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いきなり更新ストップさせてしまって申し訳ありません…月の障りで撃沈でございました(爆)
久々に強烈なパンチを食らい、更にPTA会合やら参観日やらの学校行事が目白押しでふらふらに。
何とか片付いたので、本日久々のSSアップでございます。
拍手レス等はすっかり溜まってしまっていますので、後程改めて。
とりあえず、以前書きかけて放置していたテキストファイルから発掘した一作を。
大人向けシチュエーションもありますが、それっぽい描写はないです(笑)
悠理一人称ですが、ちょこっとだけ野→魅っぽいシーンが含まれますので、お嫌な方はご注意を。
それはとても幸福な。
そして、不幸な。
『非凡な基準値』
珍しく、女3人だけが集う部室で、物憂げな顔の可憐が漏らした。
「考えてみれば、私も野梨子を笑えないわ……」
「は?」
「え?」
差し入れをぱくついてたあたいは顔を上げ、棋譜を読んでいた野梨子は眉間に皺を寄せる。
「可憐、今の台詞はどういう意味なんですの?聞き捨てなりませんことよ」
ついでに野梨子は、きりりと表情を引き締めると、可憐にずいっと詰め寄った。
すると可憐は、やたらと大袈裟に溜息をひとつして、野梨子とあたいを交互に見つめてから。
徐に、口を開いた。
「私も、それから悠理もよ。男の基準が、変に厳しくなっちゃってるの」
可憐の言葉に、思わずあたいと野梨子は顔を見合わせて、お互いに首を捻った。
そんな様子を見ていた可憐は、寂しげに笑う。
「……そうなのよ、あんたたちって特に意識もしてないのよねぇ。だから余計に悲惨なのよ」
「可憐、さっきから自分だけ納得してっけどさ、そんな説明じゃわかんねぇよ」
「そうですわ。大体『殿方の基準』と言われましても何の事やら、全く検討もつきませんわよ」
あたいも野梨子も、一緒に可憐に詰め寄って、説明を促した。
すると可憐はあたいたちに流し目をひとつ寄越して、教えてくれた。
「いい、2人とも?私達が一番良く知ってる男達を見てごらんなさいよ」
「良く知ってるって……倶楽部の男連中の事かよ?」
可憐はあたいの上げた声に対して頷くと、続きを話す。
「美童も魅録も清四郎も、タイプは全然違ってるけど、皆、かなりレベルは高いのよ。顔も中身も」
「……レベル……かよ?」
あたいが首を傾げる横で。
「可憐、その意見には、賛成しかねますわ」
野梨子がきっぱりと反論した。
「美童は女性関係が派手過ぎですし、清四郎は情緒障害。性格的な合格点は魅録ぐらいですわよ」
「……へぇ?」
澄ました顔で言ってのけた野梨子に、可憐はにやりと笑う。
「男嫌いのあんたでも、魅録は合格点だって認めるんだわね。いい事聞いたわ」
「まあ、可憐!?わ、私別にそんなつもりじゃ」
自分の意見に思いがけない突っ込みを入れられて、野梨子の頬が見る見るうちに紅く染まった。
可憐がなおも野梨子をからかおうとしていると。
「あれ、今日は女の子達だけ先だったんだね?」
「珍しい事もあるもんだな」
「おや、本当ですな」
唐突に部室の扉が開くと、男性陣が勢揃いしてしまって。
「可憐、時間切れみたいだな」
「……来るのが早過ぎよ、アンタ達……」
あたいの言葉に、可憐は思わず呟いていた。
「………って、可憐が力説してたんだよ」
「成程。彼女らしいですなあ」
あたいの言葉に頷いたのは、清四郎。
因みに今は部室ではなく、あたいの家。
時間は、真夜中。
ついでに言えば、お互い生まれたまんまの格好で、シーツの上に寄り添って。
先程まで一戦交えていた所で、少し声が掠れてるけど、絶頂の余韻でぼうっとしてた意識は覚醒。
清四郎の硬い腕を枕に、ぼそぼそと昼間の話をしたところだった。
ちなみに、今の2人の関係は、仲間達にはバラしてない。
そろそろ言おうか、なんて相談してたりするのだけれど。
「どうやら野梨子は魅録相手なら、恋をするのもまんざらでもないですな」
「みたいだな。意外だったけどさ」
魅録に対する野梨子の評価に、清四郎は興味深げに感想を述べていた。
「でもまあ、魅録ってあんなナリして真面目だしな。お堅い野梨子にゃいいかもな」
昔あたいに軟派させてたけど、一度もお持ち帰りとかしてなかったしなー、なんて言い添えて。
あたいは視線を清四郎から外し、ベッドサイドの携帯を取り上げて、時間を確認。
「もう1時かあ。お前、明日じっちゃんの所行くんだろ?そろそろ寝ないと」
「悠理」
唐突に、あたいの髪をなでながら、清四郎が囁いた。
「何?」
「お前にとってはどうなんですか?」
ベッドサイドのランプが仄かに照らす部屋の中で、清四郎はあたいの顔を覗きこんだ。
いつもと違う下ろした前髪の間から、深い黒を湛えた瞳が、じいっとあたいを見下ろしている。
「清四郎?」
「魅録や美童は、お前にとって魅力的な男性だと思いますか?」
真剣なその口調の裏に隠された感情には、何となく覚えがあって。
あたいは大きく溜息をついてから、清四郎の頬に手を伸ばし、軽くつねる。
「痛いですよ、悠理」
「そんなに力入れてないじゃんか。お前なあ、独占欲強過ぎ。馬ー鹿」
清四郎の抗議には構わず、あたいは軽く頬を膨らませて反論。
「確かに魅録も美童もダチにすんならイイ奴らだけど、男としては見れないもん」
「悠理……」
「あたいが今、男として見てんのはお前だけなの!疑うのもいい加減にしろよな、清四郎」
そう言ってから身体を起こし、さっき軽くつねった頬に、そうっと唇を落として。
「……痛かったんだから、夢じゃないだろ」
口にするのもこっ恥ずかしい台詞を言ってやってから、睨みつけた。
すると。
「そうですね……。これは確かに夢じゃありません」
清四郎が吐息混じりで笑ってから、あたいをぎゅうっと抱き締める。
「確かにお前は僕の腕の中にいますね、悠理」
「決まってんじゃんか!ほら、もう寝ないと駄目だろ、離………っ」
あたいが言葉を発しようと開いていた唇は、清四郎のそれにいきなり塞がれて。
結局のところ。
そのままいいように翻弄されたあたいは、それ以上何も言えなかった。
*
最上の相手がいるから、幸福。
他に誰も考えられないから、不幸。
まあ、結局は。
惚れた相手こそが、現在の基準って事だろう。
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当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。