忍者ブログ
暇人が開設した二次創作保管庫です。「二次創作」をご存知ない・嫌悪を覚える方は閲覧をご遠慮ください。漫画『有閑』の会長と運動部部長を推してます。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ブログ開設時を除き、一日一作を基本にここへ投稿しているのですが、今日はもう一作。
書きやすいので馬鹿っプルネタで(オイ)
作中に出てくる聖火トーチについての知識はうろ覚えですが、走ったら貰えるのは本当です。
夫の亡父が実際に走ったので、夫の実家にあるんですよ、銀のやつが。
万作さんだったらランナーぐらいやりそうなんで、使ってみました。

 「あれ?」

 倉庫の片隅に、ぽつんと。
 それがいた。

 

 『傍迷惑な宣言』

 

手に取ってみると、案外重量感がある。
ぶんぶんと、振り回すものではないらしい。

「何だ、これ?」

ヤバい感覚はしないから、霊の類は関係ないんだろうけど。
気になって、持って出ることにした。

「あ、五代」
「何ですか、嬢ちゃま」
「コレって何?」

とりあえず、家のことなら五代に聞くのが確実。
あたいはそう思って、手に持っていた物を示してみた。
すると、五代が懐かしそうに、目を細めた。

「おお、嬢ちゃま……随分と珍しい物をお持ちになりましたなあ」
「……これ、何?」

首を傾げると、五代はにっこりと笑って、教えてくれた。

「それは聖火トーチですよ」
「聖火トーチって?」
「オリンピックの聖火リレー、というものがございますよね?あれでランナーが聖火をつけて走るものです」
「へぇ……」

あたいは手に持っていた、トーチをしげしげと眺めて。
ふと、疑問が湧いた。

「何でウチに、こんなモンがあるんだ?」

すると五代はにっこり笑ったまま、正解を教えてくれた。

「昔、若が、ランナーをお務めになったのですよ」
「父ちゃんが?」
「そうです。若は大層スポーツマンでおられましたからなあ」
「ふぅーん……」

頭の中に浮かんだのは、今の父ちゃんが、ランニングとパンツ姿に鉢巻締めて。
満面の笑顔で聖火を掲げ、アケミやサユリを従えて走ってる図だった。

……何か、違うかも。


    *


自分の部屋に戻って、あたいはソファに腰を下ろし、トーチを眺める。
古ぼけた銀色のそれは、ランナーを務めた人間のみが持ち帰りを許されるという、品だそうで。
よく見れば、五輪のマークもしっかりと入ってる。

(父ちゃんって、案外凄いかも。へぇ)

本当は大財閥の会長で、それだけでも十二分に『凄い人』のはずだけど。
生まれたときから見慣れてるあたいにとって、父ちゃんの存在の大きさを認識するのは、こんな時。
あとは宇宙語喋ってるとき、とかかな。
何と言っても、清四郎が話せないような言葉まで覚えてるもんな。

たまの拍子に清四郎が「おまえのおじさんには叶わない」と零すけど。
……本当に、そうなのかも。

「おや、珍しいものを見ていますね、悠理」

不意に声をかけられて、心臓が大きく跳ねる。
でも、声の主には思いっきり心当たりがあったので、とりあえずそっちを向くと。
声の主は、相変わらずの皮肉屋の笑みを浮かべ、あたいを見ていた。

「清四郎。いつ来たんだ?取次ぎもなしかよ」
「ついさっきです。ここに来るのは、もう顔パスですからね」
「そーだろーな。……ったく」

不意打ちで跳ねた心臓の、鼓動が段々収まってくるのを感じつつ、あたいは内線でお茶を頼む。
清四郎は、あたいが座ってたソファに腰掛けて、トーチを手に取った。

「オリンピックの聖火トーチ、ですね。どうしたんですか」
「父ちゃんのだって」
「おや……それはまた」

あたいの言葉に、清四郎は一瞬だけ目を見開いて、納得したような顔。
それから、薄く笑った。

「どうかした?」
「いや、さすがは剣菱のおじさんですな。ケンブリッジ留学だけでなく、様々な経験が豊富だ」
「だよなぁ……」

あたいの中での父ちゃんのイメージは、農作業姿だったり、ステテコだったりで、碌なモンじゃない。
なのに父ちゃんは、色んな勉強もしてて、こんな珍しい経験もしてて。
凄い人、なのかも。

「悠理」
「ん?」

清四郎が、手招きするので、近寄ると。
途端に不意打ち。

「!?」

あたいの体は、清四郎の腕の中に閉じ込められた。

「な、何だよっ!?」

ばたばたと両腕を振り回すけど、清四郎の腕の拘束が解かれる気配は皆無。
しかも、ますます強くなる感じで。
無駄に心臓の鼓動が跳ね上がるのは、気のせいじゃない。
すると頭上で、清四郎の大きな溜息がひとつ。

「……清四郎?」

声をかけると、清四郎は。
苦笑いをしてあたいを見詰め、それからぽつりと言った。

「全くもって、おじさんという人は、強敵ですね」
「へ?何の?」

意味がわからず、首を傾げるあたいの額に、ごく自然に清四郎の唇が降りて。
真っ赤に染まったあたいの背を撫でながら、清四郎が続けた。

「人間としての器、ですよ。剣菱に入るつもりなら……いずれ、対決せねばなりませんからね」
「対、決?」
「そうですよ。……僕が、おまえに相応しいって、認めていただくつもりですから」

意味を理解するまで、約10秒。
途端に全身から、火を噴きそうなほどに熱くなる。

「おまっ……!な、なぁに、こっ恥ずかしい台詞をっ……」
「───本心、ですよ。悠理」

清四郎は、すうっと目を細め、真剣な表情であたいを見詰めると。
こっちの手を取って、唇を寄せる。
視線の鋭さと妙な色っぽさにどきどきして、真っ赤になったあたいを見て。

清四郎は、破顔した。


    *


 頼むから。
 そんな無茶苦茶真っ直ぐに、本心なんて告げないで。

 嬉しいけれど、恥ずかしいから。

拍手

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
» おぉ!
さらっとプロポーズしてるっ!
本気のプロポーズはもっと真剣な顔か、はたまたニヤリな顔か?!
いいな、いいな、甘い2人。幸せそうだし優しい清四郎カッコイイし、照れてる悠理は可愛いしw
やっぱりベストカプだぁ~~~!

しかし万作さんって凄いな!
ホントに原作でも走ってそうな勢いですよねっ。
りん 2008/06/23(Mon)00:14:19 編集
» 意識せずに求婚(笑)
>りん様
ウチの清四郎は確実に悠理を落とす気満々です(笑)
翻弄される悠理は、たまったもんじゃないでしょうけど。
万作さんって、私の勝手な妄想の中では、本当に色んな経験してそうなイメージがあるんですよ。
また何か思いついたら書いてみたいです。
コメントありがとうございました!
M@管理人 2008/06/23(Mon)15:38:32 編集
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
プロフィール
HN:
シスターM
性別:
女性
自己紹介:
国産ヒト型40代、夫・息子1人がいます。徒然なるまま…ではないですが、勢いに任せ、所謂二次創作をちまっと数年続けてます。
当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。
バーコード
ブログ内検索
アクセス解析
カウンター

Copyright © [ 暇人の倉庫 ] All rights reserved.
Special Template : 忍者ブログ de テンプレート
Special Thanks : 忍者ブログ
Commercial message : [PR]