[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
大人向けシーンの描写はございませんが、苦手な方は閲覧をご遠慮ください。
暴走する清四郎さんと、ちょっと冷静な感のある悠理さんは、初期の私のイメージと思われます。
連載開始時小1か小2…だったかな?
そのくらいの年齢には、高校生って物凄く大人に見えたもんで、結構引き摺ってるようです。
SSの数が10超えたので、そろそろ無謀なサーチ登録考えようかしら…。
自嘲気味に、笑う男を見てて。
こいつ馬鹿だって、思った。
『限りなく馬鹿に近い秀才へ。』
不覚。
全くもって、不覚。
それがあたいの、今この瞬間抱いた感想。
目を開けて最初に見えたのが、見慣れぬ天井。
視線を巡らせると、知らない部屋。
そして、一糸纏わぬ自分の姿。
とどめは、隣で静かに寝息を立ててる男、だった。
(……何で、こんな事に?)
とりあえず、頭の中を整理する。
確か、昨夜は兄ちゃんのパートナーとして、どこぞのパーティーへ出席した。
かったりーけど『家の手伝い』って言われちゃ、拒否権もなく。
ついでといっちゃ何だけど、最近ではそこそこに、大人の立居振舞いってのも身についてきてたから。
まあそれなりに、学生時分から鬼門でしかない英会話だって頑張って、仕事してたわけだけど。
そこで、こいつに久々に、再会したんだ。
「悠……理」
「……清四郎」
あれれあれあれ、とお互い目を見開いてる様は、傍から見たら滑稽だったろう。
でもやっぱり、先に立ち直ってペースを取り戻したのは、清四郎だった。
「馬子にも衣装、を地で行ってますね」
「!……ったく、相変わらず口の悪さは超一流だよな、お前って」
売り言葉に買い言葉。
時を経ても変わらない、あたいへの皮肉がムカついて、思わず普段の口調で返答。
というか、こいつに他人行儀な丁寧語なんて、気持ち悪くて使えない。
さすがに最近外では猫を被るので、心持ち声は落としていたけれど。
「お前は変わんないよな、相変わらず鍛えてるっぽいし」
「おや、そうですか?」
「うん。だって胸板とか厚そうだもん。忙しいんだろうけど、ちゃんと鍛錬してんだろ?」
「ええ、まあそれなりに、ですがね」
少しだけ冷静さを取り戻し、改めて目の前の男をじっと眺める。
日本人にしては長身で、しかもスーツ姿でもわかるぐらいに厚い胸板してて。
おまけに顔も無駄に綺麗とくれば、相変わらず目立つ存在なのは、間違いない。
実際のところ、背中に刺さる鋭い視線を複数感じてるぐらいだ。
やっぱこれって、こいつ狙いの若い姉ちゃん方なんだろうなー、何てぼんやり考えた。
「どうしました?悠理」
「あ、ん?ううん、何でも。じゃ、あたい兄ちゃんのトコに戻るから、これで」
ぷいっとそっぽを向いてから、大股で歩いて遠ざかろうとしたら。
何故か後ろから、清四郎にがしっと手を掴まれた。
振り返ると、気のせいか先程よりも真剣そうな表情の清四郎と、視線がぶつかる。
何ていうか、果し合いの前の探り合いみたいな、どう考えても殺伐とした空気を感じた。
数秒程度の沈黙を破ったのは、あたいの方。
「……何だよ」
「悠理。せっかくですから、もう少し別の場所で話しませんか?」
「……いいけど?」
*
あのとき、やたら挑戦的な態度で眉を上げてた清四郎。
あの瞳の奥に、気づけてたら。
(……流された、ってか……?)
清四郎に促されるまま「とりあえず」と連れ込まれたのが、この部屋。
確かに兄ちゃんには、きっちり断りも入れてきたし。
気詰まりなパーティーよりも、清四郎と呑んだほうがマシだった。
人目を気にしたり、声を潜める必要もなくなって、気楽になって。
他愛もない話をして、馬鹿みたいに笑い合って。
ふと会話が途絶えたとき、そこで初めて気づいた。
奴の、今までとは全く違う視線に。
「……悠理」
気がつけば、逞しい腕に絡め取られていて。
耳元に、熱い吐息と共に落とされた囁きは、あたいをぞくりと震えさせた。
くらくらと、眩暈。
おかしい。
こんなの、自分じゃない。
「……せい、し……ろ……」
掠れた声で、名前を最後まで呼ぶこともできないまま、唇を塞がれて。
口移しで注がれたのは、きっとワイン味の媚薬。
初めて味わう艶かしい舌の感触に、耐えられずに身を捩って。
そのままベッドへ横たえられて、男の体の熱さと重みを感じても。
もう、抗うことなんてできなかった。
*
(……とりあえず、夢じゃないんだよね……)
自分の体に残る鈍痛と、無数に散らばる鬱血の跡が、何よりの証明。
鮮明な記憶が夢オチじゃないことを確認し、火照る全身を意識しつつも、溜息ひとつ。
上半身をゆっくり起こすと、乱れたベッドの周囲には、脱ぎ散らかされた2人分の衣服。
ご丁寧にも、アクセサリーや時計の類は、ベッドサイドのテーブルに置かれていて。
どんな状況でも、冷静さは失ってないんだなあ、と妙に感心。
まずはシャワーでも浴びようかと、ベッドを降りようとしたとき。
寝ていたはずの男の腕が、不意打ち。
「うわ!」
腰にがっしり腕を回され、引き寄せられて。
あたいの体は、ベッドの中へ逆戻り。
「急に何すんだよ!」
あたいは鋭く声を上げ、精一杯相手を睨みつける。
ベッドの中では、昨夜さんざん不埒な真似をした男が、じっと見詰めてた。
「どこへ行くんですか?」
「シャワーだよ!いいだろ、昨日汗かいたんだし!」
あたいの台詞に、男は笑みを浮かべる。
その表情に、昨夜見たような艶が混じっていることを感じて、心臓が跳ねる。
笑う男は、あたいの表情を、何と思ったのか。
「悠理」
不意に名前を呼ばれたと思ったら、ぎゅうっと抱き締められた。
「ちょ、何、は、放せ!」
「いやですよ」
あたいの抗議には全く耳を貸さず、ますます腕に力を込めて。
清四郎は、優しくあたいの頭を撫でる。
「せっかく手に入れたのですからね、そう簡単に放すわけがありません」
「……へ?」
言葉の意味がわからなくて、思わず間抜けな返答をしたあたいを見て。
清四郎は、きゅっと表情を引き締めて。
それから、笑った。
昔と同じ、柔らかい笑顔で。
*
「悠理」
「何……だよ」
昨夜と同じ熱さを持った囁きに、思わず声を詰まらせる。
そんなあたいの様子を感じ取ったのか、清四郎は昔みたいに、あたいの頭をそっと撫でた。
その手は、昔覚えた温もりと同じなのに。
「昨夜会えたのは、偶然じゃない。お前の予定はちゃんと知ってました」
「……なん、で」
「絶対にお前を捕まえるためですよ」
抱き締める腕は、必死なのに。
見つめる瞳は、真剣なのに。
「お前を手に入れるのに、なりふり構ってなんかいられない。汚い手でも、平気で使う。
───僕は、そんな男です」
紡がれた言葉は、あんまりで。
でも、頭を撫でてくれる手が、温かいのは本当だから。
あたいは静かに息を吐いて、清四郎に一言。
「馬鹿野郎」
「……悠理……」
不安げな色を瞳に浮かべる清四郎に、にやりと笑うと。
あたいも多分好きだから、と、仕方ないから教えてやった。
すると清四郎は、ふんわりと。
何ともいえないぐらい、柔らかな笑顔になった。
*
手段なんて選ばず、求める瞳に。
背徳的な満足を得たのは、秘密。
そんな事は、教えてやらない。
04 | 2025/05 | 06 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | ||||
4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 |
18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 |
25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。