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と申しますのも、うっかり別ジャンルの閲覧に走ってしまってたり(爆)実家でアクシデントあったりで。
思った以上に忙しくしていました。お客様には、申し訳ありませんでした。
とりあえず拍手お礼文を入れ替えましたが…また意味不明な文章で(汗)不調ですね。
電脳世界へ、素敵お題でも探す旅に出かけようと思います。
庭を歩くと、遠くから耳に飛び込む独特の鳴き声。
「……あ、ヒグラシ」
実際に近寄って聞くと、物悲しい印象なんて、吹き飛ぶぐらい声は大きいけれど。
この程度の距離で聞くならば、効果は満点。
見上げた空の西側で、もうすぐ日が沈もうとしていた。
『薄明』
東の空は、既に群青を通り越した、夜の色。
でも夕陽に照らし出された西の空は、今もなお紅に燃えていて。
刻々と変わる色彩の変化に、視線も心も奪われていると。
「ここにいたんですね、悠理」
ヒグラシの声なんかより、確かに耳に届く声。
振り返ると、薄闇に覆われた庭をゆったり歩いてきた、男の姿。
表情は、ここからじゃよく見えなかった。
「清四郎。どうかしたか?」
「どうかしたか、じゃありませんよ。今何時だと思っているんですか?」
呆れ顔で返されて、首を傾げると、吐息で相手が笑う気配。
そして、清四郎がゆったりとこちらへ歩いてきた。
「お前、いつ来たの?」
「つい先程です。そろそろ夕食らしいですからね、お前を探しに来たんですよ」
あたいの問いかけに答えた清四郎の表情は、いつも通りの笑顔。
「さあ、家に戻りましょう。もう日が沈んでしまいますからね」
「うん」
差し出された手を掴み、歩き出す。
掴まれた手の温もりに安堵しつつも、夜の帳に覆われつつある庭先は案外暗い。
とはいえ、幽霊でも出ない限りは、怖くも何ともないのだけれど。
「日が沈むのが、早くなったよなあ」
ふと思った事を口にしてみると、清四郎の足がぴたりと止まる。
こちらへ振り返ったその表情は、いつものような愛想笑いも何もない、無表情。
「何?」
首を傾げたあたいの頬へ、清四郎の大きな手が触れた。
「───悠理。ひとつ教えておいてあげましょう」
幼い子供を諭すかのような、清四郎の声。
「夕暮れ時は別名『逢魔時』です。人が魔に魅入られやすい」
「……『魔』?」
「魔が差した、の魔ですよ。邪念というか、出来心というか……」
そこで清四郎は、一度言葉を切ってから、あたいをじいっと見つめて。
「でも本当は、魔が差したのじゃないんです。本来その人の中にあった、欲望が具現しただけの事」
「ふぅん……?」
「───だから、僕の今からの行動も、出来心じゃないんですよ。それを忘れないように」
付け加えるように急いで言うなり、清四郎は素早く身を屈め。
一瞬だけあたいの唇を掠めて離れていく、温もり。
(え……?)
正体を覚る前に、清四郎は再びあたいの手を引き、歩き始めた。
さっきよりも、掴まれた手の温度が上がっているような気がするのは、きっと気のせいじゃない。
だって今、自分が真っ赤になって火を噴きそうな程、紅潮しているのがわかるから。
そして、目の前を無言で歩いてる男も。
*
一瞬の、温もりの記憶は。
魔が差したんじゃなくて、魔の力が導いただけ。
望んでいたのは、お互い様だから。
(掲載期間 2008.8.25~2008.9.2)
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当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。