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暇人が開設した二次創作保管庫です。「二次創作」をご存知ない・嫌悪を覚える方は閲覧をご遠慮ください。漫画『有閑』の会長と運動部部長を推してます。
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自分的にはお題は「七夕」と「ガイアナイト」でしたが…はて、どこへ行ったやら(汗)
蜜ろうの蝋燭を使用した理由は、炎自体の色が綺麗だったのと…高級蝋燭だったからです、ハイ。
高いものだと1本数万(!)って、そんなモン一般人には買えませんよねー。
日付が変わってから、早めにアップさせたかったので、夜中まで起きてました(爆)
拍手レス等については、夜に改めて参ります。


夜だから。
暗闇だから。

見えないものが、見える。

 

 『星明りの夜』

 

「そろそろ始めましょうか」
清四郎の静かな声に、頷いて。
あたいはテーブルの上に鎮座していた、大きなキャンドルに火を点す。
ガラスのホルダーに納まった蜜ろうキャンドルは、黄色と褐色のマーブル模様。
「うわぁ……」
柔らかく揺らめく明かりが綺麗で、思わず声を上げた。
室内の照明を落としてから、清四郎も隣へやって来て興味深げに頷く。
「話に聞いた通り、赤みを帯びた美しい炎ですな。香りも甘い」
「蜜ろうって言うぐらいだもんな、蜂蜜の香りだろ、これ」
「アロマキャンドルには及びませんが、この香りもいいかもしれませんね」
「あたいは、こっちのが好きかもしんない」
普通のろうそくでは決して見る事のできない、輝くような色の炎。
あたいはじいっと、揺らぐ炎を見つめていた。
「悠理、蜜ろうというのはとても歴史あるものなんですよ。知ってますか?」
清四郎が豊富な知識を披露するのには慣れっこだけど、今だけは勘弁して欲しくて。
「いい。お前の薀蓄聞かなくても、炎が綺麗なのは変わんないだろ」
コンプレックスなのかもしれないけど、ちょっとだけ意地悪を言った。


あ、珍しく清四郎が黙ってる。
「怒った?」
視線を向けて尋ねてみると、意外な事に笑ってて、むっとしてる雰囲気はなかった。
「いいえ。お前らしいですな」
でも、何だか調子が狂ってしまい、結局首を傾げると、今度こそ吹き出す。
「僕が大人しく引き下がるのは、そんなに違和感がありますか?」
……考えてた事、すっかり見抜かれてて、少しだけ口惜しい。
あたいは曖昧に笑顔を作ってから、奴の肩にそうっと凭れかかってみた。
驚いたことに、途端に清四郎の体が、ほんの少しだけ強張る。
「清四郎?」
隣を見上げて首を傾げると、そこに見えたのは、珍しく頬をほんのり赤く染めた顔で。
あたいの頭の中に、大きなクエスチョンマークが跳ね出した。
すると奴はあたいの肩を引き寄せて、溜息をついてから、珍しくか細い声で告げた。
「……反則ですよ、悠理」
「何が?」
清四郎が何かに動揺してるのはわかったけど、原因がさっぱりわからなくて。
あたいの頭の中では、大小様々のクエスチョンマークが、フォークダンス。
すると、奴はあたいの耳元に唇を寄せて、囁いた。
「僕の方が、混乱させられていますよ。お前がいつもより、素直に甘えてくれるから」


唐突に落とされた爆弾の威力は、そりゃもう絶大。
「………なっ!」
あたいは一気に言葉を失い、全身の血が沸騰しそうな勢いで体温が急上昇。
とんでもない発言をした男を睨みつけると、奴は逆に落ち着きを取り戻したのか、吐息で笑って。
「ああ、すみません。2人の時なら、お前はいつも僕に甘えてくれますよね」
やたら余裕ぶった発言までして、あたいの頬をそっと撫でた。
すっかりいつもの清四郎に戻ってしまって、今度はこっちが赤面してしまう。
(ちっくしょう!何でそんなに、お前、かっこ良さげに見えるわけ!?)
心の中で毒づいてみるけど、実際こいつが、客観的に見ても綺麗だってのは事実。
しかも今は、部屋の照明が落とされ、ろうそくの仄かな明かりだけが頼りで。
無駄に綺麗な顔が、陰影が強調されるせいか更に色っぽく見えてしまい、正に目の毒、犯罪級。
すると、清四郎はあたいの頬を撫でるのをやめて、そっと包む。
「何………………っ」
そのまま、柔らかくキスを落とされて。
顔を上げた男は、ぞくりとするほど低い声色で、囁きを落とした。
「仄かな明かりのせいでしょうか。お前がいつもより、儚げに見えますよ」
「儚、い?」
相手の意外な発言に、首を捻ったあたいに向かって。
「お前は髪も目も、色素が薄いでしょ。太陽の下にいる昼間ならともかく、夜は闇に食われてしまうんじゃないかと、いつも不安になるんです」
清四郎は、珍しいぐらいに不安げな瞳で、ぽつりと告げた。


「……そんなわけ、ないじゃんか」
そっと呟くと、清四郎はもう一度、あたいに口付けて。
「悠理。お前がちゃんとここにいる事を、僕に確かめさせてくれ……」
真剣そのものの表情と、肩を抱く手の力の強さに、あたいは頷くしかなかった。

 

 

 

目を覚ますと、清四郎が穏やかな表情で、あたいをじっと見つめてて。
ベッドサイドのテーブルには、先程と同じろうそくの炎が揺らめいていた。
「……もしかして、あたい、気絶した……?」
全身に残る半端ない倦怠感からも、状況は自ずと知れて。
うっかり赤面しそうな記憶を辿りつつ尋ねてみると、相手はあっさり頷く。
「ええ。すみませんね、僕が無茶を強いてしまったので」
「……んな事、言わんでいい!」
さらりととんでもない発言をする男に文句を言うと、奴は笑みを浮かべてあたいの手を握る。
「清四郎?」
首を傾げるあたいに向かって、清四郎は話してくれた。
「悠理、見て下さい」
「え?」
「窓の外ですよ。ホラ」
大きな手が指し示した窓の外には、満天の星空。
人工の明かりを落とした夜だからこそ、ガラス窓越しでも鮮明に見えた夜空。
「わあ……!」
「今日はこれだけ良く晴れましたからね、きっと織姫と彦星の逢瀬も叶ったことでしょう」
「あ……そうか、今日って七夕だもんな」


子供の頃なら、毎年笹を飾って、短冊にお願い事を書いていたけれど。
さすがに自分が成人した今年、うちでもやらなくなった行事。
「一年に一度、かあ。逢えたよね、きっと」
空を眺めながら呟くと。
「ええ」
清四郎が静かに答え、あたいの体に両腕を回す。
そのままぎゅっと抱き締められて、少しだけ気恥ずかしいけど、嬉しくなって。
「清四郎」
「ん?」
優しくこっちを見つめてくれる相手に向かって、にっこりと笑って。
「大好き」
一言だけ、言ってみた。
すると清四郎が珍しく、ばばばっと赤面し、顔を逸らす。
「………………本当にもう、反則ですよ、悠理」
「何でだよ」
口を尖らせて文句を言うと、未だ顔を逸らしたままの男は、溜息交じりに零す。
「そんなに可愛い態度ばかり取られては……僕の理性が、また飛びます」


───意味を理解するまで、数秒。
そして、あたいが抗議しようと開いた唇は。
実際に声を発する間もなく、強制的に塞がれた。


   *


たまには素直に、互いの心を見せ合って。
年に一度の逢瀬のように、相手に酔って溺れてもいい。

お願いするより手を伸ばす、星明りの夜に。

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コメント
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» うふふふ・・・
眠れなくて、完徹もどき・・ですが、よかったあ。寝なくて。もう、朝一番、得した気分です。タイトルは、あたしの素直な気持ちです。ここへ来ると、素直に幸せ感じちゃうんですよね。もっと、もっとうふふなお話を提供して下さいね・・・。
抹茶 2008/07/07(Mon)04:59:37 編集
» 大丈夫ですか?(汗)
>抹茶さま
再度のコメントありがとうございます!
得した気分になっていただけたなら、幸いです。
それにしても眠れないのはお辛いのでは(汗)どうか今夜はごゆっくりお休み下さいね。
「うふふなお話」目指してこれからも精進しますので、よろしければまたお越し下さいませ!
M@管理人 2008/07/07(Mon)16:58:07 編集
» 甘い甘いわっ(笑)
清四郎って、悠理の素直さに弱いんですねー(笑)
若干初く見えるのに、ヤル事はヤル(爆)

素敵な七夕に感謝!
りん 2008/07/08(Tue)00:00:35 編集
» ウチの清四郎さんは弱気…
>りん様
段々強さがなくなって来てる感がありますね、ウチの清四郎(汗)
でもちゃんとやる事はやってます、確かに(爆)
コメントありがとうございました!
M@管理人 2008/07/08(Tue)17:59:07 編集
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性別:
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自己紹介:
国産ヒト型40代、夫・息子1人がいます。徒然なるまま…ではないですが、勢いに任せ、所謂二次創作をちまっと数年続けてます。
当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。
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