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前回久々にアップしました小噺に対して、皆様から温かいご感想を頂戴いたしました。
本当にありがとうございました。
個々のお客様に対する返答は、誠に勝手ながら割愛させて頂きたく存じます。
どうぞご了解願います。
で、その中でいくつか御話を頂戴したのが「清四郎編」についてのリクエストでございました。
……いやー、難産でございました。
最近いかに何もせずに過ごしていたかが、ばればれでございます(汗)。
甘さだけでも出せるように、と頑張ってはみましたが……。
何より今日が2月15日であるというのが、一番のトホホな感じでございますね(嘆息)。
2月14日、バレンタインデー。
恋する男女のための日、とは言うものの。
僕と妻の間には、はて?
*
「……んん……」
ゆっくりと瞼を開くと、既に日は高く昇っていて、室内に光が満ちている。
そして、静寂の中に上体を起こすと。
「おや、これは」
視界の隅を掠めたのは、明らかに季節を間違えた代物。
(……悠理、ですね)
見覚えのある派手な靴下状の物体は、確かに僕がクリスマスで使用したもので。
彼女へのプレゼントを入れて、枕元に置いたのだけれど。
まさかそんな小道具を、彼女が大事に持っていたとは思わなかった。
しかも、袋の一部分が明らかに膨らんでいたので。
(何と言いますか、悠理らしいですな)
正攻法など使えない、照れ屋な少女時代のそのままに成長した、妻らしいお遊びに。
思わず表情を緩めながら、袋の中身を取り出した。
センスの良さが伺える包装は、恐らく可憐の手によるものだろう。
(さて、中身は何でしょうな)
義父譲りの妻のセンスには、時に大きな疑問を抱くのが常であるが。
今まで自分へ贈られた品物に関しては、文句のつけようがないのが現状である。
恐らくは、妻の兄や頼れる友などへ相談して、慎重に品定めをしているのだろう。
今回も期待半分、不安半分に包みを解いた。
「……ほう、これはまた、洒落たものを」
黒い箱から登場したのは、スケルトン仕様の懐中時計。
所々に宝石が埋め込まれている辺り、ジュエリー・アキの細工によるものだろうか。
上質な手触りの手巻き式時計は、何とも味のある音でリズムを刻み。
僕の手にもしっとり馴染んで、時を静かに知らせてくれている。
時計に添えられたアイボリーのカードには、短めのメッセージが添えられて。
「『Be My Valentine』とは……。絶対意味を理解できてませんね、悠理は」
恐らくは可憐が気遣ってくれたのだろう、カードを眺めてから。
僕は身支度をするために、シャワールームへと向かった。
身支度を終えて、時計を眺め、目を見張る。
既に時刻は午前10時を過ぎており、朝食をどうしようかと考えたとき。
妻がいつものように賑やかな足取りで、戻って来た。
「あ、清四郎、起きてたんだ。おはよ」
「おはよう、悠理」
部屋に注ぐ光の中で微笑む妻は、惚れた欲目もあるのだろうが。
改めて、綺麗だ、と思えた。
「清四郎、飯どうする?まだなんだろ、こっちに運ばせようか」
口調がぞんざいなのは相変わらずだけれど、僕への気遣いもしてくれる辺り。
女性として確かな成長を見せてくれているのは、明白で。
僕はそうですね、と頷いてから、妻の傍へゆっくりと歩み寄り。
特別な手入れをせずとも美しさを保っている、綺麗な手をそっと取った。
「ん?」
首を傾げるその仕草すら愛らしい、などと思いつつ。
僕は彼女の掌へ、そっとキスを落として。
「悠理、知っていますか?」
「な、何だよ」
こんなキスひとつにすら動揺し、頬を赤らめる初々しさを愛でながら。
「『掌の上ならば懇願のキス』……まあ、出典も不詳の言葉ですよ」
「悪かったな物知らずで!で、それが何だってんだ?」
膨れっ面をする妻の頬にも、キスをひとつ。
「!?」
「大した事じゃありません。キスした場所に意味を持たせただけの事です」
驚いて目を丸くした妻の両頬をそっと包んで、ゆっくり顔を近づけると。
無意識にだろうか、瞼をそっと閉じる彼女の長い睫毛がふるりと震える。
(頬の上ならば厚意、瞼の上ならば憧憬、でしたな。でも)
誰より深い愛情を与え合う、たった一人の女性には。
勿論その唇へ、深い愛情の口付けを、捧げた。
*
ロマンを求める事なんぞ、僕も彼女も柄じゃない。
だけど現実の温もりを、貪欲なまでに求め合い、与え合う。
そんな、2月14日。
清四郎が出典不詳だと言っている格言、グ/リ/ル/パ/ル/ツァーの詞、「K/u/β/(K/u/s)」(邦題:接吻orキス)が出典ですよね?
私、この詩の一番最後の行が大好きなんです♪
「さて/そのほかは、/みな/狂気の/沙汰」ってやつが(笑)。
Mさま。
もし、あえて格言の出典(ネタ元)を伏せる方向でこの作品を書かれていらっしゃるのでしたら、むしろこんなこと書いてホントに申し訳ありません(一応/入れて検索避けを試みておきますが……)。
ブログの更新、まったりのんびりお待ちしておりますね。
以上、色々と失礼いたしました(平伏)。
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当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。