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暇人が開設した二次創作保管庫です。「二次創作」をご存知ない・嫌悪を覚える方は閲覧をご遠慮ください。漫画『有閑』の会長と運動部部長を推してます。
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こんばんは。続編のご希望を多数頂戴しているにもかかわらず、新たなお題に手を出す無謀な管理人でございます。
今回のお題も空飛ぶ青い何か。様から拝借しました。全て清四郎一人称で綴っていく予定です。
テーマは『多忙な旦那様と奥様の一週間』…あれ?(汗)

1 張り切り月曜日

充電は完璧。
頑張って、行きましょうか。


   *


浮上する意識と、どこか空虚な感覚。
慣れ親しんだ温もりが見つからない事で、どうやら先に目覚めたようだと判断し、身を起こす。
隣に無垢な寝顔はなく、扉を隔てた向こうの世界では、使用人たちが立ち働く気配。
「……さて、僕も惰眠を貪ってはいられませんね」
誰にともなく呟くと、ベッドから降り、裸体の上に適当なシャツを羽織る。
シャワーを浴びて、身支度を整えてから、食堂へと足を運んだ。
「清四郎様、おはようございます」
「おはようございます」
メイドらと挨拶を交わしつつ、到着した食堂では、愛妻とその兄上が、既に朝食を囲んでいた。
「あ、清四郎、おはよ」
「おはようございます、悠理」
年を経て、すっかり女性らしく成長し、見た目も大層優美になったというのに。
相変わらずのぞんざいな言葉遣いは、呆れ半分愛しさ半分、とでもいったところか。
そんな妻とはまた違った意味で変わらない、穏やかな義兄は、笑顔で僕を気遣ってくれる。
「おはよう清四郎君、早いね。まだ休んでいても大丈夫だったのに」
「おはようございます、お義兄さん。お気遣いありがとうございます」
挨拶を交わしつつ自分の指定席にかけると、絶妙のタイミングで朝食が運ばれて来た。
「いただきます」
箸を手に取り、炊きたてご飯を一口。
今朝も見事な炊き具合の白飯は、何よりのご馳走だろうと思う、僕はやはり日本人。
それから幾分もしないうちに、先に食事を終え、コーヒーを楽しんでいた義兄が立ち上がる。
「お先に失礼するよ、清四郎君。飛行機は正午だったね?気をつけて」
「はい、ありがとうございます」
「じゃ、悠理、僕は出社するから。今日は見送りはいらないよ」
「うん。兄ちゃん、行ってらっしゃい」
にこやかに笑顔で挨拶を交わし、義兄はするりと退席して、残されたのは僕と妻。
相変わらずの食欲の妻は、本日も和洋両方の朝食一人前を綺麗に平らげたばかりのようだった。
……今更驚く事など、何もないが。


「あ、清四郎。空港行く前時間あっか?父ちゃんが一度連絡くれって」
ふと妻が、急に思い出したようで普段より高い声を上げた。
「会長が?わかりました。でも何でしょうね」
「多分、母ちゃんへの伝言か何かだろ?あっちでお前が会うから」
確かに今日の出張先で、僕は夜の会合において義母のパートナー役を務める事が決まっている。
しかし僕としては、義母の相手役には不満がなくとも、妻に対して不満があった。
「悠理。お前も気をつけて行くんですよ」
「え?あ、ああ今夜のパーティーな。だいじょぶだいじょぶ、父ちゃんもいっから平気、平気」
会長のパートナーとして、こちらのパーティーに妻が出席するというのは、どうにも気に入らない。
むしろ僕か彼女が会長の名代を務めても、共にいられる方がどれだけ嬉しい事か、知れなかった。
しかし、幼い頃から家族がそれぞれの職務等で飛び回り、離れているのが当たり前の彼女には。
恐らくそんな僕の不満は、伝わっていない。
(……まあ、悠理に過剰な期待をしても、始まりませんな)
自分で自分を納得させて、僕は食事を終えた。
「ご馳走様でした」
「あ、あたいもご馳走様!」
僕とほぼ同時に食事を終えた妻が立ち上がり、結果、僕等は一緒に部屋へと戻った。
妻が先に入り、続いた僕が後手に扉を閉め、そのタイミングを見計らうかのように。
急に妻は僕へ抱きつき、首筋にぎゅっと顔を埋め、胴体に腕を巻きつけてくる。
「悠理?」
僕はその名を呼びながら、彼女の腰へ手を回し、細い体を腕の中に閉じ込めた。
背は高く細身の体は、うっかり抱き潰しかねないと危惧するほどに軽くて。
僕はその温もりと愛用のシャンプーの香りを確かめつつ、話しかけた。
「どうしたんですか?」
「……充電すんの」
「充電、ですか?」
「ん」
妻はそこまで言うと顔を上げ、微笑む。
「清四郎帰ってくんの、明後日だろ?だから、あたいが寂しくなんないように、お前の充電」


「……!」
共に幼い頃から学友で、付き合いはやたらと長いというのに、この妻は。
未だに何とも可愛らしい言葉を計算もせずに言っては、僕を更に夢中にさせる。
僕はぎゅうっと妻の体を抱きしめ返し、囁いた。
「では僕も、今のうちに充電させて下さいね、悠理」
「ん」
微かに頷く妻の耳が、真っ赤に染まっているのが、また愛しくて。
僕は妻の柔らかな猫っ毛に唇を寄せて、世界でたった一つの愛しい温もりを、心行くまで味わった。


   *


さあ。
今週も、頑張りましょう。



《配布元:空飛ぶ青い何か。様》

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» かわぁいい~♪
なんだ、なんだ、この可愛い馬鹿夫婦わっ!爆
なんて愛すべき2人の姿w

はてさて、これからどう浮き沈んでいくのか楽しみ~!!
りん 2008/08/18(Mon)23:52:03 編集
» ありがとうございますー
>りん様
『可愛い馬鹿夫婦』って表現ぴったりです!
ということで、勝手にいただいてしまいました。
すみません…。

私のテンションで浮かび上がりっぱなしになってしまうかもしれませんが、どうにかこうにか少しは沈めてやりたい所です(汗)<馬鹿夫婦
が、頑張ります。
M@管理人 2008/08/19(Tue)00:19:30 編集
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性別:
女性
自己紹介:
国産ヒト型40代、夫・息子1人がいます。徒然なるまま…ではないですが、勢いに任せ、所謂二次創作をちまっと数年続けてます。
当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。
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