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暇人が開設した二次創作保管庫です。「二次創作」をご存知ない・嫌悪を覚える方は閲覧をご遠慮ください。漫画『有閑』の会長と運動部部長を推してます。
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こんばんは、管理人です。
さっそくですがリクエスト企画をひとつ。
ななお様からたくさんリクをいただいたのですが、その中の最初に頂戴したものを。

・学生時代設定で悠理が好きなことを自覚した清四郎だが、自分があんな猿だか犬だかわからないのを好きになるわけがない」と否定しつつも悠理の周りにいる人間(男女問わず)に嫉妬しまくったり、悠理の笑顔にときめいたりと迷走しまくる清四郎のお話

…このテーマに近づけたかな…(汗)




──自覚してしまえば、もう。
止められない想いに、囚われるだけ。


『青少年の不覚、あるいは自覚。』


自慢じゃないが、この世に生を受けてから、十数年。
幼い頃から勉学にも武道にも励み、いずれにおいても周囲を圧倒するだけの力を得た、と思う。
それに応じて、他者から賞賛され更には尊敬を集める日々を送っているのは、自分でも自覚がある。
更に、運よく平均以上の容姿を持っているようで、それなりにお誘いも受ける。
ああ、それなのに。
(何故僕は、この猿だが犬だかわからん奴に……)
きっと今、僕の眉間には盛大に皺が寄っていることだろう。
その原因も明白で、今目の前に繰り広げられている地獄絵図のような光景だ。

「ほら悠理!もっと飲むだよ!」
「わーかってらいっ!父ちゃんこそ、グラス空っぽじゃないかよぉ」
「悠理君の言う通りだぞ万作、まだまだ酒に溺れるには早いわ」
「あーもう、親父は飲み過ぎだって!げっ、美童お前無事かよっ」
「……あ……魅録、もう僕に、話しかけないでくれる?限界越えだよ……うえっぷ」
「あたしももう、無理よぉ……。ったくもう、何で悠理の家に時宗のおじさままでいるのよぉ」
「せっかくの藤見の宴でしたのに、風情台無しですわ。まあ清四郎、あなたも限界ですの?珍しいこと」

剣菱邸の庭にしつらえた、藤見の宴のための席。
確か倶楽部の6人で、という話だったのだが、いつの間にやら厄介な大人が2名参加して。
となれば、単なる酒飲み大会と化してしまうのは言うまでもない。
「………………いいえ、野梨子。まだまだ宵の口にも達してませんよ、僕は」
ぼやきたくなるのを堪えつつ、幼馴染に答える口調にも、どこか棘があるに違いなく。
それを重々承知している彼女は、大仰に溜息をついて。
「男の嫉妬は見苦しいですわよ、清四郎」
笑顔で止めを刺してくれた。

 


わかっているのだ。
剣菱悠理という、この幼馴染でもある少女は。
言葉の上では、どれ程口を極めて猿だの犬だの野生児だの、罵倒してみたとしても。
男女問わず惹き付ける魅力を持っているのを、僕自身が昔から十分に承知している事を。
──そして。
(確かに僕は、悠理に近付く全てに嫉妬してますよ!ええ、そうですとも!)
家族同様に僕について知っている、誰より鋭い幼馴染の指摘には、ただもう肯定しか浮かばない。
倶楽部の他の人間たちも、今のように彼女と陽気に語らう友の父親も。
更には彼女の実の父でさえ、遠ざけたくなってしまうのだ。
悠理に惚れたと自覚するまでは、よもや自分がこれ程までに了見の狭い男だとは自覚していなかった。
(全く……僕という人間が、いかに卑小な男であったのか……)
最悪の、自覚の方法だった。

「なぁおい、清四郎?」
(!?)
思考の海に沈んでいた自分を唐突に呼び戻したのは、まさに悠理自身の声。
はっとして顔を上げ(ここで自分が俯いていたことに気付いた)、見ると悠理がこちらを覗き込んでいて。
「ど、どうしました」
慌て気味に返答するものの、動悸は隠しようもない。
ああ、静まれ僕の心臓。
そんな心中の葛藤なぞ勿論察する筈もなく、悠理はあくまでも自然体で、言ってのける。
「大丈夫か?お前まで速攻ダウンしたのかと思った」
「え?」
彼女の言葉にはっとして辺りを見回すと、気付けば死屍累々の様。
ザルどころか木枠の万作おじさんによって、既に仲間3人と時宗おじさんは沈没していて。
今ひとり万作おじさんの相手を務める魅録もそろそろ、グロッキーが近そうな気配。
「父ちゃんが寝ちまうまで、魅録もあたいも持たないかもしれないんだ。頼む、清四郎!付き合え!」
悠理の頼む様子はいかにも必死で、真剣な表情には凛々しさや可憐さが伺える。
(……悠理を見て「可憐」など、僕もずいぶんとやられましたねえ)
己の思考に苦笑いを零し、僕は答えた。

「わかりました、悠理。お付き合いしましょう」
「サンキュー!さっすが清四郎ちゃん、愛してる!」
「!?」
──わかってますよ、ええ。
悠理の「愛してる」なんて言葉は、もう誰にでも使う口癖みたいなものだって。
更に満面の笑みだって、色んな人が見慣れてるって。
だけど、だけどですね。
正直今の、悠理に対する気持ちを自覚してしまった自分にとっては、刺激が強過ぎる訳で。
で、結局。

「あれ、清四郎、ほっぺた赤い?大丈夫か?」
「あ、当たり前でしょう!さあ悠理、行きますよ!」
「おうわわっ、ちょ、ちょっとお前手加減しろって!」

僕は真っ赤に染まった頬を隠そうと、悠理を強引に引き摺って歩き始めた。


   *


ほら、やっぱり。
どんな困難が待ってても、戻れないんだよ、恋愛ってヤツは。
だったら、進め。

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プロフィール
HN:
シスターM
性別:
女性
自己紹介:
国産ヒト型40代、夫・息子1人がいます。徒然なるまま…ではないですが、勢いに任せ、所謂二次創作をちまっと数年続けてます。
当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。
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