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寝そびれてしまいました、うっかりと。仕方ないのでとりあえず作品アップ(何故)。空飛ぶ青い何か。様からお借りしたお題の2作目、可憐視点を書いてみました。前作とあまり変化なしか(汗)
拍手たくさんありがとうございます!レスは夜にでもまた改めてさせていただきます。
2 風の休憩所
今日は風が、大人しい。
*
珍しく、朝から悠理の調子が悪そう。
用事があって部室に行ったら、テーブルへ突っ伏していた。
「あら?悠理、どうかしたの」
「可憐……」
いかにも調子悪そうな声に、青ざめた顔色。
こんな様子のこの子を見て、思い当たる事はひとつ。
「あんた、二日酔い?」
すると悠理は、面倒そうながらもこちらを見て、恨めしそうに零す。
「違うー……アレ」
「ああ……」
思い当たる、女性ならではの病。
「あんたって、確かそんなに痛まないんじゃなかったっけ?」
「……ちょっと、今回はキツい……」
眉間に皺寄せて話す悠理は、本当に辛そうで。
やっぱりこういう時ぐらいは、この子が女なんだって事を、今更ながらに思い出す。
「わかったわ、待ってなさい」
私は薬箱から鎮痛剤を取り出して、コップに水を汲んでから一緒に渡す。
「私の使ってるやつだけど、結構効くわよ、これ」
「サンキュ……」
悠理はのろのろ体を起こすと、何とか薬を飲み込んだ。
やっぱり、顔色も悪い。
正直これでは、教室へ行ったところで授業どころじゃないだろう。
仮眠室で休んでいてもいいが、無駄な気がする。
「あんた、帰った方がいいんじゃないの?」
「うーん……そーしよっかな……」
「今連絡するわよ、いいわね?」
携帯で悠理の家に連絡を取ると、運転手さんが至急こちらへ向かうとの返答で。
私は続いて、担任教師へ連絡しようと思い立つ。
「悠理、先生には今私が伝えて来るから、ここで待ってなさいよ」
「ん……悪い、可憐」
悠理はそれだけ答えると、またテーブルへ伏せってしまった。
眉間に皺が寄り、苦しげな表情。
これは間違いなく、家で休んでいないと駄目だと確信した。
「病人は要らない気を遣わないの。じゃ、行ってくるわね」
私が部室を出ようとすると、入れ違いのようなタイミングで清四郎がやって来た。
「あら、どうしたのよ」
「僕は荷物を置きに来たところですよ。……おや」
清四郎は、突っ伏している悠理を一目見るなり、私に向き直る。
「どうしたんですか?」
「生理痛。今鎮痛剤を飲ませたとこ。今日は駄目っぽいから、お迎え頼んだわ」
本当なら、男相手に生理痛って言うのも何だけど、相手は他ならぬ清四郎。
どっか子供な魅録でもない限り、美童にも言える事だけど、顔色ひとつ変えないはず。
思ったとおり、清四郎は得心げに頷いていて、何というか……可愛げはない。
「そうですか。で、可憐はどこへ?」
「職員室。先生に悠理の早退を伝えに行かなきゃいけないでしょ」
そう答えると、清四郎はふむ、と頷いて、私に告げた。
「職員室には僕が行って来ますよ」
「え?」
「今日は確か、悠理のクラスは数学の小テストですからね。早退するとなると、後で補習が必要になるかもしれません。課題で済ませて貰えるように話をつけておきます。可憐は悠理についていて貰えますか?」
立て板に水とばかりに一方的に話を進め、私に有無を言わせぬ口調で告げると、清四郎はくるりとこちらへ背を向けて足早に去って行った。
私は半ば呆然とその背中を見送り───正直、笑いを堪えるのが大変だった。
(あいつったら……本当に、悠理が大事で仕方ないのね)
にやける顔を必死で宥めつつ、悠理の近くへ腰掛ける。
痛みが多少和らいだのか、伏せたままの悠理の表情は、先程よりも穏やか。
そんな悠理の顔を眺めていると、先程の清四郎の様子が思い起こされて、笑えて仕方ない。
勉強が全く得意じゃないこの子のため、学年主席のあの男が、わざわざあの子の担任に交渉して。
しかも課題を与えられたら、きっと全力でフォローするんだろう。
……多少スパルタ教育になり過ぎのような気も、しないではないけれど。
悠理はそれを、ありがた迷惑な友情の延長として、受け取るのだろうか?
それとも、特別の感情のなせる業として、受け取ることができるのだろうか?
情緒障害の男よりはマシだけど、精神的にはかなりお子様の悠理だけに、不安が募る。
(悠理。あんた、とんでもない男に惚れられてるけど、大事にされてるのは本当なのよ)
できる事なら、まだお子様な悠理がいつか、あいつの切ない気持ちに気づいてくれますように。
そしてあいつが、悠理の心が成長して恋愛を真剣に考えられるまで、大人しく待てますように。
不器用で素敵なふたりの将来を案じつつ、私は悠理の傍にいた。
*
風みたいに元気な娘が、大人しいとき。
休憩所になってあげたいって、思ってる無器用な男。
とりあえずは、その真っ直ぐな想いを、応援してあげる。
だから。
迎えの車が来たとき、動けなかった悠理をあんたがお姫様抱っこしてった、って事は。
あの子には黙っといてあげるわよ、清四郎。
(お題配布元:空飛ぶ青い何か。様)
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当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。