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3 少し休憩水曜日
本日は、少し息抜き。
*
分刻みのハードスケジュールを、無事にこなして出張から帰宅。
既に時刻は午後11時過ぎ、剣菱家もさすがに静まっていた。
でも。
「清四郎、お帰り!」
僕を出迎えてくれたのは、快活な響きの妻の声。
「悠理。まだ休んでいなかったんですか?」
「だって、今日帰って来るってメールくれただろ?」
妻は僕に、最高の笑顔で微笑む。
僕を出迎えるのは、当然だと言わんばかりの態度が、愛おしくて。
妻は時折、驚く程に古風と言うか、見た目とは違う態度を取ることがある。
恐らく両親を見ていたためか、夫である自分を気遣い、さり気なく立てようとする態度。
彼女の母が、父を立てるのを見続けていたからなのだろうか。
ぼんやりと考えていたら、妻が僕の顔を覗きこんできた。
「……清四郎、大丈夫か?もう寝た方がいいんじゃないか?」
眉間に皺を寄せ、僕を気遣う声の調子は、心からの心配の情。
僕は首を振って微笑むと、言い忘れていた言葉を告げた。
「ただいま戻りました、悠理」
「──ん。お帰り」
妻の笑顔が、一段と輝いた。
部屋に戻って扉を閉めた僕が真っ先にしたのは、妻を抱き締める事。
妻も大人しく僕に身を預けてくれて、愛用している石鹸の、柑橘系の香りが甘く鼻を擽る。
そっと頤を持ち上げて唇を重ね、唯一無二の甘さに酔い痴れる。
唇を離すと、妻はそうっと目を開けて、もう一度僕へ微笑みかけた。
「……寂しくありませんでしたか?僕がいなくて」
「たった2日じゃん……。でも、ちょっと、ね」
「2日も、ですよ」
「──うん」
素直に頷き、甘えてくれる妻の態度が嬉しくて、僕は再び唇を寄せる。
その時無粋な、扉をノックする音。
「あ、きっとお茶だよな」
妻は僕からするりと離れ、扉へ駆け寄る。
僕は仕方なく着替えようと思い、クローゼットへ足を向けた。
背後で妻がメイドに礼を言い、盆か何かを受け取るような音がして、扉が閉まる。
「清四郎、お茶飲むだろ?」
「ええ、いただきますよ」
背中にかけられた声に答え、僕は普段着に袖を通した。
休む間もなく、明日はまた仕事がある。
せめて今のひと時は、愛する妻と2人で穏やかに過ごそう。
*
彼女がいてくれる空間こそが、僕の安らげる空間。
ひと時の、息抜き。
《配布元:空飛ぶ青い何か。様》
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当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。