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暇人が開設した二次創作保管庫です。「二次創作」をご存知ない・嫌悪を覚える方は閲覧をご遠慮ください。漫画『有閑』の会長と運動部部長を推してます。
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空飛ぶ青い何か。様から拝借しているお題、6日目です。
ちょっと「郷愁めく」を上手に表現できませんで、「懐かしむ」ぐらいになってしまいました(汗)

6 郷愁めく土曜日

懐かしむのは、君たちも?


   *


自宅パソコンに向かい、来週以降の予定をチェックしていた僕の足元へ、温かな圧迫感。
しかも時間差。
机の下を覗いてみて、正体を知る。
「……おや、どうしました?」
そこには妻の愛猫多満自慢と、富久娘の姿があった。
2匹とも大きな瞳でじいっとこちらを見上げつつ、時に体を僕の足へ擦り付けている。
飽きもせずに同じ動作を幾度か繰り返した後、彼らは僕の足の匂いをくんくんと嗅いで。
再び擦り寄る動作を始めた。
ふとパソコンのモニター内の時計表示に目を向け、やっと彼らの行動の理由を察した。
「ああ、そういえばこの時間は悠理と庭の散歩でしたねえ、お前たちは」
「「うにゃー」」
我が意を得たり、と言わんばかりの2匹の合唱に、僕はパソコンの電源を落として立ち上がる。
「……悠理が恋しいんですね?僕も一緒ですよ」
「「なー」」
「彼女を恋しがる者同士、たまには一緒に過ごしますか。今日は僕のお供で我慢して下さいよ」
2匹の前に屈んで頭を撫でてやると、彼らは再び声を揃えて鳴きながら、僕の手に頭を押し付けた。


広大な敷地の中、義父母の超個性的な趣味が激しく主張し合う庭を、猫達を従えゆったり歩む。
勿論犬とは違うのだし、何よりここは家の敷地内だから、猫達には散歩用のリードも不要。
多満自慢は時折目に留まった虫を追い、富久娘は周囲の花の香りを確かめながら、庭を跳ねて。
穏やかな休日が、ゆったりと流れる感覚。
思えば初めてこの家に足を踏み入れた中学時代、彼らは既にここで妻と共にいたのだ。
「こっちがタマでこっちがフクってんだ、どっちもあたいが育てたんだぞ!」と。
初めて剣菱邸を訪ねたとき、愛猫達を紹介してくれた当時の妻が、胸を張っていたことを思い出す。
出来うる限り毎日の散歩や運動をして、餌やトイレの始末まできちんとこなしていたようで。
友達になってから初めて知った、妻の意外な一面に、密かに驚いていたものだったが。
時を経て妻も成長し、猫達も年を重ね、人で表せば既に高齢の域に達してはいるけれど。
年齢の割には2匹とも大層丈夫で、その毛艶も輝くばかりなのは、妻の愛情の賜物だろう。
何せ彼女は、身近にあるもの全てに対し、惜しみなく愛情を注ぐ事のできる人だから。


仕事に追われ、しかも妻が傍にいないという寂しいひと時。
その愛猫達が楽しげに庭で跳ね回る姿を眺めていると、思いがけず安らぐ心を自覚した。
「タマ、フク、そろそろ部屋に戻りましょう。お前たちもおやつの時間でしょう?」
僕が腕時計を確かめながら声をかけると、2匹は高く鳴いて、足元へと寄って来た。
それからまた僕の両足に何度も擦り寄って、甘えたような声を上げる。
(……何だか、今の僕を見るような気持ちになりますねえ)
きっと自分も傍から見れば、こうして妻を恋しがる猫のように見えているのだろうか、と。
柄にもない事を考えて、自然と口元が緩んだ。
そしてふと思いつき、ポケットに持ち歩いていた携帯を取り出し、カメラを起動して。
「タマ、フク、いい顔をして下さいよ。悠理に送る写真ですからね」と声をかけてみると。
彼らは心得たとばかりに寄り添って、大層いい表情を示した事実に目を見張り、笑みが浮かぶ。
2、3枚程撮影してから、画像データの転送処理をして、僕は携帯をポケットに仕舞い込んだ。
(きっと悠理も、喜びますね)
「ありがとう。さあ、行きましょうか」
「「なー」」
僕は先程と同じように猫達を従え、自室までゆったりと歩いていった。


   *


貴女が愛でる者を慈しむと、やはり貴女を思い出す。
誰より愛しい貴女の事を。

きっとそれは、貴女も同じ。

僕等には、お互いの存在こそが、懐かしく愛しい場所だから。




配布元:空飛ぶ青い何か。 様》

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» 6 郷愁めく土曜日 【浮き沈み1週間7のお題】
おぉ!タマ&フク登場だ!
寂しい清四郎と寂しいタマ&フク。
一緒に過ごしてチョットは癒されたかな。
いよいよ悠理たんのお帰りで、清四郎は天にも昇る気持ちですね(笑)
りん 2008/08/23(Sat)01:12:02 編集
» 傷を舐めあう同志です…
>りん様
どうしてもタマとフクを出してしまうのは、猫好きな管理人の性でございます(苦笑)
愛らしい彼らが癒しになってくれるといいですね。

これで明日悠理と会えなかったら…沈みっぱなしで清四郎が浮かんでこなくなりますね。
頑張って浮かせようと思います。
M@管理人 2008/08/23(Sat)01:16:22 編集
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自己紹介:
国産ヒト型40代、夫・息子1人がいます。徒然なるまま…ではないですが、勢いに任せ、所謂二次創作をちまっと数年続けてます。
当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。
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