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悠理一人称。
食い気の発達している彼女なら、ありかもしれないエピソードを捏造。
素敵なディナーを、ご一緒に。
……とは、いかないけどね。
『午後11時、歩く。』
今日は金曜日。
ガッコが終われば、素敵な週末。
ってな訳でホントなら、皆で夜遊びしたかったけど。
やれデートだ、パーティーだ、と身体が空いてない奴ばっか。
つまんなくて、考えてみて。
決めた。
*
「ご注文は?」
「あたい、味噌チャーシュー大盛り!」
「あいよっ」
夜の10時を過ぎても、まだ活気のある、すすきの歓楽街。
TVで何度も紹介された人気店には、さすがに行列はないけれど、たくさんの人で賑わって。
サラリーマンだけじゃなく、観光客だってたくさん。
「はいよ、お待たせ。味噌チャーシュー大盛り!」
あたいの思考を打ち破り、目の前に運ばれてきたのは、いかにも美味しそうな湯気を上げてる丼。
炙ったチャーシューが、丼から溢れんばかりに盛り付けられて、柔らかさを主張してる。
「いっただっきまーす!」
割り箸を割って、さっそく一口。
濃い目のスープと、柔らかなチャーシューの味が口いっぱいにひろがった。
「うっまー!やっぱ味噌ラーメンは札幌だなあ」
「おお、お姉ちゃん美味そうに食べてくれるねぇ!嬉しいなあ」
「えへへ、だっておっちゃん、コレほんとに美味いよー!」
温かいラーメンと、温かい笑顔のおっちゃん。
嬉しくなって、顔がにやけて。
いつもよりも更に、箸が進んだ。
「満足ですか?悠理」
丼から溢れんばかりのラーメンを、物凄い速度で平らげたあたいにかけられる、声。
「うん!やっぱ来て正解!付き合ってくれてサンキュな、清四郎」
「……どういたしまして」
あたいの隣で、味噌チャーシュー(でも普通盛り)を平らげた清四郎が、笑った。
いつもの皮肉たっぷりな感じじゃない、穏やかな笑顔が、何だか嬉しい。
「さて、お腹も満足したでしょう?そろそろホテルへ戻りましょうか」
「ん、そーする!」
清四郎が促すのに応じ、お勘定を済ませてから、店を出る。
早足で、駅前のホテルへ向かった。
「それにしても、味噌ラーメンのために、わざわざ学校の後で札幌へ直行ですか」
「だ、だって!どーしても味噌チャーシュー食いたかったんだもんよっ!」
「まあ……夜食の餃子のために、香港へ行ってしまう万作おじさんの娘ですからね、お前は」
道すがら交わす会話の中、いつもの通り清四郎は皮肉めいた言葉を言って。
あたいは頬を膨らませ、そっぽを向いて。
それはもう、いつもの通り。
でも。
「……なぁ、清四郎」
「何ですか?」
いつも通り、穏やかな表情で佇む男に。
あたいにしては珍しく、素直に感謝の言葉を口にしてみた。
「付き合ってくれて、ありがと」
「おや、随分と殊勝な態度ですねぇ」
「あたいだって、礼ぐらい言えるわい!ったくもう、人が折角……」
皮肉めいた口調で返されて、思わず言い返すけれど。
清四郎の表情を見て脳裏に浮かんだのは、ここに来る数時間前、部室での事。
やたら多忙なこの男が、思い立った計画のために早々と引き揚げようとしたあたいを呼び止めて。
事情を話すと、苦笑交じりに溜息ひとつ。
そして。
『……一緒に行きましょうか。おまえ一人では危なっかしくて、仕方ないですからね』
いつものように、あたいの頭を撫でてくれた。
あの時の優しい瞳と、同じ目だったから。
「………清四郎」
「何ですか」
「やっぱ、ありがとう。今日、一緒に来てくれて」
あたいはもう一度、お礼を言った。
すると。
清四郎の表情が、目に見えて変わる。
一瞬虚を衝かれたような表情になって、それから。
「いいんですよ」
数時間前と同じぐらい、優しい声で言ってくれて。
また、あたいの頭をそうっと撫でた。
「さ、ホテルでもう休みましょう。明日は、小樽で海の幸を堪能するんでしょう?」
「うん!あ、でもさでもさ、ちょっと部屋で呑もうぜ!」
「仕方ないですな、程々にして下さいよ」
清四郎の言葉に頷いて、あたいはホテルへの道を歩き始めた。
*
まだ眠るには、ちょっと早いと思うから。
いつもより、少しだけ優しい男に、少しだけ素直になって。
もうちょっとだけ、話そう。
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当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。