブラウスっぽいジャケットとパンツ。
帽子も靴もアイボリーで合わせ、ちょっと見ではリゾートウェアっぽいかもしんない。
可憐のアドバイスのとおり、オレンジ系統で纏めた花束を抱え、会場入り。
ラフな生成りのサマースーツ姿の美童が、こっちを見るなり寄ってきた。
「悠理、そのスーツいいね。オーダーしたの?」
ご自慢の『王子様スマイル』は本日も絶好調で、だけどあたいには何の効果もない、ってのもお約束。
「ん、そだよ。デザインはデザイナー任せだけどな。涼しくていいぞ」
あたいも笑顔で答え、笑った。
「僕にも着られそうなデザインだよね。真似してもいい?」
「全然構わないぞ。んじゃ、月曜にでも、デザイナーの連絡先教えよっか」
「ああ、是非頼むよ。じゃあね」
美童はウィンクをひとつ残し、さっきまで話してた女の元に戻っていく。
そして残されたあたいは、この暑い中に根性で振袖姿の今日の主賓の元へ。
「本当に来て頂けるなんて……悠理様、感激ですわ」
涙まで浮かべてる相手に、やたらと咲き誇る花束を手にしたまま、笑って見せた。
それから数時間が経過して、無事パーティーもお開き。
そこそこ充実した料理に、そこそこ腹が満足したあたいは、携帯を取り出す。
コールして1回で、相手の落ち着いた声が聞こえてきた。
『もしもし』
「あ、もしもし清四郎?」
今日これから買い物に付き合ってもらう約束を取り付けてた男は、相変わらずの涼しい調子。
奴の言う通り待ち合わせる事にして、通話を終えると指定されたカフェへと歩き始めた。


「……あー、あったあった」
無事辿り着いた店の空いてる席に腰掛け、運ばれて来た水を一口含んで、ほうっと息をついた。
(にしても、アイツ良く知ってんなあ、こんな普段降りない駅の近くの店なんて)
頭の中にぼんやり沸き起こった疑問についてはあまり考えず、小腹が空いた、とメニューを物色。
それから30分程経って、清四郎が店に入って来た時は、BLTサンドが片づいた所だった。
ボタンダウンシャツにコットンパンツ、勿論革靴とジャケットまで羽織ってる姿はどこぞのリーマン。
……あのやたら親父が入ってる服装センス、いい加減どうにかならないもんだろうか。
あたいを発見した奴がこっちに寄って来ると、隣のテーブルの女3人が控え目な歓声を上げた。
ただ奴も日頃から、こういった視線には既に慣れっこで、しかも完全にシカトが慣例。
普段通りの涼しい顔で、あたいの向かいに腰掛けるなり、奴は微かに目を見張って一声。
「おや、意外に皿の数が少ないですね」
「パーティーの飯が案外美味かったかんな。あっちで結構食って来た」
「それはそれは、何よりでしたね。───ああ、すみません、アイスカプチーノをお願いします」
「あたいはアイスオーレ」
清四郎のオーダーを取りにやって来たウェイトレスに、あたいも追加で飲み物注文。
やがて運ばれて来たグラスの中身を傾けながら、話をする。
「悪かったな、お前、休みの日も忙しいのに」
「いいえ、それは気にせずに。ところで、何か買うものの目星はついたんですか?」
「全然。マジで今年はネタが浮かばなくて」
あたいが肩を竦めるのを見て、軽く頷くと、清四郎はニヤリと笑う。
「皮革製品なんて、どうですかね?豊作さんならきっと、愛用してるでしょう」
「ああ……そーかも」
相手の何気ない一言に相槌を打ちながら、あたいは頭の中に、兄ちゃんの贔屓の店を思い浮かべた。
「んじゃ、銀座に行こっかな。兄ちゃんがよく行ってる店があんだよ」
「豊作さんの好みも承知でしょうから、いいかもしれませんな。お供しますよ」
「OK。んじゃ、これ飲んだら出よう」
あたいはグラスに残っていたアイスオーレを勢いよく飲み干し、伝票を掴んで立ち上がった。

 

 

銀座の裏通りに面する、兄ちゃんが贔屓にしてる革製品の店。
名前を告げると即座に奥へと通されて、お茶なんか出されて、店長らしき初老の男性がやって来た。
「剣菱様にはいつもご贔屓にしていただいて……。お嬢様にお越しいただくのは、初めてですね」
「うん。今日はよろしく頼むね」
「お世話になります」
あたいの隣でやたらと丁寧に一礼したのが、何故か清四郎なんだけど。
奴の見た目のせいなのか、それとも落ち着き払った態度のせいなのか、相手は全く気に留めない。
(こんなおっちゃん向けの店で違和感ないコイツって、やっぱ老けてんだなあ)
そんな、清四郎が聞いたら怒りそうな事を考えていたのは、内緒にしておいた。
用件を伝えると、店長は数点の商品を示しながら、色々と助言してくれて。
熟考すること30分、無事にひとつの品物へと辿り着くことができた。
「それでは只今包装して参りますので、もう少々お待ち下さいませ」
「ん、お願い」
その時清四郎の携帯が振動したらしく、奴は「失礼」とあたい達に断り、部屋を出る。
高校生とは思えぬ逞しさの背中を見送りつつ、あたいはふと閃いて。
「あのさ、店長さん。も一個お願いあんだけど、いい?」
あたいの急な依頼に対しても、店長は嫌な顔ひとつせずに了承してくれて、優雅な仕草で席を立った。
やがて清四郎が電話を終えて戻って来ると、静かな声で話しかけてきた。
「良かったですな、プレゼントが無事に決まって」
「ん。兄ちゃんも、実際に使えそうなもんの方が嬉しいだろうな。良かったよ」
あたいがにっこり笑って答えたその時、店長がその手にショッパーを2つ提げて戻って来た。
「お嬢様、大変お待たせ致しました。こちらと……こちらでございます」
「うん、ありがとな」
さすが一流店、と言わんばかりのショッパーは、ご丁寧に片隅のステッカーが色違い。
どうやら中身と色を合わせてくれたらしく、こんな細やかな気遣いが本物だなあ、と思った。


表通りとは違い、いかにもな銀座の風情漂う界隈を並んで歩いてると、清四郎が尋ねてきた。
「ところで悠理。何故袋が2つなんですか?確かお前が選んだのは、ブックカバーだけでしょ」
「あ、うん、そだ。こんなトコで何だけどさ、ハイ」
あたいは首を傾げる相手の手に、ショッパーをひとつ握らせた。
「兄ちゃんと完全に色違いだけどさ、お前に合いそうな色のがあったから。やる」
「僕に、ですか」
「そ。今日付き合わせたからな、そのお礼。嫌か?」
清四郎は、あたいの言葉に軽く目を瞬かせたかと思うと、やがてにっこりと微笑む。
「いいえ、遠慮なくいただきますよ。ありがとうございます、悠理」
頷いてくれた表情が驚くぐらい嬉しそうで、自然とあたいの顔にも笑みが浮かぶ。
「良かった。へへ」
すると清四郎から、唐突な提案。
「では悠理、このお礼と言っては何ですが、夕食を一緒にどうですか?近くにいい店があるんです」
「え、飯はいいけどさ、ここ銀座だろ?高くね?」
「ああ、それは心配なく。僕の財布でも問題ない場所ですからね」
あたいの言葉にも動じず頷く表情からは、相変わらず表情が読めなくて。
それでもタダメシは嬉しいし、清四郎と一緒っていうのは別にいつも通りの事だから。
「んじゃ行く!」
元気に答えると、奴は笑顔のままで、頷いた。
「それでは、まだちょっと時間が早いですからね、どこかでお茶にでもしますか?」
「うーん、でも今コーヒー飲んだばっかだし、まだあんまし腹空いてねえな」
「成程、それもそうですねぇ。ふむ……」
清四郎はしばし、顎に手を当てて何かを考え込んでから、あたいに向き直る。
「じゃあ映画でも行きましょうか。お前の好きなシリーズの新作、確か今公開中でしょ」
「あ、ソレいい!行こ行こ、清四郎!映画館どっちだよ」
「はいはい、行きましょうね。こっちですよ、悠理」
あたいの声に、清四郎は頷くと、不意に自分の手を伸ばしてきて、あたいの手を引き寄せた。


「へ?」
「お前がはぐれるといけませんからね。さ、行きますよ」
「……うん」
何となく、納得できないというか、頭の中に疑問符が踊ったけれど、映画の魅力の方が大きくて。
あたいは清四郎に手を引かれるまま、歩き始めた。
自分よりも大きくて骨ばった、でも魅録程ごつくない、案外綺麗な男の手。
今までも、こんな風に引っ張られる事なんて、数知れず。
だけど意識して、清四郎の手の感触なんて考えた事なかったから。
(……やっぱ、男だよな、こいつって)
あたいが大人しく、言われるがままについて来てるのが、不審だったのか。
「悠理、どうかしましたか?」
清四郎がこちらを向いたけれど、あたいは何でもない、と首を振る。
すると奴は無言で頷き、心持ち歩調を緩めて、でも真っ直ぐに映画館を目指す。
とうに見慣れた逞しい背中は、やっぱり広くて。
自分の手をすっぽり包み込む男の手の温度は、思いがけず心地良くて。
あたいは知らず、口元を緩ませたまま、清四郎に着いて行った。
───こんな風に歩くのも、悪いもんじゃないな、なんて思いながら。


   *


ふたりでの、外出。

それはほんの少しだけ、違う何かが見えそうな。
もうちょっと手前の、ひととき。

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» あ~ん
悠理たんが、かぁいい♪
この悠理大好きw
清四郎も凄く素直で、めちゃイー感じの2人。
友達以上、恋人未満で気持ちにも気付いてない鈍感さがステキw
りん 2008/08/16(Sat)02:20:29 編集
» ありがとうございますー
>りん様
お褒めいただけてよかったです。
私の文章だと、どうも悠理の凛々しさが表現できず、違和感を覚える方が多いような気がするんですよね。
…改善する意欲もないのですが(爆)
こんな感じの鈍感なふたりが、『無自覚』に続いていくんだと思います。
M@管理人 2008/08/17(Sun)22:03:36 編集
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国産ヒト型40代、夫・息子1人がいます。徒然なるまま…ではないですが、勢いに任せ、所謂二次創作をちまっと数年続けてます。
当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。
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