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仲がいいのか、悪いのか。
※やや大人向けの描写が含まれますので、苦手な方は閲覧をご遠慮下さい。
ただし寸止めですので、ご期待もなさいませんようお願いします。
このまま。
沈んでいければ、いいのに。
『深海魚になりたくて』
真夜中。
部屋で息を潜め、耳に届く雨音を聴いていた。
視界に広がるのは、何度も訪れた部屋の天井。
すぐ隣には、自分を抱き寄せて眠る、裸の男。
一糸纏わぬ姿であるのは、自分も同じなのだけれど。
溜息が、仄暗い部屋の中へ溶けていく。
激しく絡み合った名残り漂う部屋の空気は、どこか濃密で甘ったるい。
窓を開け放ち、全て入れ替えてしまいたいほどに。
でも、外は雨。
不快な湿度の上昇は避けたいから、それもできない。
何よりも、今は男の腕に拘束されて、身を起こすことも叶わぬだろう。
好奇心と執着心だけは、人の何倍も強いから。
視線をずらし、眠る男の無駄に綺麗な顔を眺める。
閉じられた瞼の奥には、深い黒を称えた瞳が隠されている。
純日本的な整った顔立ちは、だけど決して古風ではなく。
普段固めてある髪がそのままになっていると、年齢よりも幼く見えるほど。
───こいつとは『気の置けない仲の友人』だったはず。
少なくとも、男女の快楽を追う関係にはいなかった。
なのに、自分もこの男も、その道を踏み外した。
合意の上だけど、それが空しい。
もう一度、溜息。
「お前には珍しい、憂い顔ですね」
先程までの行為のためか、単に夜だからなのかはわからない、いつもより低い声。
自分のちっぽけな体は、強引に引き寄せられる。
ぴったり密着させられたのは、鍛え上げられた逞しい裸の胸。
荒れ狂うほどの狂態を晒したときとは違う、心地良い体温。
温かい、と思う。
そして。
「気紛れに、優しくなんか、すんなよな」
「心外ですね。僕はお前には、いつも優しいつもりですが?」
「……嘘つき」
片眉を上げて涼しい顔の男に、口元を歪めてみせた。
体がどれだけ密着してても、男の心は遠すぎる。
決して捕まえられぬ場所へ、閉じこもった臆病者。
だから、やっぱり憎まれ口。
「お前って、本当に嘘ばっかり」
ついでに顔を背けようとすると、強引な腕が邪魔をして。
仰向けに固定されたまま、深く深く口付けられた。
「……ん、んんっ」
呼吸すら奪われて、苦しくなって、抗議しようとする声も絡め取られて。
意識まで、遠くなりそうだった。
「は………」
長いキスの後、潤んだ瞳で睨みつければ、相手は真剣な表情。
白刃のような光を孕んだ瞳が、自分を見下ろしていた。
「……何だよ」
掠れた声で呟いて、黒い瞳を睨みつければ、大きな手が頬を包む。
思いがけない優しい感触に、戸惑って。
耳元へ落とされた甘い言葉が、息苦しい。
「信じてもらえなくても構いません。でも、ずっと触れていたい……」
呆れるほどの優しげな声に、ぞくりとさせられて。
仕方なく目を閉じ、覆い被さってくる男の重みと体温を受け止めた。
互いの吐息と嬌声が溶け込み、どろりと纏わりつく感覚の、部屋の空気。
重苦しい水底にも似て。
どうせなら、このまま沈んでしまいたい、と。
まともな意思と理性が快楽に流される前に、そう思った。
*
目を開けたくない。
現実に戻りたくない。
真実が、見えないから。
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当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。