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たまに、言葉がわかったらいいのに、なんて。
ほんの少しだけ、思ったりもするけれど。
『猫は喋らない』
「全く、悠理には付き合いきれませんな」
いつもの通り。
睨み合っていた視線を逸らして、奴が溜息混じりに呟いた言葉が。
そのときの自分にとっては、見事な発火スイッチだった。
「……清四郎の馬鹿っ!」
声を限りに怒鳴りつけて、近くにあった鞄を掴むと、脇目も振らず猛ダッシュ。
自分の名を呼ぶ声っぽいものが、微かに耳に届いたような気もしたけれど。
そんなもの、構ってる余裕なんて、ひとっ欠片もなかった。
「………ばか」
部屋の中、ソファーの上でクッションを抱えて。
ぽつりと漏らした自分の言葉に、ハモって反応してくれたのは。
さっきから部屋の中をうろつく事もせず、あたいの横で丸まってた2匹。
「なー?」
「なー?」
「!……ああ、ゴメンなタマ、フク。お前らの事じゃないぞ」
こっちをじいっと見上げ、あたいの言葉を聞いてくれてるタマとフク。
お互い言葉は通じないけど、それでもこいつらはいつも、側にいてくれて。
あたいの気持ちを、何となくわかってくれてるんだと、思う。
今は苦しくて、寂しくて、悲しいから。
2匹ともくっついてくれてるんだ、きっと。
「ありがとな、タマ、フク」
両手を伸ばして2匹の頭を撫でると、ふんわりと柔らかい感触と温もりがして。
そういや今日辺り、シャンプーの日じゃなかったっけ、何て思い出す。
壁掛け時計をちらりと見て、立ち上がる。
「よっし、ちょっと時間早いけど、フロにしよーぜ!タマ、フク」
「にゃーお」
「うにゃー」
今度の声は微妙にずれてて、それがまた面白くて。
自然と、笑顔になれた。
風呂でほっこり温まって、気分が上昇した頃に。
携帯を眺めると、メール1件。
『僕も大人気なかったですね。許してもらえますか?』
「……何だよアイツ……。妙に弱気じゃね?」
「みゃー」
「みゃお」
画面をタマとフクに見せると、微妙な声のトーンで返答され、苦笑い。
何言ってるのかはわかんないけど、少なからずあたいに同意してくれてんじゃないかって。
勝手に決め付けて、笑ってから。
『タマとフクにも笑われてんぞ。明日の昼メシはお前のオゴリな!』
反故にしようと思ってた明日の約束に、条件をつけて返信した。
*
言葉はわからなくっても、気持ちが通じ合ってるから。
手強い男と喧嘩してる時ぐらい、味方につけてもいいと思う。
だって、家族だもん。
(掲載期間 2008.11.10~2008.12.2)
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当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。