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消しちゃおうとも思ったのですが、勿体無いし(爆)
既にお読みになられた方々にとっては、新作でも何でもなくて申し訳ありません。
テーマは「雨」ですが、設定は全く考えずに書いたので、色々とおかしな点が多いです。
ご了承下さいませ。
気づかれるのは、嫌。
『しずく』
薄暗い部屋に、雨音が微かに響く。
まだ、帰りたくなくて。
窓枠に椅子を引き寄せ、頬杖をついて外を眺める。
仲間たちは、デートだ何だと所用があって。
残りは、自分ひとり。
傘の花を、数えてみたり。
「帰らないんですか」
唐突に聞こえた、帰宅してると思った男の声。
振り返ると、相変わらずの無表情男がじっと見てる。
黒い瞳からは、感情が読めない。
「もうちょっとだけ、いる」
静かに答えてから、窓の外へ視線を戻した。
さっきより、雨音が強くなった心地。
生徒もあらかた下校して、敷地内もがらんとして。
灰色の景色が、寒々しい。
でも、まだ、ここには。
「まだ外を見ているつもりですか」
さっきと同じ調子の、感情が読めない声。
座ってるあたいの隣へ立って、同じように外を見てる男。
ちらりと視線を送ってみると、端整な横顔がやけに陰影を帯びて。
じっと見てたら、相手がこっちに振り向いた。
甘い空気なんて、ここにはない。
睨み合いというか、牽制し合ってるというか。
どこか、張り詰めた感覚。
「そろそろ帰った方がいいですよ」
「お前こそ、何で帰んないわけ?」
口を尖らせて声を上げると、端整な顔が少しだけ歪む。
と、思ったら、大きな手が伸びてきて。
あたいの頭を包みこんで、優しく撫でた。
「そんなに泣きそうな顔のお前を、置いて帰るなんて、できませんよ」
朴念仁のくせに、無駄に鋭いときがある。
雨音みたいに優しい響きの声は、正直辛い。
何だか、目から余計な雫が零れてきそうで。
「お前さ……ちょっと、目敏く気がつき過ぎ」
「悠理限定ですよ」
「何で」
「当たり前でしょう?僕はお前しか見ていないんですから」
無表情な男の、溜息がひとつ。
そして、こいつには似つかわしくない囁きが。
自分の耳に、転がり落ちてきた。
「どうですか?そろそろ僕を認めてみませんか」
「何を、だよ」
「とぼけても駄目ですよ」
「いい加減に覚悟してもらわないと、僕も遣る瀬無いですからね」
そして男は、覆い被さるように自分を腕の中へ閉じ込めた。
「僕は前にも言いましたよ」
「………な、にを………」
「お前が泣きたくなったときには、必ず僕が傍にいる、と」
力強くて、温かい束縛が。
何かを、砕く。
「だから、僕の前で我慢はするな……」
「……ば、っか……やろ……」
とうとう壊れた、瞳。
噴水みたいに溢れて、止まらない雫。
握った拳で拭おうとして、止められる。
「我慢をするな、と言ったでしょう?」
大きな手が、拳をぎゅっと握り締めて。
指を開かされて、引き寄せられて。
男は、何度も指に口付ける。
「ちょ、な、や……め」
「やめませんよ」
「な、んで」
「ずっと前から言ってるでしょう。お前を好きだからですよ」
嬉しくて、口惜しいから。
両手で男のシャツを掴んで、思いっきり握ってやって。
せめて、ひどく皺だらけにしてやった。
男は、笑ってた。
*
気づかれるのは、嫌。
だけど。
気づかれたのに、嫌じゃない。
口惜しいけど、嬉しい。
(掲載期間 2008.6.26~2008.6.30)
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当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。