[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
実は拍手入れ替えを除いて、9月になってから新作は初めて…という体たらく(哀)ご勘弁下さいませ。
二次創作にハマる者の定めなのでしょうか(←大袈裟)、うっかり別ジャンルにちょっと覚醒気味です(爆)
読み漁ってるだけなので、書くには至っていないのですが…。申し訳ない限りです。
えーと、もうすっかり過去の話ですが、オニ切りとお言葉を戴いた(笑)『衝撃』の清四郎サイド話です。
せっかく「歌絡みを」と有難いコメントも頂戴していたのに、全然絡められませんでした…!申し訳ありません。
ない知識をフル活用して色々聴いてみたのですが…駄目でした。諦めます。
この次はちゃんともう少し考えてから書き…たいです。
時を、止めたかった。
『衝動』
例年通りに実行された、6人での夏休みの旅行。
酒盛りで最後まで残ったものの、多少の酔いを自覚して、外に出てみることにした。
人気のない浜辺を歩く、存外心地良い感覚の中、不意に耳がキャッチした歌声。
見つけた声の主は、日頃の光の下で透けそうな髪が夜の闇に覆われて、どこか希薄な存在感。
声をかけると、びくりと身を竦ませて、こちらへ振り返る。
闇の中でも強い存在感を放つ瞳に、初めて彼女の確かな存在を確認し、心の中で安堵した。
隣へ腰を下ろし、その歌声に耳を傾け、絶え間なく打ち寄せる波と星空を眺めて。
驚く程に安らぐ心と、逆に激しく高鳴る胸の鼓動に、思い当たる感情はたったひとつで。
よもや抱く事などあるまいと、妙な確信をしていた自分自身が驚く。
その時、不意に悠理が立ち上がり、早足で立ち去ろうとして。
──逃がしたくない。
それは最早、意識せずに行った行動だった。
喧嘩が趣味だと公言するのが信じられない程華奢な、女性らしい手を掴み、細い体を抱き寄せる。
男のそれとは明らかに違う、柔らかな温もりと甘い香りに、眩暈すら覚えて。
唐突な己の行動に、身を硬くした彼女に向かって、囁くように告げる。
「───逃げないんですね」と。
言葉の意味をどう受け止めたのか、急に暴れ出し、僕の腕をすり抜けて、駆け出した悠理を。
僕は追わなかった。
*
翌日の悠理は、意図的に僕を避けていた。
仲間達は明らかに不審を抱いていたようだが、敢えて何も問わない方針にしたらしい。
過去にも、僕と彼女との間にこのような気まずい空気が満ちていた事が、なかったわけではないから。
朝食後、観光やショッピングのために出かけた仲間達を見送ると、僕は海岸へ足を運んだ。
昨日悠理が歌っていた、その場所へ。
果たして彼女は同じ場所で砂浜に腰を下ろし、寄せては返す波へ視線を送っていた。
「出掛けなかったんですか?」
うっすら日に焼けた細い背に声をかけると、あからさまに動揺している様が伺えて、溜息。
しばし間を置いてから、普段の彼女からは考えられない程にか細い声で、返答があった。
「……可憐達の買い物なんて服ばっかだし、魅録の行きたがってた場所も興味ない」
「成程。だからここ、ですか」
「悪いかよ」
「いいえ」
さり気なく隣に腰を下ろすと、華奢な肩がびくりと揺れて、強張った。
絶え間なく打ち寄せる波だけを見つめながら、互いに沈黙を守る。
色素の薄い髪が時折、ふわりと海風に遊ばれて、強い光を受けて煌く様が美しい。
強く引き結んだ唇には、微かな紅色が宿って。
潮騒だけが無限に続くかと思われた、薄い皮膜に包まれた空間。
「……なあ」
破ったのは、僕ではなくて。
「何ですか?」
「お前さ」
一度唇を閉ざし、彼女は首をぐるりと回して、僕に顔を向けた。
太陽の如き意志の強さを秘めた瞳が、真っ直ぐに僕を射抜く。
その瞳の輝きに負けぬよう、無意識に手を握って彼女を見返した。
しばしの沈黙の後、再び悠理が口を開いた。
「お前さ、昨日の夜、酔ってたか?」
探るような、それでいて不安げに揺らめく瞳が物語る、彼女の心情。
昨夜の僕の振る舞いに対しての、意味を問いかけていることが明白で。
僕は握っていた手の力を緩め、ともすれば小刻みに震えそうになるそれを、彼女に伸ばす。
昨夜も触れた華奢な肩をしっかりと掴んで、自分が膝立ちとなり、彼女を引き寄せて。
両腕でしっかりと拘束し、その温もりを閉じ込めた。
僕の腕の中、悠理は顔を伏せ身体を強張らせているのがわかり、溜息をひとつ。
それから、柔らかな髪へと唇を落とし、耳元に囁きを伝えた。
「……確かに酔ってはいました。それは認めます」
「……」
沈黙が示すのは、了承か抗議か。
僕は腕の力を強め、先を続けた。
「だから間違えてしまったんですよ。あの時は、あんな言葉を口にするべきではなかった」
「……え……?」
明らかな当惑を示した声が届き、悠理が伏せていた顔を上げる。
揺れる瞳に映る自分は、ひどく狼狽していて、苦笑が漏れそうになった。
息を大きく吐いて、彼女の頬を手で包み、今の自分の精一杯で笑いかけた。
「あの時僕は……お前を逃がしたくなかった」
「清四郎……」
「捕まえたかった。逃がしたくなかった──そう思っていたんですよ、悠理」
自分の手を彼女の頬から滑らせ、細い頤をそっと持ち上げて、静かに顔を寄せると。
何かを察したのだろうか、そっと瞼が閉ざされて、長い睫毛がふるりと震えた。
たまらなく、美しいそれに引き寄せられて。
両の瞼へ優しく唇を落としてから、桜色の彼女の唇を奪う。
触れるだけの接吻であったけれど。
時が止まって欲しいなどと、自分には有り得ない希望が頭をちらりと掠め。
そんな自分に戸惑いながらも、合わせた唇の温もりと柔らかさに酔い痴れて。
僕たちはそのまま、動かなかった。
*
それは、最早止められない想い。
僕も、彼女も。
気付いてしまったから。
04 | 2025/05 | 06 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | ||||
4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 |
18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 |
25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。