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勝手にシリーズ化させていた『契約』関連の、前作における空白期間を書いてみました。
ぶっちゃけ清四郎が頑張った話ですが(笑)無駄に糖度が高いです。予めご了承ください。
※15日深夜の初回アップ時にミスがありましたので、同日付で一部ファイルを修正しております。
頬を真っ赤に染めながら、見上げる人は。
この上もなく、可愛らしくて。
『誓約書』
目を開けた視界に飛び込んで来る、シーツに包まった華奢な体。
年よりも幼い寝顔の主は、未だ目覚める気配なし。
(……昨日は、無理をさせ過ぎましたかねぇ)
自嘲めいた笑みを漏らし、寝乱れた髪を指に絡めた。
「ん……」
僅かな刺激に反応したのか、少しだけ身じろぎする彼女。
咄嗟に指を外すが、薄い瞼は開かない。
もうしばらく、夢の世界の住人となることが確定したようで。
照れ屋な彼女が気づかぬうちに、寝顔を堪能する。
男性的な精悍さすら漂わせる、整った顔立ち。
でも長い睫毛や色素の薄い髪、澄んだ瞳に肌理細やかな肌は、紛れもない女性のもの。
趣味の喧嘩で昔から生傷が絶えなかったけれど、元は驚く程整っているのだから、性質が悪い。
(昔は可憐に「宝の持ち腐れ」だの、「猫に小判」だの、散々言われていましたね)
美貌を日々磨く事を信条としている友人が、零していた愚痴を思い出す。
───どうして何にもしてないってのに、悠理ったら元がいいのよ!?
ったく、こっちは毎日しっかりケアしてこの状態だってのに、神様って意地悪だわ!
───まあまあ可憐、これで悠理が可憐と同じぐらいにお洒落に気を遣う子だったらさ、
きっと僕達って友達になれてないんだよ?
───美童が言ったとおりですわよ、可憐。
悠理が普通の令嬢として育っていたら、私達きっと知り合ってもいませんわ。
───そうだな、野梨子の言葉の通りだ。
悠理がいなかったら、俺なんて今、ここにいることもなかったぞ。
───まぁ……確かにね。
この子を通したつながりって、案外大きいのねぇ。
放課後の部室で、眠る悠理を眺めつつ語る友人達。
あの日溜まりのような空間は、今もかけがえのない思い出。
そこには、必ず太陽のような笑顔があって。
いつの日からか、あの笑顔を守りたくて、傍にいた。
隠れて涙を流す彼女の、盾になりたくて。
時を経て、想いは募る。
自分の胸は、今も彼女専用の指定席。
泣きたいときも眠れないときも、いつでもひとりにしか許さない、居場所。
(本当に……変わらないな)
感情の起伏が激しく、良く笑い、良く怒り、良く泣くのも。
そして、何の躊躇いもなく自分の胸に飛び込んでくれる、純粋さも。
抱き締める安らぎだけでは満たされぬ程、愛しさは募って。
互いの体温も吐息も、分け合う関係になったのは、必然。
昨夜、悠理を腕に閉じ込めたまま、服のポケットに忍ばせていた箱を彼女に見せた。
驚きで目を大きく見開き、僕を見上げる鳶色の瞳は、微かに揺らいで。
僕は微笑みかけてから、中身を彼女の左手の薬指へ。
小粒のダイヤを嵌めこんだ、艶消し加工済みの鈍い光を控え目に放つ、プラチナリング。
頬を真っ赤に染めながら、僕を見上げる悠理はこの上もなく可愛らしく。
「清四郎……」
「あまり大仰なものだと、お前は嫌がりそうだったから」
サイズは可憐に確かめてあるから、間違いないでしょう?と付け足して。
「悠理。僕と結婚してくれますか?」
「………………っ、う、ん………………」
滝のような涙を堪え、懸命に返答する悠理が、この上もなく愛しくて。
彼女の体が折れそうなほど、強く抱き締めたのは、当然。
不意に、長い睫毛が揺れて、悠理の意識が浮上した。
「……清、四郎?」
ゆっくりと瞼が開いて、鳶色の瞳がぼんやりと、僕の像を映し出す。
他の人間には決して見せられない程に、緩んだ表情をしている僕を。
「おはよう、悠理」
世界でたったひとつの、僕が愛する女性に。
僕はゆっくり顔を近づけ、今日最初のキスを贈った。
*
プラチナリングは、僕達の誓約書。
悠理が僕の胸を借り、僕が彼女の人生を占有するための、誓いの証。
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当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。