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不思議なもので、唐突に書きかけの作品の続きが浮かびました。
ということで、さっそく駄文を投下。お客様からご好評を頂戴している【無自覚シリーズ】でございます。
管理人的にも気に入っているこのシリーズ、いつまで続くものやら…。
単にいちゃついてるだけの、とほほなお話だと思いますが、ご勘弁を。
でもあくまでも『無自覚』、それがこのシリーズにおける鉄則でございます。
…誰も信じませんね、こんな馬鹿っプルは。
その昔、父ちゃんと母ちゃんが「結婚式は仏前か教会か」で大喧嘩してた時があって。
まあ……今となっては、単なる笑い話になっているんだけれど。
ふとそんな事を思いだしたあたいの頭に、過ぎった考え。
『リハーサルは、完璧に。』
2時間程前に帰宅した清四郎は、夕食後にコンピュータールームへ引き篭もり中。
あたいはお茶と茶菓子の準備をさせてから、ワゴンを押して、部屋の扉をノックする。
突然のあたいの来訪に、勿論奴は驚いた顔をしたけれど、にっこり笑顔で招き入れてくれた。
「どうしたんですか?珍しいですな、お前がこっちの部屋に来るとは」
「ん、そーかも」
2人でソファに並んで腰掛け、アイスティーとお菓子で一息。
今日のお菓子はキンキンに冷えたフルーツトマトのコンポートで、清四郎の好みにも合っている様子。
仲良く完食したところで、あたいは口を開く。
「あのさ、清四郎。あたいたちの結婚式の事なんだけど、さ」
「ほう?」
清四郎はあたいの言葉に、片眉を上げる。
「珍しいですな。お前が進んでその話題を口にするのは。で、何です?」
「ん。あのさ、上手く説明しにくいんだけど、えーと……」
優秀ではないあたいの頭脳は、慣れない事をしようとフル回転してみるもののやっぱり空回りで。
口を開いてまた噤む、そんな作業を繰り返していると。
「悠理」
存外優しい声がしたと思ったら、あたいは清四郎の腕の中。
「ほえ?」
「お前の言葉で説明してくれればいいですよ。僕がしっかり真意を汲み取ってあげますから」
あたいの髪を弄びつつ、宥めるような口調のそれは、長年の付き合いからの絶対の自信で。
「……ん」
あたいは両肩の力を抜いて清四郎に凭れかかると、口を開いた。
「あのさ、昔結婚式の方法で、超もめただろ?父ちゃんと母ちゃん。お前、覚えてる?」
「ええ、勿論。忘れる筈もありませんよ」
清四郎は一瞬遠い目をしてから、あたいを見詰めて話の続きを促す。
「でさ、あん時結婚式の方法について、異様に2人とも拘ってたろ?仏前だの教会だの、って」
「……そうでしたねえ」
「ま、正直あたいどっちでもいいんだよな、式の方法なんて。でも、さ」
あたいは言葉を一旦切ってから、続ける。
「どうせなら、あの2人が口出しできないような方法っての、ないかな、って」
「……ほう?」
清四郎は、あたいの言葉に興味深げな表情を見せた。
「つまりは、仏前や教会以外の挙式の方法を見てみたい、と?」
「それだ!」
目の前の男の的確な指摘に、あたいは立ち上がりそうな勢いで頷く。
すると清四郎は、ふむ、と首を傾げてから微笑んだ。
「なかなか面白いアイディアですな、一考の価値ありですよ。悠理」
「マジで?」
「ええ、とても」
清四郎はにこやかに微笑んだまま、あたいの前髪をかき上げて額に唇を寄せ。
「急ぎの用事はありませんし、今早速調べてみましょう。ここのコンピューターは大変優秀ですからな」
あたいに立つよう促して、自分もソファから立ち上がった。
清四郎がコンピューター前の椅子に腰掛けて、その膝にあたいを座らせて。
奴が目にも留まらぬ速さでキーボードを叩くと、途端にコンピューターが稼動を始める。
そしてモニターに映し出されたのは、いくつもの『結婚式』。
「ほほう、これはまた、考えていた以上ですなあ」
清四郎が唸る程、それは何でもありな世界で。
「……宇宙での挙式、ってのがもう商売になってんのが不思議だよなあ」
「全くですよ。他にも変り種では、スカイダイビングや海中、飛行機の翼の上……まさに何でもありですね」
あたいたちは想像以上のバリエーションの豊富さに、ただもう圧倒されるだけ。
「なあ清四郎。ここまでする必要って、あんの?」
「僕に聞かないで下さいよ。まあ所謂『思い出作り』という事なんでしょうけどね」
首を傾げるあたいに、清四郎はあくまでも冷静に返答してから。
「それにしても、一生に一度というのが理想である分、結婚式には皆真剣になるんでしょうねえ」
ふむ、と溜息をつく。
「……みたいだな。あたいは正直、ここまで頑張れないや」
「僕もその意見には賛成ですよ、悠理。正直、ここまで真剣になる人たちの気持ちがわかりません」
「やっぱ考えてる事が合うよなあ、こと結婚に関してだと」
「全くですな」
所詮は、恋愛なんて知らないままに『結婚』なんて道を選んだ、共犯同士。
「やっぱり清四郎で良かったよ、うん」
あたいは背中の清四郎の胸に凭れて、へへ、と笑った。
「おや、急に何の話ですか」
「ん?決まってんじゃんか、結婚相手の事」
清四郎の顔を見上げ、あたいは笑みを深める。
「何だかんだ言ってもさ、お前、あたいの気持ち理解してくれるし、優しいもん」
「そうですか?」
「そ。あんがとな、清四郎」
あたいはちょっとだけ伸びをして、清四郎の顎に軽くキスを贈る。
清四郎は目を丸くしてから、悪戯っぽく笑って。
「今日は随分と、可愛らしい真似をするんですな、悠理。何かありましたか?」
「うんにゃ、別に?何となく」
「何となくですか。それはまた、可愛らしい事ですね」
あたいの返答に、奴は穏やかに微笑んでから。
「では僕も、それなりに婚約者らしい反応でも、してみますか」
「へ?」
首を傾げるあたいの顎をさっと捕らえると、すかさず唇を押し付けて。
「……っ、んう、うぅ……」
深くて長い、意識が溶けてしまいそうな、キスをした。
*
恋愛ってのは、未だによくわかんない、けど。
清四郎とこうしてるのは、不思議にヤじゃない、自分がいる。
お前も、そうだよな?きっと。
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当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。