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暇人が開設した二次創作保管庫です。「二次創作」をご存知ない・嫌悪を覚える方は閲覧をご遠慮ください。漫画『有閑』の会長と運動部部長を推してます。
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悠理の憂鬱。
ただし原因は清四郎ではありません。
いつか訪れる未来を勝手に空想…私にも似た経験があるもので。

何気に悠理と清四郎が婚約してる裏設定ですが、ラブな雰囲気皆無かも(汗)

 避けられないことだった。

 だけど。
 やっぱり、悲しくなって。


 『ばいばい。』


中庭で、ぼんやりと、空を見上げる。
お気に入りの場所、お気に入りのベンチ。
青い空に、白い雲。
ふわふわ、ふわふわ。

雲はだんだん、何かの形を取って。

(……タマと、フクに似てる……)

今はもうここにいない、愛猫たちの面影。
目を閉じて、追いかける。

 


多満自慢と、富久娘。
別に血統書なんてついてなかったけど、大事に育てた、大事な家族。
やっぱり彼らにも、寿命ってものがあって。
多満自慢、19年。
富久娘、20年。
どちらも自分が、看取った。

猫は死ぬときに姿を隠すと言われるけれど、彼らはどちらも最期まで、一緒にいた。
加齢とともに、運動能力や食欲が衰えて、一日中寝ている事が多くなって。
さすがに鈍いあたいでも、『そのとき』を予感するようになった。
それでも最後まで、一所懸命看病して。
最後は腕の中で、一声鳴いて目を閉じるのを、見送った。
撫でていたあたいの指を、最後の力でぺろりと舐めて。
ゆっくり目を閉じたのも、2匹とも、同じ。

(あれから、どんくらい経ったっけ……)

富久娘を見送ってから、どうも調子が出ない。
ぼんやりと空を見上げ、ぼうっと過ごす事が多いと思う。
夜遊びにも、行きたくない。

 

 

「ここにいたんですね、悠理」

かけられた声と、両肩の温もり。
正体は、わかってる。
視線の先には、スーツ姿の見慣れた男が、笑ってた。

「清四郎、何か用?」
「おや、つれないですね。婚約者殿のご機嫌伺いに参上したのですが」

清四郎は、片眉を上げて、冗談めいた口調で告げる。

「……サンキュ」

笑顔を作ってみたけれど、きっと力ないものだったんだろう。
清四郎の表情が、曇ったから。

「少し、痩せましたね」
「そうかな」
「ええ」

清四郎は頷くと、あたいの頭を撫でてくれた。
優しい感触が嬉しくて、目を閉じる。

「すぐに忘れるのは、無理でしょうね」
「………」
「でも悠理、お前があの子たちを大好きだったように、あの子たちもおまえを好きだったはずです」
「………そっか、な」
「ええ、勿論。いつも元気で、輝く笑顔のお前が、ね」

清四郎の静かな声が、耳からじわりと響いてくる。

「だから、そろそろあの子たちを、自由にしてあげませんか」
「自由、に?」
「お前がいつまでもあの子たちを思って泣いていたら、あの子たちはは心配で、天国へ行けませんよ」

目を開けると、清四郎が穏やかに微笑んで、こっちを見てて。
じわり、視界が滲んできた。
そんなあたいの様子をわかりきってる清四郎は、唇で涙をそうっと吸い取ってくれて。
ついでに頬にも、軽くキスして。
どこまでも優しい声で、言った。

「だから、とりあえず泣き止みませんか?」

 


恐ろしく現実的で、普段絶対『天国』なんて言葉、口にしないはずなのに。
柄にもない事を言って、あたいを慰めてくれるのが、嬉しいから。

「……清四郎」
「何ですか?」

「ありがとな」

今度の笑顔は、合格だったらしい。
清四郎の瞳の色が、穏やかなものになる。

「とりあえず、中に入りましょう。可憐からケーキを貰ってきましたから、食べませんか」
「ん」

あたいはゆっくりと立ち上がると、空をもう一度見上げた。

2匹の猫のように見えた雲は、もう形を変えていた。


   *


 大事な、大事な、家族たちへ。

 ばいばい。
 ……ばいばい。

 もう少ししたら、笑うね。

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» 涙…
涙で読めませんでした…。
うちのネコも今、そういう時を迎えつつあるので…。
でも、フクもタマもきっと悠理と一緒に過ごすことができて、幸せだったと思います。
涙で読めません… 2008/06/18(Wed)20:21:36 編集
» 涙です
私も似た経験をしたので(但しウチは犬でしたが)思い出しちゃった。ぐすん
ウチの子もきっと今頃元気で駆け回ってると思います。
タマもフクも姿はナイけど、これからも悠理の心の中に生き続けていくんですね。

ホントにこちら様の清四郎ってば優しいっ!
りん 2008/06/18(Wed)23:50:53 編集
» すみませんー(汗)
数年前の実家の猫の臨終を思い出して書いてみたのですが…同じご経験の方、多いのですね。
私も今、実家にいる猫ズ3匹が共に19歳を迎えまして、新たなお別れに近付きつつあります。
遠く離れた地に住んでいるため、たまにしか会えませんが、猫たちは幸せそうです。
このまま最期まで、幸せでいて欲しいと思います。

>涙で読めません… の方
この度はコメントありがとうございました。
拙文で辛いお気持ちにさせてしまったようで、申し訳ありません。きっと悠理のような、猫思いの優しい飼い主さんでいらっしゃるのですね。
お宅の猫、大切になさってあげて下さいませ。

>りん様
コメントありがとうございました!
拙文で辛いお気持ちにさせてしまい、申し訳ありません。私の猫も心の中では一生駆け回っていますので、タマやフクもきっと同じだと思っています。
拙宅の清四郎は、悠理だけにはひたすら甘く優しく、が基本でございます。

皆様、ありがとうございました。
M@管理人 2008/06/19(Thu)00:05:28 編集
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自己紹介:
国産ヒト型40代、夫・息子1人がいます。徒然なるまま…ではないですが、勢いに任せ、所謂二次創作をちまっと数年続けてます。
当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。
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