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暇人が開設した二次創作保管庫です。「二次創作」をご存知ない・嫌悪を覚える方は閲覧をご遠慮ください。漫画『有閑』の会長と運動部部長を推してます。
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来週12日が、今年の十五夜だそうですね。
拙宅がある街では、どうやら天気予報が雨らしく、今年の月は望めそうにありません。
団子だけ購入し、気分をそれっぽくしてみようかと思います(苦笑)

清悠で駄文を綴るのは、実に1年振り…!(滝汗)
潜伏していた頃にも捻っている小噺はあるのですが、大不調なのか、まともに完結させられておりません。
そんな中、久々にちゃんと完結させられた駄文ですので、迷わず掲載させていただこうと思います。
お目汚しで申し訳ございません。

たまには、こういう時間も。

 

『月を眺めて、寄り添って。』

 

昼休みの生徒会室で株式のチェックをする傍ら、ふと目に留まった歳時記を名乗るサイト。
冒頭の記事をざっと眺めてから、隣で本日5個目の差し入れ弁当(確か1年女子の手作
り、だったか)を満面の笑みでつつく悠理へ、声をかける。
「悠理。今年の中秋の名月は来週だそうですよ」
「むあ?」
口一杯に食べ物を詰め込んだまま、それでも律儀に返答をする彼女に、苦笑いして。
返答は飲み込んでからで良い、と言ってから。
「十五夜のことですよ」
首を傾げていた彼女に、説明を付け加えてやると。
その間に彼女は口の中のものを全て咀嚼して、お茶と一緒に飲み下し。
「あ、そーなんだ。へー……それで、か」
僕の説明に、ふんふん頷き思案顔。
「おや、何かあったんですか」
「ん?や、大したことじゃないけどさ、父ちゃんと母ちゃんが何かはしゃいでて」
また何か始めるんだろうなー、何て思ってたんだけど、ソレのせいだな、と。
呑気に呟き、ふふふ、と思い出し笑い。
(……!)
全く無意識であろうその表情が、無性に可愛らしくて。
思わず、口元が緩んだ。

そんな他愛もない会話をした、数日後。
小テストを控えた悠理の勉強を見てやるために、剣菱邸を訪問すると。
いつになく、静かな印象がして。
「今年は何もやらないんですか?」
勉強の合い間に、悠理へ尋ねてみると。
「ああ、昨日から急にアメリカ行っちゃって。珍しく、静かなモンだよ」
何かウチじゃないみたいだよな、と悠理が悪戯っぽく笑ってから答えて。
確かにそうですな、なんて返す自分の口元が、また緩む。
(……それならば)
「悠理。勉強が終わったら、少し庭で月見でもしましょうか」
「へ?」
僕の提案が予想外だったのか、悠理は一瞬固まってから、にかっと笑い。
「めっずらしーの、清四郎がそんな事言うなんて」
もちろん賛成!と応じてくれた。
そのお誘いが良かったのかどうかはさて置き、案外早く勉強は目処がついて。
僕らは悠理の部屋から真っ直ぐ、庭の一角にある東屋を目差す。
「あ、さすが用意が早いな」
悠理の視線を辿ると、いつの間にか東屋の中に、お茶の支度が整っていて。
こういう所はさすが剣菱邸、と唸ってしまう。
勿論、悠理がいつの間にかお茶を頼んでおいてくれていた、という事だろうが。
「ちゃんとお茶請けが、月見団子と月餅だー」
「相変わらず剣菱邸のシェフは、気配りが細かいですな」
蓋付きマグカップに注がれていたのは、ジャスミンティーらしく、湯気と一緒に淡い香
りが立ち上って。
少々ひんやりする外気も気にならない程、身体が温まる。

幸いにして雲もない空に、鮮やかな望月。
悠理と肩を並べて腰を下ろし、ぽつぽつ言葉を交わしながら見る月は、格別。
「月見酒もいいけど、こういうのもいい感じだな」
「一応未成年なんですから、その台詞を外で言うのは控えて下さいよ」
「わーってるって」
相変わらずの口の悪さと食欲で、片っ端からお茶菓子をパクつく姿には。
勿論色気の欠片もないと、承知しきってるはずなのに。
青みがかった月光に照らされる、色素の薄い髪だとか。
長い睫毛に注ぐ光で作られた淡い影が、目元をそっと覆う横顔だとか。
静かな空間に時折流れる、ちょっと低めの柔らかな声だとか。
そんな彼女の端々に、どきりとさせられてしまう辺り、自分はかなり重症だと思う。
「ん?」
不意に悠理の視線が自分を捉えたので、心臓が跳ねる。
「どうしました」
「イヤ、それこっちの台詞なんだけど」
言うや否や、悠理の手がこちらへ伸びて、あろうことか僕の頬にそっと触れた。
「な、何ですか」
「お前ちょっと顔、赤いんじゃねーの?寒かった?」
(……!)
涼しい顔の悠理に指摘され、頭の中が一瞬パニックに陥る。
まさか、自分の動揺が顔に表れていたなんて。
そんな葛藤には気付かないのか、悠理の手は不意に僕から離れていき。
身体冷やしたらマズいだろ、もう部屋戻ろうぜ、何て言って立ち上がった。
その細い身体を月光が柔らかく包み込み、輪郭をぼんやりと霞ませて。

(───まだ、もう少しだけ。)
その姿を、見ていたくなって。

「悠理」
「ん?」
こちらを見つめる細い身体を、強引に引き寄せると。
「わっ」
まだ座っていた僕の膝に、悠理が崩れ落ちてきたところを、ぎゅうっと抱き締める。
「ちょ、せい、しろっ」
「もう少し」
「へ?」
腕の中でもがく悠理を抱き締める腕に力を込めて、耳元にそっと告げる。
「もう少しだけ、ここにいてもいいですか?」
すると悠理は抵抗をやめてもぞもぞと姿勢を変え、僕の膝に腰掛けた状態になって。
ゆっくり僕に体重を預け、頭を肩にもたせ掛ける。
「……何か、あった?」
「何となくです」
気遣わしげな声に、静かに返答すると、腕の力を幾分か緩めた。
すると悠理は、わかった、と静かに答えて、空を見上げ。
「綺麗だもんな、月」
空を見上げ、呟いた。
「ええ、とても」
僕はそう言ってから目をそっと伏せて、悠理の頭に軽く凭れて。
彼女にも気付かれない程に軽く、唇で触れた。


   *


互いに寄り添い、存在を確かめて。
ただ、時を過ごせるのは、幸福であるのだと。

君の温もりが、教えてくれる。

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プロフィール
HN:
シスターM
性別:
女性
自己紹介:
国産ヒト型40代、夫・息子1人がいます。徒然なるまま…ではないですが、勢いに任せ、所謂二次創作をちまっと数年続けてます。
当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。
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