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とりあえず、拍手お礼文を入れ換えてみます。
3月が近いですからね、ということで。悠理一人称。
柄じゃない。
全くもって、柄じゃない。
『不覚の14日』
自慢にもならないけど、年がら年中よく食べてるし、自分の舌に自信もある。
しかもそこそこ腐れ縁だから、好みも結構わかってる。
だから「不味い」という選択肢は、恐らく奴の頭の中には浮かばない、はず。
なのに、ああ、それなのに。
(……どーしてあたいが、無駄にガチガチにならなきゃいけねーんだよっ!)
勝手知ったる家の前、されど今はインターフォンを鳴らすのさえ、試練。
おかしい、どうかんがえても変だ。
だって先週も、ここで泊りがけのテスト勉強したばっかだし。
1人の場合も集団でも、来てる回数なんて数え切れないぐらいだし。
今更妙な気を遣ったりする間柄なんかじゃなく、家族全員とも仲良しで。
つーか、それこそ実の娘か、ってぐらいに可愛がってくれてるおっちゃんと。
いつでも「いい食べっぷりねえ」と、ニッコリ笑ってくれるおばちゃんと。
あっちが忙しくってあんまし会えないけど、会えたらすっごく可愛がってくれる和子姉ちゃんと。
メシ食って酒飲んで、馬鹿話すんのだって、すっごく楽しい。
なのに、どうして今。
あたいの体は、妙にガチガチに強張ってんだ!?
「……お前は人の家の前で、いつまで死後硬直している気なんですか……」
不意に背中へ届いた声に、ぎこちなく視線を巡らせると。
今まで本屋にでも行ってたのだろう、トレンチコート姿の清四郎が呆れ顔。
「ま、まだ生きとるわい!勝手に殺すなよ」
「ほーう?」
自分よりも高い位置にある黒い目を睨み上げながら反論すれば、ニヤリとお得意の皮肉っぽい笑顔になって。
相手が続けた言葉に、青くなる。
「では、そこで僕の帰宅の邪魔をしている理由を、説明して貰えませんかねえ、悠理」
「ぅえ!?あ、あ、い、いやいや、そ、そのぉ」
「……ああ、そうですね」
うっかり言葉に詰まってしまったあたいに、清四郎はひとりうんうん、と頷いて。
いきなりあたいの腰を掴むと、荷物のようにひょいと持ち上げた。
突然の相手の行動にすっかり呆けてしまっていた分、反応が遅れてしまったのが命取り。
清四郎は器用にあたいを抱き上げたまま、インターフォンを押して帰宅の連絡。
「うおぇ!?ちょ、せ、清四郎!何しやがるんだ」
「決まってるでしょ。懇切丁寧に説明していただくために、僕の部屋までご案内するんですよ」
「じ、自分で歩けるわい!」
「つい先程まで死んでいたようですからね、無理はしない事ですよ」
あたいがじたばたと暴れても、全く動じる事のない清四郎は、涼しげな笑みで答えてから。
そうそう、と、ひとつ付け足した。
「今日は勿論……帰しませんからね、悠理」
今度こそ。
あたいは見事に、清四郎に抱き上げられたまま、石になった。
*
これも幸せ、って言うんだろうか。
誰にも言えないけど尋ねてみたい、そんなあたいのバレンタイン。
(掲載期間 2009.2.11~2009.2.26)
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当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。