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さっそく空飛ぶ青い何か。様から拝借中のお題、3つ目をアップさせていただきます。今回は魅録視点で。
第三者視点でのお題文、思いがけず好評で嬉しいです。
3 真昼のうたた寝
まだ、目が覚めない。
*
昼休みの屋上は、食後の一服には最良の環境。
とはいえこちとら未成年、バレると色々と面倒だから、人目を忍んでやってるが。
「魅録ぅ、あたいも一本くれ」
俺のそんな喫煙癖など気にも留めない親友が、6個目の差し入れ弁当を片してから、声を上げる。
いつもなら軽く応じるが、今日はふと思い出して。
「お前はよせよ。確か帰りに野梨子たちと出かけんだろ?あいつ敏感だからバレるぞ」
表面上は品行方正、かつ潔癖な友人の名を挙げると、悠理ははっとしてから、肩を竦めて。
「あぁ、そうだったなあ……ちぇ」
心底がっかりした表情で、空を見上げたかと思うと、突然その場にごろりと寝転がる。
「お、おい」
「昼休み終わったら、起こして」
言うなり一回大欠伸をすると、それから1分も経たないうちに、静かな寝息が届いてきて。
(おいおい……)
思わず突っ込みを入れたくなる程、悠理はすんなりと夢の中へ入っていった。
「……おや、悠理は優雅に昼寝ですか」
俺が煙草の吸殻を、携帯灰皿に入れてから3分後くらいに、唐突な声がかけられて。
見れば片眉を上げた表情の清四郎が、俺達に向かって歩いてきた。
奴は近くに来るなり、俺に告げる。
「魅録、頼むから校内での喫煙は場所を考えて下さいよ。フォローにも限度があります」
「へいへい、悪いな会長さん」
匂いで察したのだろう、相変わらず敏感な清四郎に、俺は両手を上げ、降参のポーズを取った。
すると清四郎は苦笑いしてから、眠る悠理の傍に腰掛けて、その寝顔を眺めた。
「見事な爆睡ですねぇ」
「飯食ってすぐに寝た。全く、いい度胸してるよな」
俺の言葉に、清四郎は軽く頷いて、ふと手を伸ばして悠理の髪を直した。
………おいおいおいおい。
いくら鈍い俺だって、そんな表情されたら一発で丸わかりだぞ、清四郎さんよ。
眠る悠理を見つめる男の表情は、どっか熱っぽいというか、真剣で。
こいつが抱く感情がどんな種類のもんか、誰だって察する事ぐらいできる。
一度認識してしまえば、今更ながらにこの男の行動の数々に、思い当たる節があって。
上辺は上手に世渡りしてる風の、食えない男が、何だかすごく身近に感じられて。
俺は知らず、笑みを浮かべていたらしい。
ふと気づくと、清四郎は不審げな表情で俺を見ている。
「何だよ?」
「それはこちらの台詞ですよ。僕の顔に何かついてますか?そんな風に笑ったりして」
人に笑われるというのは、このプライドの高い男には、確かに嫌でしかないのだろう。
俺は慌てて表情を引き締めると、奴へ先程気付いた事の理由を尋ねた。
「なあ、清四郎」
「何ですか?魅録」
「お前さ、何で悠理に惚れたんだ?」
清四郎が目を見開く。
普段の鉄仮面っぽい無表情じゃなくて、驚愕に満ちた顔は、明らかに不意を衝かれた顔。
ああ、やっぱり間違いないな。
「……何故そんな事を?」
搾り出すように吐き出された言葉には、通常のような覇気がなかった。
「いや、何となく。俺にとって、悠理は全くそういう対象にならないから、不思議で」
俺が何気なく語った理由を聞いて、清四郎は微かに笑みを浮かべた。
「それを聞くと安心しますね」
「は?」
「万が一にも、魅録がライバルとなってしまっては、勝ち目がないと思っていましたから」
どこか目を逸らせがちに語る言葉には、偽る様子など欠片もなく、こいつの本音が見て取れて。
俺は肩を竦めると、にやりと笑った。
「お前にしては随分と、殊勝な台詞だな。似合わねえよ、清四郎」
「おや、そうですか?」
「ああ。ま、この話は今はいいや。今度2人で呑んだ時にでも、聞かせてもらうわ」
清四郎にウィンクをひとつして、俺は腕時計を示した。
もう、昼休みが終わる。
「悠理を起こさねぇとな」
「……そうですね」
俺達は、静かに頷き合った。
*
悠理はまだ、目覚めない。
きっと。
苦しいぐらい片思いしてる男の気持ちにも、気付いてない。
(お題配布元:空飛ぶ青い何か。様)
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当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。