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拙宅がある街では、どうやら天気予報が雨らしく、今年の月は望めそうにありません。
団子だけ購入し、気分をそれっぽくしてみようかと思います(苦笑)
清悠で駄文を綴るのは、実に1年振り…!(滝汗)
潜伏していた頃にも捻っている小噺はあるのですが、大不調なのか、まともに完結させられておりません。
そんな中、久々にちゃんと完結させられた駄文ですので、迷わず掲載させていただこうと思います。
お目汚しで申し訳ございません。
たまには、こういう時間も。
『月を眺めて、寄り添って。』
昼休みの生徒会室で株式のチェックをする傍ら、ふと目に留まった歳時記を名乗るサイト。
冒頭の記事をざっと眺めてから、隣で本日5個目の差し入れ弁当(確か1年女子の手作り、だったか)を満面の笑みでつつく悠理へ、声をかける。
「悠理。今年の中秋の名月は来週だそうですよ」
「むあ?」
口一杯に食べ物を詰め込んだまま、それでも律儀に返答をする彼女に、苦笑いして。
返答は飲み込んでからで良い、と言ってから。
「十五夜のことですよ」
首を傾げていた彼女に、説明を付け加えてやると。
その間に彼女は口の中のものを全て咀嚼して、お茶と一緒に飲み下し。
「あ、そーなんだ。へー……それで、か」
僕の説明に、ふんふん頷き思案顔。
「おや、何かあったんですか」
「ん?や、大したことじゃないけどさ、父ちゃんと母ちゃんが何かはしゃいでて」
また何か始めるんだろうなー、何て思ってたんだけど、ソレのせいだな、と。
呑気に呟き、ふふふ、と思い出し笑い。
(……!)
全く無意識であろうその表情が、無性に可愛らしくて。
思わず、口元が緩んだ。
そんな他愛もない会話をした、数日後。
小テストを控えた悠理の勉強を見てやるために、剣菱邸を訪問すると。
いつになく、静かな印象がして。
「今年は何もやらないんですか?」
勉強の合い間に、悠理へ尋ねてみると。
「ああ、昨日から急にアメリカ行っちゃって。珍しく、静かなモンだよ」
何かウチじゃないみたいだよな、と悠理が悪戯っぽく笑ってから答えて。
確かにそうですな、なんて返す自分の口元が、また緩む。
(……それならば)
「悠理。勉強が終わったら、少し庭で月見でもしましょうか」
「へ?」
僕の提案が予想外だったのか、悠理は一瞬固まってから、にかっと笑い。
「めっずらしーの、清四郎がそんな事言うなんて」
もちろん賛成!と応じてくれた。
そのお誘いが良かったのかどうかはさて置き、案外早く勉強は目処がついて。
僕らは悠理の部屋から真っ直ぐ、庭の一角にある東屋を目差す。
「あ、さすが用意が早いな」
悠理の視線を辿ると、いつの間にか東屋の中に、お茶の支度が整っていて。
こういう所はさすが剣菱邸、と唸ってしまう。
勿論、悠理がいつの間にかお茶を頼んでおいてくれていた、という事だろうが。
「ちゃんとお茶請けが、月見団子と月餅だー」
「相変わらず剣菱邸のシェフは、気配りが細かいですな」
蓋付きマグカップに注がれていたのは、ジャスミンティーらしく、湯気と一緒に淡い香りが立ち上って。
少々ひんやりする外気も気にならない程、身体が温まる。
幸いにして雲もない空に、鮮やかな望月。
悠理と肩を並べて腰を下ろし、ぽつぽつ言葉を交わしながら見る月は、格別。
「月見酒もいいけど、こういうのもいい感じだな」
「一応未成年なんですから、その台詞を外で言うのは控えて下さいよ」
「わーってるって」
相変わらずの口の悪さと食欲で、片っ端からお茶菓子をパクつく姿には。
勿論色気の欠片もないと、承知しきってるはずなのに。
青みがかった月光に照らされる、色素の薄い髪だとか。
長い睫毛に注ぐ光で作られた淡い影が、目元をそっと覆う横顔だとか。
静かな空間に時折流れる、ちょっと低めの柔らかな声だとか。
そんな彼女の端々に、どきりとさせられてしまう辺り、自分はかなり重症だと思う。
「ん?」
不意に悠理の視線が自分を捉えたので、心臓が跳ねる。
「どうしました」
「イヤ、それこっちの台詞なんだけど」
言うや否や、悠理の手がこちらへ伸びて、あろうことか僕の頬にそっと触れた。
「な、何ですか」
「お前ちょっと顔、赤いんじゃねーの?寒かった?」
(……!)
涼しい顔の悠理に指摘され、頭の中が一瞬パニックに陥る。
まさか、自分の動揺が顔に表れていたなんて。
そんな葛藤には気付かないのか、悠理の手は不意に僕から離れていき。
身体冷やしたらマズいだろ、もう部屋戻ろうぜ、何て言って立ち上がった。
その細い身体を月光が柔らかく包み込み、輪郭をぼんやりと霞ませて。
(───まだ、もう少しだけ。)
その姿を、見ていたくなって。
「悠理」
「ん?」
こちらを見つめる細い身体を、強引に引き寄せると。
「わっ」
まだ座っていた僕の膝に、悠理が崩れ落ちてきたところを、ぎゅうっと抱き締める。
「ちょ、せい、しろっ」
「もう少し」
「へ?」
腕の中でもがく悠理を抱き締める腕に力を込めて、耳元にそっと告げる。
「もう少しだけ、ここにいてもいいですか?」
すると悠理は抵抗をやめてもぞもぞと姿勢を変え、僕の膝に腰掛けた状態になって。
ゆっくり僕に体重を預け、頭を肩にもたせ掛ける。
「……何か、あった?」
「何となくです」
気遣わしげな声に、静かに返答すると、腕の力を幾分か緩めた。
すると悠理は、わかった、と静かに答えて、空を見上げ。
「綺麗だもんな、月」
空を見上げ、呟いた。
「ええ、とても」
僕はそう言ってから目をそっと伏せて、悠理の頭に軽く凭れて。
彼女にも気付かれない程に軽く、唇で触れた。
*
互いに寄り添い、存在を確かめて。
ただ、時を過ごせるのは、幸福であるのだと。
君の温もりが、教えてくれる。
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当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。