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暇人が開設した二次創作保管庫です。「二次創作」をご存知ない・嫌悪を覚える方は閲覧をご遠慮ください。漫画『有閑』の会長と運動部部長を推してます。
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そろそろ夜更かしモードを切り替えなければと、焦る管理人ですこんばんは。
サイト開設時に一気に書き散らした駄文たちのうち、未アップだったものをアップしてみます。悠理一人称。
全く意味がわからない、と改めて自分でも思いますが…ご容赦を。

なお拍手コメントレス及び本文へのコメント(非公開分)については明日以降とさせていただきます。
申し訳ありません。

 時が止まったかと、思った。 

 

 『衝撃』

 

真夏のリゾート、プライベートビーチ。
昼間たくさん遊んで、夜は思いっきり食って呑んで。
仲間達が全員撃沈したけれど、あたいは軽く一眠りしたら、目が冴えてしまって。
タンクトップとショートパンツの室内着のまんま、パーカーを引っ掛けて、外へ出た。
波が絶え間なく打ち寄せる海岸を、ぼんやりと歩く。
目を閉じて耳を傾けていると、不思議と落ち着く音がする。
よく整備された砂浜に腰を下ろして、空を見上げる。
都会のように光がない場所だからこその、満天の星空。
綺麗だな、って素直に思って。
ふっと頭に浮かんだのは、昔兄ちゃんが教えてくれた歌。
小声で、口ずさむ。


「やっぱり、悠理だったんですね」
途中まで歌っていたときに、急に背中へかけられた声。
びくりと肩を震わせて、振り返った先には。
「清四郎!?何だよ、お前」
「何だよ、と言われましても。見てのとおり、酔い覚ましですよ」
珍しく、ラフなシャツとパンツ姿の清四郎が、にこやかな笑みを称えてやって来て。
漆黒って表現がぴったりな黒い瞳が、こっちをじいっと見詰めていた。
「隣、いいですか」
「……ん」
頷くと、ゆっくりと清四郎が腰を下ろす。
ほんの少しの微妙な距離が、不思議だけど、不快ではない。
空を見上げて、そんな事をぼんやり考えてると、清四郎から声が飛んできた。
「もう、歌わないんですか」
「へ?」
「とても綺麗な声でしたよ。もう一度、聴かせてもらえますか」
穏やかに微笑する清四郎の顔は、ふざけてなんかいなくて。
冗談で言ったわけじゃないと、あたいでもわかる。
「……うろ覚えだから、間違ってても責任取らねーぞ」
そっぽを向いてから、もう一度、最初から歌った。


一通り歌い終わると、清四郎が満足げに溜息。
「ありがとう、悠理」
「……別に」
穏やかな声も、微笑を称えた顔も、いつもと全く違うから、調子が狂う。
何だかいたたまれなくなって、立ち上がる。
「あたい、そろそろ部屋戻る。明日も朝から遊びたいもん。じゃ、おやすみ」
清四郎の方はなるべく見ずに手を振って、早足で立ち去ろうとして。
ぎゅ、と手を握られた事に気づいた。
「なっ……何?」
振り返ると、やたら真剣な表情の清四郎が、じっとあたいを見詰めていて。
黒い瞳に宿る強い光に、射すくめられたかのように、声が出ない。
清四郎は、あたいの手を掴んだまま立ち上がると、ぐいっと強く引っ張って。
途端バランスを失ったあたいの体は、奴の腕の中へ閉じ込められた。
厚い胸板から届く鼓動を感じて、硬直してしまう。
「───逃げないんですね」
意外そうな声が、降ってくる。
見上げた視界に広がったのは、清四郎の怖いぐらいに真剣な顔。
冗談が言えそうな空気は、微塵もなくて。


……駄目。
このままじゃ駄目だって、自分の中で何かが騒いでる。


無理矢理気力を奮い立たせ、滅茶苦茶に暴れて、かろうじて清四郎の腕から脱出。
振り返る余裕なんてないまま、砂浜を全力でダッシュした。
清四郎は、追ってこなかった。
そのまま勢い良く自分の寝室へ駆け込んで、あたいは扉を施錠してから、凭れかかった。
ずるずると全身から力が抜けて、そのまま床へぺたりと座り込む。
燃えるように熱い頬とか、飛び出しそうなほどバクバク言ってる心臓とか。
それらは全て、さっきの出来事が本当なんだと証明してくれる顔で。
もう、どうしたらいいのか、わからない。
「何なんだ、よぉ……」
呻くように呟いて、あたいは窓の外を見た。
硝子の向こうの世界は、今も漆黒の闇の中、星が静かに瞬いて。
清四郎の姿も、見えなくて。
あたいにできたのは、ベッドの上に丸まって、じっと朝を待つことだけだった。


   *


 わからない。
 アイツのことが、わからない。

 自分の事が、わからない。 

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» 衝撃
わーわーわー!
これ続き読みたいです~ぅ。
是非にも続きをば・・・
世間では、こーゆーのをオニ切りと言うのでは?笑
りん 2008/08/16(Sat)02:24:54 編集
» 衝撃
りんさんに一票!
私もこの続きが無茶苦茶読みたいです。
どきどきしました。

心の中で「おいっ!逃げるな!」と叫んでましたが。
とらとぽち 2008/08/16(Sat)14:39:21 編集
» 予想外でした
よもや『続きご希望』が来るとは…(汗)

>りん様
オ、オニですか?<切り方
続きですか…どうしましょう。
今のところ続きは全く考えてません。
夏のうちにどうにか話を転がしてみます。今しばらくお待ちを。

>とらとぽち様
この悠理ちゃんは逃げましたね(苦笑)
上でも書きましたが、この話の続きは全く考えていなかったのですよ(爆)
リクエストも頂戴したので、いずれ捻ってみたいです。今しばらくお待ちを。

皆様、どうもありがとうございました!
M@管理人 2008/08/17(Sun)22:09:18 編集
» 衝撃
こんばんは。はじめまして。
昨日こちらのサイトを見つけて一気に読みふけっております。

文中に出てくる悠理がうたっていた歌、気になります~。きっと清四郎の心を歌っているような曲なんだと勝手に妄想しています。しかも洋楽で。jazzもいいですねー。
曲をからめての続編を楽しみにしています。
katai 2008/08/23(Sat)01:11:03 編集
» ありがとうございます!
>katai様
すみません、コメントを頂戴していたのにチェック漏れでレスが大変遅くなりました…!
管理人のMでございます。
この度は拙宅へのご訪問、本当にありがとうございます。
そして有難いご感想まで…!
今作に関してはご反響が思いがけず大きくて、続編も真面目に考えないといけないなあ、と現在頭抱えております(爆)
今しばらくお待ち下さいませ。
M@管理人 2008/08/28(Thu)23:08:50 編集
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性別:
女性
自己紹介:
国産ヒト型40代、夫・息子1人がいます。徒然なるまま…ではないですが、勢いに任せ、所謂二次創作をちまっと数年続けてます。
当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。
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