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えー、急遽土日で実家とんぼ返りの旅を決行しますので、週末は更新できない見込みです。
どうぞご了承下さいませ。
今更かよっ!と多方面で囁かれそうな気がする【契約シリーズ】を投下します。
何というか…清四郎が壊れてますかね(汗)悠理一人称です。
ひとりで独占、じゃなく。
みんなで一緒がいい、って思う。
『追加条項』
ほぎゃあ、ほぎゃ、ほぎゃ……
朝っぱらからモニター越しに届く鳴き声に、怒鳴りつけるように返答する。
「あー、ハイハイ今行くぞー!」
今日もきっと一日中忙しいな、と頭の中を掠める予感。
ばたばたと支度を済ませて、ベビールームへ直行。
着いた先では、かつてのあたいに良く似た感のある超元気な女の赤ん坊が、文字通り大暴れ。
昨夜の授乳後に身体にかけたタオルケットは豪快に吹っ飛んで、着ている服さえよれていた。
とはいえ髪は漆黒、顔立ちも今のところは父親の清四郎に似てる感が強いウチの娘。
奴が文字通り骨抜きにされてるのは、もう見え見え。
「ハイハイ若菜、待たせたな母ちゃんだぞー。腹減ったのか?」
急いで抱き上げながら、指を口元に差し出すと、今にも食いつきそうな態度。
こりゃ間違いないな、なんて考えながら着ていたチュニックの授乳口から乳首を取り出し。
「ほいっと、お待たせー」
椅子に腰掛けてから乳首を含ませると、途端に物凄い勢いで飲み始めた。
ふごふごふご、と息つく間もなく、全身を使って一心不乱に母乳を飲み続ける赤子というものは。
何というか……ポンプ車みたいだな、といつも思う。
洗濯板だとか、雅央よりないだとか言われ続けた自分の胸。
周囲の予想を120%裏切って、母乳の出はやたらと順調で、娘がたまにむせる程。
更に妊娠と出産を経て、期間限定とはいえ、サイズが2段階程成長していた。
こんな筋ばった男っぽい身体の自分が、ちゃんと母の身体に変化していくってのにも驚いたが。
清四郎がくそ真面目な顔で「今のうちですから」と、可憐ばりの服を着せようとしたのには、鉄拳制裁を食らわせてやった。
……確かに成長して悪い気分じゃないってのは事実だが、そうじゃないだろ、馬鹿男。
(ったく、どこまでムッツリなんだよ、あの野郎は)
思わず悪態もつきたくなるけれど、一応あれでも剣菱の会長候補で、何より一応自分の夫だ。
これ以上馬鹿な真似さえしなければ、あの時の拳による痣だけで済ませてやろうと思っている。
自分も丸くなったもんだ、としみじみと感じながら。
そんな事を考えつつ、まだ頑張って母乳を飲み続ける娘をじいっと見つめていると。
娘はちらちら視線を彷徨わせつつ、結局は母親の自分を見ている時間が一番長いのだ。
その澄んだ黒い瞳が自分を捉えている現実が、何となく嬉しい。
やがて娘が乳首を離したので、どうやら空腹が満たされたのだろうと推測。
「……お、満腹みたいだな。美味かったか?」
娘を抱き上げ、背を軽く数回叩くと、盛大なげっぷの音がした。
よしよし、と思った所で部屋の扉がノックされ、夫である清四郎が静かに入って来た。
「おや、悠理、おはようございます。若菜はもう食事が済みましたか」
「ん、まーな。清四郎もおはよ」
「お疲れ様でした。おむつ交換は僕がしますよ」
笑顔で両手を差し出してきた清四郎に娘を託し、あたいは椅子から立ち上がって。
やたらと慣れた手つきで清四郎がおむつ交換を済ませ、再び娘を抱き上げるのを見ていた。
ああ、何だろうな、あの無表情仮面が見る影もないよ。
娘の一挙手一投足にやたら素直に反応し、笑みを浮かべたり驚愕したり。
男親は娘にメロメロになる、って話は聞いた事があったけど、よもやこの男が……と。
最初呆れて物も言えなかった自分も、随分と鍛えられた事だと思った。
「清四郎、こっちに若菜寄越して。今日は母ちゃんが世話したいんだってさ」
「……そうですか、わかりました」
あたいの言葉に、清四郎は見るからに気分を下降させつつも、娘をこちらへ手渡してくれた。
腹も満たされ、おむつ交換で気分も良くなったのだろう。
あたいが抱っこしていると、娘は小さな欠伸をひとつするなり目を閉じ、夢の中へ。
ぐずる事もないから、あやす必要もほとんどない、何とも楽な寝かしつけである。
「相変わらず寝つきいいなあ、若菜」
「本当ですな。誰に似たのか知らないですが、ここは手がかからず助かりますな」
「抱っこされてるからだよな、きっと。温かくてほっとするもんなー」
娘の寝顔に笑いかけながら話しかけると、不意に清四郎が表情を変える。
「ん?どうかしたか」
顔を上げたと同時に、あたいの肩は清四郎に掴まれて、引き寄せられた。
間に娘を挟んでの両腕の拘束は、変わらずに優しい。
清四郎の逞しい胸から、規則正しい心臓の鼓動がどくどくと響いて、心が落ち着くのがわかる。
「急に何だよ、お前」
「いえ、大したことではないんですよ。ただ、久し振りだなあ、と」
「……あれ、そうだっけ?でも、そっかあ……」
記憶を辿ってみて、確かに清四郎の胸を前回借りたのは、相当前の事だったと思い出す。
昔はこの温もりに幾度となく身を委ね、助けてもらってたのに、何故?
──ああ、そうか。
「清四郎?」
「何ですか、悠理」
あたいは清四郎に抱き締められたまま、娘を抱き締める腕にちょっとだけ力を込めて。
自分の夫の整った顔を見上げ、笑いながら話した。
「お前と結婚してからずっと幸せだったから、借りないでも大丈夫だったんだな」
「……悠理」
何故かちょっとだけ呆然とした表情の清四郎に構わず、あたいは続ける。
「これからは、あたいよりも若菜とか、他にもきっと家族が増えるだろうから、そっちに貸してやってな?ここ」
「悠理」
「いいだろ?だってお前とあたいの子供だろ」
満面の笑顔で言ってやると、清四郎はしばしあちこちへ視線を彷徨わせて。
あたいを見下ろしてから、眉根を下げて溜息をひとつ。
それから静かな微笑みを浮かべつつ、あたいの耳元へ言葉を囁く。
涼しい顔した男の言葉に対して、あたいが過剰な反応を示したのは、言うまでもない。
*
『みんなで一緒』は嬉しいですが。
何よりも、僕は貴女を『ひとりで独占』したいんです。
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当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。