忍者ブログ
暇人が開設した二次創作保管庫です。「二次創作」をご存知ない・嫌悪を覚える方は閲覧をご遠慮ください。漫画『有閑』の会長と運動部部長を推してます。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

えー、こんばんは、管理人です。
前回久々にアップしました小噺に対して、皆様から温かいご感想を頂戴いたしました。
本当にありがとうございました。
個々のお客様に対する返答は、誠に勝手ながら割愛させて頂きたく存じます。
どうぞご了解願います。

で、その中でいくつか御話を頂戴したのが「清四郎編」についてのリクエストでございました。

……いやー、難産でございました。
最近いかに何もせずに過ごしていたかが、ばればれでございます(汗)。
甘さだけでも出せるように、と頑張ってはみましたが……。

何より今日が2月15日であるというのが、一番のトホホな感じでございますね(嘆息)。


2月14日、バレンタインデー。
恋する男女のための日、とは言うものの。

僕と妻の間には、はて?

 

   *

 

「……んん……」
ゆっくりと瞼を開くと、既に日は高く昇っていて、室内に光が満ちている。
そして、静寂の中に上体を起こすと。
「おや、これは」
視界の隅を掠めたのは、明らかに季節を間違えた代物。
(……悠理、ですね)
見覚えのある派手な靴下状の物体は、確かに僕がクリスマスで使用したもので。
彼女へのプレゼントを入れて、枕元に置いたのだけれど。
まさかそんな小道具を、彼女が大事に持っていたとは思わなかった。
しかも、袋の一部分が明らかに膨らんでいたので。
(何と言いますか、悠理らしいですな)
正攻法など使えない、照れ屋な少女時代のそのままに成長した、妻らしいお遊びに。
思わず表情を緩めながら、袋の中身を取り出した。

センスの良さが伺える包装は、恐らく可憐の手によるものだろう。
(さて、中身は何でしょうな)
義父譲りの妻のセンスには、時に大きな疑問を抱くのが常であるが。
今まで自分へ贈られた品物に関しては、文句のつけようがないのが現状である。
恐らくは、妻の兄や頼れる友などへ相談して、慎重に品定めをしているのだろう。
今回も期待半分、不安半分に包みを解いた。
「……ほう、これはまた、洒落たものを」
黒い箱から登場したのは、スケルトン仕様の懐中時計。
所々に宝石が埋め込まれている辺り、ジュエリー・アキの細工によるものだろうか。
上質な手触りの手巻き式時計は、何とも味のある音でリズムを刻み。
僕の手にもしっとり馴染んで、時を静かに知らせてくれている。
時計に添えられたアイボリーのカードには、短めのメッセージが添えられて。
「『Be My Valentine』とは……。絶対意味を理解できてませんね、悠理は」
恐らくは可憐が気遣ってくれたのだろう、カードを眺めてから。
僕は身支度をするために、シャワールームへと向かった。

身支度を終えて、時計を眺め、目を見張る。
既に時刻は午前10時を過ぎており、朝食をどうしようかと考えたとき。
妻がいつものように賑やかな足取りで、戻って来た。
「あ、清四郎、起きてたんだ。おはよ」
「おはよう、悠理」
部屋に注ぐ光の中で微笑む妻は、惚れた欲目もあるのだろうが。
改めて、綺麗だ、と思えた。
「清四郎、飯どうする?まだなんだろ、こっちに運ばせようか」
口調がぞんざいなのは相変わらずだけれど、僕への気遣いもしてくれる辺り。
女性として確かな成長を見せてくれているのは、明白で。
僕はそうですね、と頷いてから、妻の傍へゆっくりと歩み寄り。
特別な手入れをせずとも美しさを保っている、綺麗な手をそっと取った。
「ん?」
首を傾げるその仕草すら愛らしい、などと思いつつ。
僕は彼女の掌へ、そっとキスを落として。

「悠理、知っていますか?」
「な、何だよ」
こんなキスひとつにすら動揺し、頬を赤らめる初々しさを愛でながら。
「『掌の上ならば懇願のキス』……まあ、出典も不詳の言葉ですよ」
「悪かったな物知らずで!で、それが何だってんだ?」
膨れっ面をする妻の頬にも、キスをひとつ。
「!?」
「大した事じゃありません。キスした場所に意味を持たせただけの事です」
驚いて目を丸くした妻の両頬をそっと包んで、ゆっくり顔を近づけると。
無意識にだろうか、瞼をそっと閉じる彼女の長い睫毛がふるりと震える。
(頬の上ならば厚意、瞼の上ならば憧憬、でしたな。でも)
誰より深い愛情を与え合う、たった一人の女性には。
勿論その唇へ、深い愛情の口付けを、捧げた。

 

   *

 

ロマンを求める事なんぞ、僕も彼女も柄じゃない。
だけど現実の温もりを、貪欲なまでに求め合い、与え合う。

そんな、2月14日。

拍手

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
» ブログの再開、とても嬉しいです。
幸せ溢れる二人の姿に心がほっこりしました。

清四郎が出典不詳だと言っている格言、グ/リ/ル/パ/ル/ツァーの詞、「K/u/β/(K/u/s)」(邦題:接吻orキス)が出典ですよね?
私、この詩の一番最後の行が大好きなんです♪

「さて/そのほかは、/みな/狂気の/沙汰」ってやつが(笑)。

Mさま。
もし、あえて格言の出典(ネタ元)を伏せる方向でこの作品を書かれていらっしゃるのでしたら、むしろこんなこと書いてホントに申し訳ありません(一応/入れて検索避けを試みておきますが……)。

ブログの更新、まったりのんびりお待ちしておりますね。

以上、色々と失礼いたしました(平伏)。
千尋 2010/02/17(Wed)02:01:01 編集
» かわいいです
期待どうりの展開でほのぼのと読めました、べた惚れの清四郎ですね。
こちらのお話はほっとする物が多くて心安らぎます。
私の中で癒しの場です。
シャムネコ 2010/02/18(Thu)23:11:51 編集
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
プロフィール
HN:
シスターM
性別:
女性
自己紹介:
国産ヒト型40代、夫・息子1人がいます。徒然なるまま…ではないですが、勢いに任せ、所謂二次創作をちまっと数年続けてます。
当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。
バーコード
ブログ内検索
アクセス解析
カウンター

Copyright © [ 暇人の倉庫 ] All rights reserved.
Special Template : 忍者ブログ de テンプレート
Special Thanks : 忍者ブログ
Commercial message : [PR]