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暇人が開設した二次創作保管庫です。「二次創作」をご存知ない・嫌悪を覚える方は閲覧をご遠慮ください。漫画『有閑』の会長と運動部部長を推してます。
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悠理一人称ですが、少しずつ他の人も出してみようと頑張って…おかしくなった一作です(涙)
このところ、ウチの清四郎の独占欲丸出しが止まらないです。病気です。
もっと格好いい人に書いてあげたいのに…何故でしょうか。


背伸びするためじゃなくて。
何かを、変えたかっただけ。

ただ、それだけ。

 

『ピアッシング』

 

忙しい中悪いな、なんて思いつつ、可憐に相談しようと思ってメールを入れると。
矢のような速さで返答があり、午後には銀座『ジュエリー・アキ』の店内へ足を踏み入れて。
VIPルームへ通されて、お茶なんて飲んでたら、上品な黒いスーツに身を包んだ可憐が登場。
こういうシンプルな服だからこそ、可憐のスタイルの良さも強調されるってもんだ、なんて。
場違いな事を考えつつ、笑って手なんて挙げてみた。
「悪いな、忙しいのに」
「あらあ何を言ってるのよ!せっかくの大口商談のチャンスだもの、これを逃がす手はないわ」
冗談めいた口調で笑う、可憐の笑顔は相変わらず色っぽいうえに、優しくて。
何だか、嬉しかった。
「んでさ、メールでお願いしたアレなんだけど……」
「わかってるわよ、ホラ!ちゃんと準備はできてるわ、バッチリよ」
そう言って、可憐は徐に内線電話で手早く指示を飛ばし、やがて白衣姿の綺麗な女性が登場。
挨拶して、名刺なんて貰ったりした。
「うちのお客様の施術をお願いしてる先生よ。海外でピアッサーの資格も取ってる美容整形の先生だから、安心してね」
「心配なんてしてないよ、可憐の紹介だもんな。じゃ、よろしくお願いします」
可憐に答えてから、あたいは先生にもう一度頭を下げた。


ピアッシングの作業自体は、物凄く速くてあっけないものだった。
幸いあたいは出血も少なく、腫れもあまりないようで、先生は消毒等の細々したケアについて丁寧に説明してくれたあと、にこやかに退場。
残されたあたいは、可憐と一緒にケーキなんて食べながら、あれこれと雑談に耽った。
そんなあたいの両耳には、真新しいシンプルな18金のピアス。
「一ヶ月はこのままつけっ放しにして、ホールを完成させなきゃね」
「んで消毒かぁ……結構めんどくさいよな」
「全く悠理ったら、昔のまんまねぇ。綺麗になるのに手間を惜しんじゃ駄目なのよ」
あたいの言葉に可憐は苦笑いして、応接テーブルにずらりと黒っぽいケースを陳列した。
ケースに行儀良く納まっていたのは、様々な色の石を嵌め込まれたピアス達。
「うっわー、こんだけ並べるとピアスってのも圧巻だなあ」
「とりあえず、あんたは色々パーティーだの何だのがあるから、それなりに数も必要でしょ?」
適当に数色見繕った、と可憐は笑っていたが、デザインは全てシンプルなものばかり。
装飾品自体にあまり慣れていない自分を気遣ってくれた、親友の配慮が嬉しい。
「んじゃ、今日これ全部持ってっていいのか?」
「ええ、それは構わないわ。でもアンタ、自分で吟味とかしなくていいわけ?」
あたいの質問に頷きつつも、可憐はやや呆れ顔だったので、あたいは笑って付け加えた。
「だって、可憐が選んでくれたんだから、変なモンなんてあるわけないじゃん。必要ないだろ」
可憐が一瞬ぽかんとして、それからとっても嬉しそうに笑ってくれた。


帰宅したあたいの耳に早速気づいたのは、偶然家にいた母ちゃん。
「まあ悠理!まあまあまあ!!」
満面の笑みでやって来ると、母ちゃんはあたいの頭を優しく撫でて。
「悠理もやっぱり女の子なのねぇ。とっても素敵よ」
「……そっかな」
多少照れのあったあたいに、力強く頷いてくれて、それから思い立ったように付け加えた。
「そうだ悠理、今時間はあるの?ちょっと私の部屋までいらっしゃいな」
「母ちゃんこそ、時間大丈夫なの?今日って」
「ええ、今日は夜の予定もないから平気よ。さ、行きましょうか」
やたらと上機嫌な母ちゃんと一緒に、母ちゃんの部屋へ辿り着く。
相変わらずの少女趣味満開な部屋の中、あたいをソファに座らせてから、母ちゃんはいそいそと立ち上がり。
何やら薔薇の装飾が施された、小さな箱を持って来た。
「開けてごらんなさい」
勧められるままに箱を開けて、思わず「わぁ……」と声を上げる。
ローズピンクの布の中に収まっていたのは、プラチナの大輪の薔薇。
「私が若い頃に愛用していたものよ。万作さんから贈られたの」
「へぇ……」
思わず感心して見ていると、母ちゃんが続けて言った。
「さすがにそれはもう、私には似合わないのよ。悠理、使ってちょうだいな」
アクセサリーを譲ったり出来るなんて、娘ってやっぱりいいわね、と。
母ちゃんは、とても嬉しそうに笑っていた。


次の日、可憐と野梨子がウチに久々に遊びに来た。
「まあ悠理、素敵ですわよ」
手放しで褒めてくれる野梨子の笑顔が、恥ずかしい。
「そうだ悠理、あんたの手持ちのイヤリング、全部ピアスに直すから、今度持って来てね」
格安で受けるわよ、と可憐が笑って、野梨子もあたいも大笑い。
ついでにあたいは昨日母ちゃんから貰ったピアスを見せて、可憐に今つけてもいいか、と尋ねる。
「そうね、これなら大丈夫よ。でもいい細工だわぁ、さすがは剣菱のおばさまねぇ」
「本当ですわね。手作業なのでしょ?この花弁は」
野梨子も可憐も、ピアスを眺めてうっとりとしていたが、ふと可憐が言い出す。
「せっかくだから、今つけてみましょ?」
言うなりさっと立ち上がると、あたいの背後に回り込んで、今つけているピアスを外した。
そして母ちゃんから貰ったプラチナの薔薇が、あたいの耳朶で花を咲かせた。
「まあ、とっても良く似合いますわよ悠理」
「本当ね。あんたの場合顔立ちがすっきりしてるから、大きな細工も全然平気みたいね」
鏡を見ると、やたらと薔薇が存在感をアピールしてて、恥ずかしい気持ちになったけど。
2人が太鼓判を押してくれた事で、ちょっとだけ気が楽になって。
母ちゃんにも手放しで褒めて貰えたのが、嬉しかった。
そして3日後のレセプションには、豊作兄ちゃんのパートナーとして、薔薇のピアスで登場した。
「さすがはワシと母ちゃんの子だがや!母ちゃんの次によく似合うだよ、悠理」
「いいじゃないか、悠理。良く似合ってるよ」
父ちゃんや兄ちゃんにも笑顔で言われたので、お世辞とは知りつつも、上機嫌。
心なしか、いつもよりも大きな猫を被って頑張れたような気がする。
何より、あたいがお洒落に興味を持つ事で、このところ母ちゃんの機嫌が良いのがいいらしい。
───父ちゃんも、珍しく仕事に身が入ってくれて有難い、と兄ちゃんがこっそり零していた。
正直なところ、あたいの全く意図しないところで、ピアスの効果が現れてるのは不思議だけれど。


「疲れたぁ……」
レセプションも無事終わって、自分の部屋で大きく伸びをひとつ。
耳にはまだ、薔薇のピアスが咲いている。
思ったよりも軽くできていたこれは、つけていても違和感が少なかったのが良かった。
段々、慣れてきたって事なんだろうか。
(……アイツ、何て言うだろ。一応気ぃ使って、お世辞ぐらいは言うのかな?)
先々週から長期で出張している筈の男の顔を思い浮かべて、顔が綻ぶのを自覚した。

「思い出し笑いですか?」

予期せぬ時間に予期せぬ声がして、一瞬ぴくりと肩を震わせるが。
声の主には思いっきり心当たりがあったので、息を吐いてから振り返る。
案の定、そこにはかっちりとしたビジネススーツ姿の清四郎が、笑顔で佇んでた。
「お帰り、清四郎。アメリカ出張お疲れさん」
「ただいま戻りました、悠理」
既に24時間フリーパス、取次ぎ不要で出入り自由の清四郎は。
にこやかに笑みを浮かべて、あたいの前に歩いて来ると、手を伸ばしてあたいの耳朶を包んだ。
「いつ空けたんですか?ピアスホール」
「えーとね、5日前かな。可憐のトコでやって貰った」
「ああ、成程。可憐の店なら出張で医師が来ますからね、安心です」
清四郎はふむ、と頷いてから、長い指でそっと耳朶をなぞり、もう一度微笑みを浮かべる。
「とてもよく似合っていますよ、悠理。一段と綺麗ですね」


普段見慣れてるはずなのに、無駄に綺麗な顔の男は、こういう台詞の効果が5割増し。
うっかり赤面する頬を誤魔化すこともできず、あたいは無理矢理視線を逸らすだけ。
「……あ、ありが、と」
ぼそりと呟いた言葉もしっかり聞き漏らさず、清四郎はぎゅうっとあたいの頭を抱き寄せて。
「全く、困ったものですね」
溜息混じりに、聞き捨てならない一言を囁いた。
「何だよ」
気になって尋ねたあたいの頬に、軽く唇を押し付けて、吐息で笑うと。
清四郎から飛び出した台詞は、無茶苦茶恥ずかしい爆弾発言。
「これ以上お前に惚れてしまっては、一体どうしたらいいのかと困っています」
「………はぁ!?」
「今でさえ骨抜きだというのに。これ以上どうやって、お前を愛してやればいいんでしょうねぇ」
こっちの心臓が、壊れそうな程高鳴ってるのぐらい、お見通しなはずなのに。
どうしてこう、この男は、さらりと無茶苦茶な台詞を言えるのか、信じられない。
「知るかよ!」
「おや、つれないですねぇ。たまには素直に、僕を愛してるって言わないものですかね?この口は」
思わず怒鳴りつけると、清四郎は涼しい顔で片眉を上げ、あたいの唇をそっとなぞる。
「ば、ばかたれ……っ、んうっ………………」
更に怒鳴りつけようとすると、その先を強制終了させられて。
いいだけ唇と舌とで翻弄されて、息も絶え絶えになったあたいの耳元に、熱い吐息と睦言が零れた。
「もうお喋りはお終いにしましょうか。……僕も、限界ですよ……あなたに触れたくて」


真夜中に目を開けると、耳朶に清四郎の指が伝っていた。
そこには可憐から「出来るだけ外すな」と言われていた通り、最初につけたピアスが嵌っている。
さすがに大きな薔薇のピアスは、どこかに引っ掛けては拙いため、眠りの間は嵌めていない。
「何?」
「いいえ、別に」
そう答えながらも、清四郎の指はずっと耳をなぞっているのが、不思議で。
「何だよ?何か、文句あんの?お前」
ちょっとだけイラついた気分で再度尋ねると、清四郎が微笑む。
「文句じゃないですよ。ほんの少し、心残りなだけです」
「何が?」
「ピアッシングです。できれば僕がやってあげたかったな、と思っただけですからね」
「……へ」
意外な台詞に思わず間の抜けた返答をしてしまったあたいに、清四郎は苦笑して。
「お前に跡をつけるのは、僕だけの特権だと思っていますからね」
指でそうっと、先程つけた鎖骨辺りの鬱血の跡を指しながら、付け足した。

あたいの心臓が、本日二度目の暴走を始めたのは、言うまでもなかった。


    *


何かが変わったわけじゃなく。
自分が成長したわけじゃなく。

男の無茶苦茶な独占欲を再認識しただけの、冒険。

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» やぁだぁ!
清四郎ってば女医さんにまで嫉妬?!笑
でも、清四郎ならではの台詞ですよね~。
そんな事、誰も思わんって!爆

私的にはケースの中に並んだ超が3つは着くであろうピアスの大群をその場で”お持ち帰り”な悠理が羨ましいっ!
と見当違いな所で嫉妬!!私もやってみたい。←無理ですから

やっぱり悠理に対して独占欲満開の清四郎って素敵w
りん 2008/06/25(Wed)00:14:03 編集
» 清四郎が格好悪い(嘆息)
>りん様
悠理の場合、お買い物は普通にブラックカードでございましょうね。圧巻だろうなあ…。
清四郎素敵ですか?(汗)
…とりあえず、彼の悠理スキーは留まることを知らないと思われます。病気です…。
M@管理人 2008/06/25(Wed)17:45:51 編集
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国産ヒト型40代、夫・息子1人がいます。徒然なるまま…ではないですが、勢いに任せ、所謂二次創作をちまっと数年続けてます。
当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。
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