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清四郎一人称。
一応「午後11時、歩く。」の続きとなっております。
特別を、期待するのは。
まだ早いから。
『午前1時、溜息。』
当日出発2泊旅行、行先は札幌。
唐突な旅を思いついた僕の連れは、満面の笑み。
「あのさ、清四郎、ワインあるんだ!後で、そっちの部屋で呑もうぜ?」
断るという選択肢は、僕の中にはなかった。
*
2人での酒盛り。
オードブルの代わりには、悠理がいつの間にか買い込んだ、大量のおやつが持ち込まれ。
ワインは既に、3本を空けた。
シャワーを浴びた後の悠理は、アルコールも手伝ってか、頬をほんのり薔薇色に染めている。
……服装は、これ以上もなく派手かつ色気のない室内着だったけれど。
「どこで調達してきたんですか?このワイン」
「ん?こっちで買った。ホラ」
「……成程」
ラベルを見て納得。確かに、近郊のワイナリーで生産しているものだった。
「結構いけますな」
「だよな。あたいもコレ初めてだけど、美味かった。みんなへの土産に明日買うつもり」
ほにゃあ、とどこか気の抜けた笑みを見せる悠理。
年よりも幼いその表情に、何故か心臓が跳ね上がった。
「……おや」
席を外していた間に、悠理は眠り姫モードへ突入していた。
「風邪をひいてしまいますよ、悠理。起きて下さい」
「………んー………」
呼びかければ生返事をするものの、すぐに舟を漕ぎ始めるその姿は、もう動かすのが困難そうで。
「仕方ありませんねぇ」
ひとり溜息交じりに呟いてから、華奢な身体を抱き上げて、ベッドへと運んだ。
日頃から驚くほど活発で、抜群の体力や運動能力を見せるのに。
その体躯は驚く程に白く細く、ちょっと力を込めて握れば折れてしまうのではないかと、錯覚。
実は端整な造作を持つ顔は、十二分に美少女としての資質を持っているのに。
幸か不幸か、溢れる程のエネルギーを以って絶えず動き回る彼女は、誰にも追えない。
そう、『僕』以外は。
きちんとベッドメイクがなされたベッドに悠理を横たえ、上から毛布をかけてやる。
そのまま僕は片肘をついて横になり、静かな寝息を立てる寝顔を眺めた。
緩く開いた唇から漏れる吐息が、何故か甘く香って。
もっと近くで、その寝顔を見詰めたくなって。
そっと隣へ身体を横たえ、片肘をついて、悠理の寝顔を見下ろす。
身じろぎひとつせず、安堵しきった表情で眠る様は、僕への信頼を示しているかのようで。
……でも、男にとって、それは決して喜ばしいことではない事も、承知している。
異性として意識されていない、片恋の相手ならば、尚更。
(おまえは……いつになったら、僕を男として意識してくれるのでしょうね)
やるせない気持ちは、溜息に溶けた。
でも。
ほんの少しの、男の本音。
それは彼女の甘い吐息に誘われたのか、微かな笑みを称えた寝顔に惑わされたのか、わからないけれど。
薔薇色に染まる頬に顔を近づけ、触れるか触れないかの接吻。
眠り姫には、気づかれない。
顔を上げても、やはり彼女は眠ったままで、不思議と心が温かい。
「おやすみ悠理……いい夢を」
酔った振りをして誤魔化すか、などと頭の片隅で少しだけ、考えてから。
僕は部屋の照明を落として、眠る悠理を抱き締めたまま、目を閉じた。
*
もう少しだけ。
砂糖菓子のような関係に、浸ってもいい。
僕の溜息に気づかれるまで。
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当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。