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悠→清的な不安を表現しようとして挫折…。
絡まって、解けない。
離れられなくなっていく。
『蜃気楼の鎖』
自分らしくないことぐらい、百も承知。
でも、だからこそ、気づかれない。
大丈夫だって、今日も心に何度も言い聞かせ、あたいは笑顔を作る。
「おっはよー!」
「おはようございます、悠理」
いつも連れ立って登校する幼馴染の2人へ、挨拶して。
早足で、駆け抜ける。
部室では、大抵魅録とつるんで話し込む。
まあ、ロック同好会だし、当然なんだけど。
可憐がお茶を淹れてくれて、あたいや美童への差し入れなんかをお茶うけにして。
穏やかにしたり、馬鹿騒ぎしてたり、たまに生徒会の仕事もしたり。
普通の、いい時間。
───囲碁倶楽部の方をちらりと、盗み見てちょっとだけ胸がぎゅっとなるのには、蓋をする。
試験前は、決まって清四郎と勉強会。
あたいの頭の出来の悪さに、溜息交じりの男の皮肉は絶好調。
「全く……どこをどうすれば、こんな成績を取れるのか、教えて欲しいもんですな」
「うっさい!あたいだって別に、好きでばかなんじゃないやいっ」
「そう願いますよ。さ、次の問題行きますよ!」
「うげぇぇぇ」
スパルタ教育の間中、漂う雰囲気に、甘さなんて一欠片もあるはずがなくて。
ま、仕方ないけどさ。
問題を解く間中、清四郎は時間潰しに読書中だったりする。
チラ見する度、あたいは後悔。
無駄に色気を振り撒いている存在は、見てて苦しいから。
顔良し、頭良し、性格……は多難だけれど。
とにかく世間様の評判高い、申し分のない男であることには違いないから。
でも。
あたいたちは、間違いなく友達で。
こんな気持ちは持ちたくなかったのに。
……気づきたく、なかったのに。
「悠理?」
声をかけられて、はっとする。
気がつけば、あたいは問題そっちのけで俯いてた、らしく。
清四郎がやけに気遣わしげな視線を向けて、あたいの頭をそうっと撫でる。
大きくて温かい手の感触が、嬉しくて、口惜しい。
「大丈夫ですか?休憩にしましょう」
「……んーん、平気。ゴメン、すぐ続き、やっから」
あたいは殊更に元気そうな声を上げ、即座に問題へ取り掛かる。
「……そうですか」
清四郎は、再び本へ視線を落とした。
さっきの手の感触が、まだ残る。
頭を撫でる仕草は、あたいのお気に入り。
そんなガキっぽい事されて喜ぶのは、きっと自分だけ、だろうけど。
数少ない、清四郎に構ってもらえてるひと時だから。
(ありがとな、清四郎)
心の中だけで、そっと呟いて。
あたいは、また心の中に蓋をした。
苦しく激しい鼓動に、蓋をした。
*
触れることのできない、蜃気楼のような想いに。
囚われて、動けない。
もう、逃げられない。
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当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。