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どうやらこの甘さがいいのかしら…?ご反響と拍手数が過去最高になりました。
このまま妙なテンションで、本日も参ります。
2 まだまだ火曜日
君ばかり、思い出されて。
*
昼の会議も、夜の会合も無事完了し、義母からもお褒めの言葉。
「万作さんの次に優秀かもしれないわね」
……相変わらず会長夫妻の熱愛っぷりは健在だ、と内心微笑ましくさえ思う。
ホテルの一室で、飲み物片手にぼんやりと思い出すのは、やっぱり愛する妻の事。
(悠理……)
取り出した携帯電話の待ち受け画面は、昨日出発前に撮影した妻の笑顔。
こんな風に、彼女の笑顔を持ち歩くことができるようになった時、僕等はまだ学生で。
恋愛感情未発達な彼女と、情緒障害者と言われ続けた僕の、無器用極まりない恋愛。
周囲の友人知人を巻き込み、はらはらさせ通しの中で、それでも必死に育んだ想い。
互いを愛し愛され、周囲からも祝福されて華燭の典を挙げた僕等は、心から幸せだと思う。
(……まだ起きてますかね)
既に日付が変わったが、無性に声が聴きたくなって、登録番号の一番最初にコールする。
一度のコール音で、即座に望む声が届いた。
『もしもし、清四郎?』
学生時から変わらぬ、通りのいいアルトの響きが、僕の心に染み渡る。
「悠理、まだ起きてましたか。今、話しても大丈夫ですか?」
『へーき。そっちは上手く行ったん?』
「ええ、勿論。お前の方はどうでしたか?」
『ま、ぼちぼちかな。お前忙しかったのな、もう火曜日になってんじゃん。お疲れー』
えへへ、何て笑う妻の声は、疲れた心の特効薬。
どれだけ仕事に忙殺されても、妻の声が聴けるだけで、安らぎを得られる自分。
「悠理」
『ん?』
「愛してますよ」
小さな携帯電話の向こう、恐らく今妻は言葉を失って、固まっているだろうと断言できる。
数秒経過して、硬直から解かれた妻の絶叫。
『……、ばっかやろぉーーー!』
「こらこら、僕の鼓膜が破れますよ。落ち着いて下さい、悠理」
『だったらそんな恥ずかしい台詞言うなぁ!この恥知らずっ!』
確実に真っ赤になって叫んでいるであろう、愛妻の姿が手に取るようにわかり、笑みが零れる。
僕は一度深呼吸してから、未だに喚く妻が落ち着いた頃を見計らって、声を出した。
「おや?愛する妻に想いを告げるのは、夫として当然でしょう?お前のご両親と一緒ですよ」
『あ、あの2人と一緒にすんないっ!あんな今だに恋愛真っ最中の……』
「僕だって、お前とずっと恋愛中のつもりなんですがねえ」
『!?』
再び言葉を失った妻に向かって、僕は尋ねた。
「悠理、嫌ですか?」
数秒の空白を経てから、高性能な電子機器を通して送られる、妻の声。
『……ヤじゃないに、決まってんじゃん……。あたいも、好きだから』
うっかりと。
自分の頬が赤く染まっているであろう事が、推測できた。
*
離れていると、君ばかり思い出す。
まだまだ恋愛中の、僕と君。
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当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。