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暇人が開設した二次創作保管庫です。「二次創作」をご存知ない・嫌悪を覚える方は閲覧をご遠慮ください。漫画『有閑』の会長と運動部部長を推してます。
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暴走管理人でございます(爆)書いた駄文はとりあえず上げちまえ、と自暴自棄スイッチ入りました。
ということで、カテゴリ分けした無自覚カップルの無駄に甘い一文を。『それなりにドラマチック』続編です。
ここまでイチャコラしてて自覚がないとは…書いていながら「有り得ねえ!」と叫びたくなります(オイ)

あまり、意識なんてしてなかったけど。
所謂「空想的な要素をもつ物語」と取るか、「恋物語」と取るか。
それだけで全く違うものになるんだ、と話してたのは、アイツだったかもしれない。

昔の自分にとっては、お菓子の家で。
アイツが言うところの男のそれは、父ちゃんの生き方だって言ってた。
とても真似できない、とも零してたけど。

人それぞれの、ロマン。

 

『それなりにロマンチック』

 

倶楽部の連中と仲良くなってからの色んな経験は、他のどんな奴らとも味わえないもの。
幽霊やら殺人やら誘拐やら宝探しやら……数え上げればキリがない。
どれも、皆で一緒に解決してきた事ばっかり。
一人だったら決して出来なかった事も、皆と一緒だから出来たんだと、本気で思える。
そして、いつでも自分が泣きついたのは、やっぱり。
(……清四郎だったんだよなぁ)
自分の部屋でソファにうずくまり、ぼんやりと見上げる天井。
見慣れた空間の中で、何故か無駄に顔だけは良く、性格が物凄く悪い男について思索する。
お互いに、好印象など欠片もない出会いだったと断言できる、あの出会い方。
あれから長い時を経て。
今では気の置けない仲となり、背中を預ける事すら平気でできる存在となっている男。
……途中で『元婚約者』という全く有難くない肩書きまで、互いに背負ってしまったが。
今ではもう、それすらも懐かしい記憶のひとつ。


   *


「何を考えているんですか?」
声をかけられて、深い思考の海に沈んでた意識が浮上した。
そこにいたのは、既にこの家にもこの部屋にも、断りなしに入れる資格を持った奴。
年相応とは思えない英国トラッド的な衣装が、何故か妙に似合ってるのが不思議だといつも思う。
「あれ、清四郎、来てたんだ」
声をかけると、相手は片眉を上げ、微苦笑。
それから自分の傍へ来て右手を取り、これ見よがしに甲へ口付けてから、笑う。
「帰って来た、の間違いでしょ?僕もここの住人なんですよ、悠理」
「あ、そだった、悪い。んじゃ、お帰りなさい」
あたいはソファから立ち上がって、清四郎に抱きつくと、頬に軽くキスを贈る。
「───ただいま戻りました」
満足げに頷いた清四郎は、今度こそ正式な『婚約者』として、この部屋の住人となったばかり。
同室での生活は、まだ慣れないけど不思議な感じで、しかも不快じゃないのが面白い。
内線でコーヒーを頼んでから、着替えを済ませた清四郎の話し相手になるのが、今のあたいの日課。
「菊正宗の家から、荷物って全部送れたん?」
「ええ、お陰様でね。これで、生活拠点は100%こちらへ移ります」
「荷物の搬入って明日だったよな?あたい達が外出してから、ってじいが言ってたもんな」
「そうですよ。おじさんのお見舞いと、式場の打合せと……午後からは衣装合わせですな」
あたいが首を傾げると、清四郎がシステム手帳でスケジュールを確認。
「うえぇぇ」
思わず顔を引き攣らせたあたいに、清四郎は苦笑した。
「花嫁がウェディングドレスを選ぶのに、しかめっ面ですか」
「だってさ、またどうせ母ちゃんが総レースのドレスとか出して来んだぜぇ!?あーヤダ!」
「……否定できないのが、痛いですな」


確実に起こるであろう、高級シルク&レースの攻撃に、早くもあたいのテンションは超下降。
「どうせなら、お前も一緒に犠牲になれよ!フリルびっしりのジャケットとか、蝶ネクタイとか!」
「勘弁して下さい、それだけは。末代までの恥です」
さすがに清四郎も、兄ちゃんが着せられてるようなフリフリのスーツを想像したのか、嫌な顔。
実際のところあたいだって、あんな格好をさせられた清四郎は見たくもない。
……兄ちゃんよりは、似合いそうだけど。
「あーあ、母ちゃんにとっては、あのフリルとレースの世界がロマンなんだろーなぁ」
思わずぼやく一言に、珍しく清四郎が反応を示し、にやりと笑う。
「おや、よもや悠理がロマンについて話すとは。やはり結婚を意識すると、人間変わるものですかね」
「うっさい!たまたま思い出しただけだい。ちぇ、いっつもあたいの事馬鹿にするもんな、お前」
相変わらずの、人を小馬鹿にしたような口調にムカついて、あたいは清四郎から視線を逸らす。
すると清四郎は、先程運ばれてきたコーヒーを一口含んでから、心持ち距離を詰めてきた。
「マリッジブルーにはまだ早いような気もしますけどねぇ。何を思い出したんですか?悠理」
「え?ああ、ロマンの話?えーとね」
そこであたいが話したのは、かつて訪れた南太平洋での、清四郎の言葉。
奴はちょっとだけ目を見開いてから、ほうっと溜息をひとつ。
「まさか、そんな他愛もない会話を覚えていたとは意外でしたね」
苦いものを含む笑顔が、気になった。
「お前さ、まだ父ちゃんと張り合うつもりだとか、そんなん?」
尋ねてみると、清四郎はさっきの辛そうな笑みを強めて。
「僕程度の器では、おじさんには一生勝てませんよ。そんな高望みをするつもりは、ありません」
山よりも高いプライドの男が、未だに持ってるらしい父ちゃんへのコンプレックス。
正直そんなの必要ないって思うけど、どうしてもコイツは、拘ってる。
はっきり言って……馬鹿。


「清四郎」
「何ですか?」
あたいは深呼吸してから、思ったことをぶつけてみた。
「お前さ、今からでも、あたいとの結婚やめるか?」
「は!?」
唐突な言葉に目を丸くした清四郎に、あたいは続きを言った。
「だってお前、これから何かやる度に、きっと嫌でも父ちゃんと比べられるぞ。今でさえもうそんな風に拘ってんなら、この先ずっと、生きてる間中大変だからさ。父ちゃんは父ちゃんだし、お前はお前だろ」
「悠理……」
「あたいはお前がお前らしく、俺様っぽい感じで何かやらかす方が、お前らしいしカッコイイと思う。あたいに協力して結婚してくれるって言ってもさ、そんな無理までして欲しくないからな。マジでやめるなら、今のうちだぞ」
どうする?と言って首を傾げると、清四郎は一度下を向く。
あれ?と思ったら、次第に肩を震わせて、やがて珍しく大声で笑い始めた。
「せ、清四郎?」
何でいきなり、と目を白黒させるあたいの目の前で、清四郎はなおも腹を抱えて大笑い。
ひとしきり笑い続けた後で、漸く納まったその表情は、どこか晴れやかで、目に涙が浮かんでた。
「全く……悠理には本当に驚かされますね」
溜息を交えてそう言うと、清四郎は徐に立ち上がって、あたいの所へやって来て。
ソファに掛けていたあたいを立たせると、ふんわりと抱き締めた。
そのままあたいの髪に顔を埋め、動かなくなる。
「清四郎?」
声をかけるあたいの耳元に、清四郎の声が届く。
「悠理、すまない。少しだけこのままで」
「……ん」
腕の力が少しだけ強くなったのは、気のせいじゃなくて。
あたいはそうっと清四郎の背に手を回し、目を閉じて凭れかかった。


どのくらい時間が経ったのか、わからないけど、清四郎の声が再び届く。
「悠理、もういい。ありがとう」
目を開けて清四郎の顔を見ると、穏やかに笑ってて、あたいも嬉しくなった。
「落ち着いたのか?」
「ええ、もう平気ですよ。ありがとう、悠理」
「ん」
あたいは頷き、そのまま清四郎から離れようとしたけれど、奴の腕の拘束は緩まない。
「清四郎?」
首を傾げると、清四郎は笑顔のままであたいの額へ軽くキスをひとつ。
それから、もう一度あたいの髪に顔を埋めた。
「ねえ、悠理」
「何だ?」
「お前と婚約する事に決めたとき、僕はお前の笑顔を守るために、何でもするって思ったんです」
清四郎の静かな声は、じわじわとあたいの心へ染み入って。
あたいは静かに頷いて、黙って耳を傾けた。
「でも不思議ですね。今の僕は、お前に守られている気がしますよ」
「あたいが?」
「ええ。お前はやっぱり感情のままに動く人間だから、僕にとってはいつも予想外の、びっくり箱のような奴ですけれど……でも誰よりも真っ直ぐに、僕の心を見抜いてる。そして、僕の欲しい言葉をくれるんですね」
ふふ、と吐息で笑う清四郎の仕草が、可愛いなんて思えてしまうのが、不思議だ。
あたいはちょっとだけ困って、でも嬉しくなったから、清四郎に囁いた。
「お前、頭いい分考え過ぎて、たまに詰まるんだよ、きっと。あたいは考えなしに色んな事して、お前にメーワクかけちゃってるけどさ、お前が詰まってるときぐらい、逆でもいいんじゃね?」
「───単純極まりないですな。でも確かに……それでいいのでしょうね、僕達なら」
「いいじゃんか、どうせ共犯なんだから、お互い助け合うって事で」
「そうですな」


あたいたちは、お互いの目を見て、笑い合って。
それから、どちらからともなく目を閉じて。
ごくごく自然に、触れるだけのキスをした。


   *


恋愛なんて、知らないけれど。
意識しないでも寄り添って、お互いの温もりを確かめ合う関係。

それなりに、ロマンチック。

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» オカシイーーーーー!
これで無自覚???
明らかにダダ甘恋愛真っ最中じゃないですかっ!
でも逆に言うと、この2人だから出来る荒業ですよね(笑)
普通、どんだけニブくても気付いてますってば♪

そーかー!この2人(確実に1人かも)は初夜を迎えて初めて気付くのかw←おいっ
当然、悠理は気付かなさそう(爆)
りん 2008/07/06(Sun)00:01:12 編集
» 絶対オカシイですよね!
>りん様
天然同士っていうか、何というか、変ですね。
続きでどこまで無自覚を保てるかがわかりませんが、できれば初夜ぐらいまでは突っ走ってもらいたいです。…って書くの自分(爆)
この2人面白いので、頑張りますー
コメントありがとうございました!
M@管理人 2008/07/06(Sun)14:47:44 編集
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国産ヒト型40代、夫・息子1人がいます。徒然なるまま…ではないですが、勢いに任せ、所謂二次創作をちまっと数年続けてます。
当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。
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