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暇人が開設した二次創作保管庫です。「二次創作」をご存知ない・嫌悪を覚える方は閲覧をご遠慮ください。漫画『有閑』の会長と運動部部長を推してます。
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爽やかな朝に投稿ですが、内容は見事な後朝(爆)
大人向けシーンの描写はございませんが、苦手な方は閲覧をご遠慮ください。
暴走する清四郎さんと、ちょっと冷静な感のある悠理さんは、初期の私のイメージと思われます。
連載開始時小1か小2…だったかな?
そのくらいの年齢には、高校生って物凄く大人に見えたもんで、結構引き摺ってるようです。

SSの数が10超えたので、そろそろ無謀なサーチ登録考えようかしら…。

自嘲気味に、笑う男を見てて。
こいつ馬鹿だって、思った。

 

 『限りなく馬鹿に近い秀才へ。』

 

不覚。
全くもって、不覚。
それがあたいの、今この瞬間抱いた感想。

目を開けて最初に見えたのが、見慣れぬ天井。
視線を巡らせると、知らない部屋。
そして、一糸纏わぬ自分の姿。
とどめは、隣で静かに寝息を立ててる男、だった。

(……何で、こんな事に?)

とりあえず、頭の中を整理する。
確か、昨夜は兄ちゃんのパートナーとして、どこぞのパーティーへ出席した。
かったりーけど『家の手伝い』って言われちゃ、拒否権もなく。
ついでといっちゃ何だけど、最近ではそこそこに、大人の立居振舞いってのも身についてきてたから。
まあそれなりに、学生時分から鬼門でしかない英会話だって頑張って、仕事してたわけだけど。

そこで、こいつに久々に、再会したんだ。

「悠……理」
「……清四郎」

あれれあれあれ、とお互い目を見開いてる様は、傍から見たら滑稽だったろう。
でもやっぱり、先に立ち直ってペースを取り戻したのは、清四郎だった。

「馬子にも衣装、を地で行ってますね」
「!……ったく、相変わらず口の悪さは超一流だよな、お前って」

売り言葉に買い言葉。
時を経ても変わらない、あたいへの皮肉がムカついて、思わず普段の口調で返答。
というか、こいつに他人行儀な丁寧語なんて、気持ち悪くて使えない。
さすがに最近外では猫を被るので、心持ち声は落としていたけれど。

「お前は変わんないよな、相変わらず鍛えてるっぽいし」
「おや、そうですか?」
「うん。だって胸板とか厚そうだもん。忙しいんだろうけど、ちゃんと鍛錬してんだろ?」
「ええ、まあそれなりに、ですがね」

少しだけ冷静さを取り戻し、改めて目の前の男をじっと眺める。

日本人にしては長身で、しかもスーツ姿でもわかるぐらいに厚い胸板してて。
おまけに顔も無駄に綺麗とくれば、相変わらず目立つ存在なのは、間違いない。
実際のところ、背中に刺さる鋭い視線を複数感じてるぐらいだ。
やっぱこれって、こいつ狙いの若い姉ちゃん方なんだろうなー、何てぼんやり考えた。

「どうしました?悠理」
「あ、ん?ううん、何でも。じゃ、あたい兄ちゃんのトコに戻るから、これで」

ぷいっとそっぽを向いてから、大股で歩いて遠ざかろうとしたら。
何故か後ろから、清四郎にがしっと手を掴まれた。
振り返ると、気のせいか先程よりも真剣そうな表情の清四郎と、視線がぶつかる。
何ていうか、果し合いの前の探り合いみたいな、どう考えても殺伐とした空気を感じた。

数秒程度の沈黙を破ったのは、あたいの方。

「……何だよ」
「悠理。せっかくですから、もう少し別の場所で話しませんか?」

「……いいけど?」


   *


あのとき、やたら挑戦的な態度で眉を上げてた清四郎。
あの瞳の奥に、気づけてたら。

(……流された、ってか……?)

清四郎に促されるまま「とりあえず」と連れ込まれたのが、この部屋。
確かに兄ちゃんには、きっちり断りも入れてきたし。
気詰まりなパーティーよりも、清四郎と呑んだほうがマシだった。
人目を気にしたり、声を潜める必要もなくなって、気楽になって。
他愛もない話をして、馬鹿みたいに笑い合って。

ふと会話が途絶えたとき、そこで初めて気づいた。
奴の、今までとは全く違う視線に。

「……悠理」

気がつけば、逞しい腕に絡め取られていて。
耳元に、熱い吐息と共に落とされた囁きは、あたいをぞくりと震えさせた。

くらくらと、眩暈。
おかしい。
こんなの、自分じゃない。

「……せい、し……ろ……」

掠れた声で、名前を最後まで呼ぶこともできないまま、唇を塞がれて。

口移しで注がれたのは、きっとワイン味の媚薬。
初めて味わう艶かしい舌の感触に、耐えられずに身を捩って。
そのままベッドへ横たえられて、男の体の熱さと重みを感じても。
もう、抗うことなんてできなかった。


   *


(……とりあえず、夢じゃないんだよね……)

自分の体に残る鈍痛と、無数に散らばる鬱血の跡が、何よりの証明。
鮮明な記憶が夢オチじゃないことを確認し、火照る全身を意識しつつも、溜息ひとつ。
上半身をゆっくり起こすと、乱れたベッドの周囲には、脱ぎ散らかされた2人分の衣服。
ご丁寧にも、アクセサリーや時計の類は、ベッドサイドのテーブルに置かれていて。
どんな状況でも、冷静さは失ってないんだなあ、と妙に感心。

まずはシャワーでも浴びようかと、ベッドを降りようとしたとき。
寝ていたはずの男の腕が、不意打ち。

「うわ!」

腰にがっしり腕を回され、引き寄せられて。
あたいの体は、ベッドの中へ逆戻り。

「急に何すんだよ!」

あたいは鋭く声を上げ、精一杯相手を睨みつける。
ベッドの中では、昨夜さんざん不埒な真似をした男が、じっと見詰めてた。

「どこへ行くんですか?」
「シャワーだよ!いいだろ、昨日汗かいたんだし!」

あたいの台詞に、男は笑みを浮かべる。
その表情に、昨夜見たような艶が混じっていることを感じて、心臓が跳ねる。
笑う男は、あたいの表情を、何と思ったのか。

「悠理」

不意に名前を呼ばれたと思ったら、ぎゅうっと抱き締められた。

「ちょ、何、は、放せ!」
「いやですよ」

あたいの抗議には全く耳を貸さず、ますます腕に力を込めて。
清四郎は、優しくあたいの頭を撫でる。

「せっかく手に入れたのですからね、そう簡単に放すわけがありません」
「……へ?」

言葉の意味がわからなくて、思わず間抜けな返答をしたあたいを見て。
清四郎は、きゅっと表情を引き締めて。
それから、笑った。
昔と同じ、柔らかい笑顔で。


   *


「悠理」
「何……だよ」

昨夜と同じ熱さを持った囁きに、思わず声を詰まらせる。
そんなあたいの様子を感じ取ったのか、清四郎は昔みたいに、あたいの頭をそっと撫でた。
その手は、昔覚えた温もりと同じなのに。

「昨夜会えたのは、偶然じゃない。お前の予定はちゃんと知ってました」
「……なん、で」
「絶対にお前を捕まえるためですよ」

抱き締める腕は、必死なのに。
見つめる瞳は、真剣なのに。

「お前を手に入れるのに、なりふり構ってなんかいられない。汚い手でも、平気で使う。
 ───僕は、そんな男です」

紡がれた言葉は、あんまりで。


でも、頭を撫でてくれる手が、温かいのは本当だから。
あたいは静かに息を吐いて、清四郎に一言。

「馬鹿野郎」
「……悠理……」

不安げな色を瞳に浮かべる清四郎に、にやりと笑うと。
あたいも多分好きだから、と、仕方ないから教えてやった。

すると清四郎は、ふんわりと。
何ともいえないぐらい、柔らかな笑顔になった。

 

   *

 

手段なんて選ばず、求める瞳に。
背徳的な満足を得たのは、秘密。

そんな事は、教えてやらない。

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プロフィール
HN:
シスターM
性別:
女性
自己紹介:
国産ヒト型40代、夫・息子1人がいます。徒然なるまま…ではないですが、勢いに任せ、所謂二次創作をちまっと数年続けてます。
当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。
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