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悠理一人称、清四郎がほとんど出ません。糖度は低め…でしょうか。
季節感の全くない、冬の海とか出してます。
もやもやした想いを抱えて。
飛び出した。
『とある日の喧嘩』
両目を蓋で覆ってしまって、何も見えなくしてしまえばいい。
なんて、柄にもないネガティブ思想を抱える自分は、無茶苦茶に嫌だ。
できる事なら、ぶっ飛ばしてしまいたいマイナス思考。
だからとりあえず、バイクに跨ってみた。
そういえば、一人で流すのも久々だったな、なんて。
走り始めてやっと思い出すぐらい、最近自分の頭は働いてなかったんだと気づく。
こりゃあ相当重症だったな、とメットの中で苦笑い。
何だか、少しだけスッキリしてきた心が見えた気がした。
着いたのは、よく仲間同士で走りに来てた、海。
さすがにこんな昼間だし、何よりも平日だし、冬だし。
そりゃ人もいないよなあ、と勝手に納得。
メットを外して深呼吸すると、潮の香りが胸一杯に吸い込まれる。
ちょっとばかし風は強いけど、バイク仕様の服装だから、問題はなし。
さく、さく、さく、さく。
ロングブーツでも、ちゃんと砂浜が小気味良く音を刻む。
水平線は、曇り空の向こうでぼやけ、空と混ざり合う。
でもやっぱり、空は空で、海は海。
違うものは、ひとつになれない。
*
一緒にいて、幸せだと思ってたのは、あたしだけ?
*
次に向かったのは、手近なコンビニ。
自販機で買った缶コーヒーの温もりが、体の中を駆け巡る。
お握り2個と、ゼリー飲料と、コーヒーで、チャージ完了。
笑っちゃうぐらいの健啖家だった、昔の自分とは大違いで、やっぱり笑える。
車で入ると、とにかくお菓子を買い捲ってた記憶があって。
煙草も買ってたかもしれないけど、自分が吸うのは止められてた。
どうせ子供なんて産まないし、いいじゃんかって思ってたけど、大人しく従って。
笑ってくれるのが、見たかっただけなのかもしれない。
何だか、珍しく『女の子』してて、感傷的。
頭を一度、ぶるりと振って、メットを被る。
再度バイクに跨って、さてどこへ行ったらいいか、なんて思案。
思いついたのは、昔からの友達の家だったりするけれど、それは嫌。
きっと皆、優しい上に自分より賢いから、顔を見られただけでバレちゃう。
幸せか?とか。
大丈夫か?とか。
優しい言葉に縋って、泣きたくなっちゃうと、駄目。
元々自分が、泣き虫だから。
どうせなら、行った事のない場所を目指すことにしようか。
*
一緒にいて、幸せだと思ってたのは。
あたしだけだったの?
*
水平線がずっと続く、海岸線をひた走る。
思えば、こんな風に走ったこと、なかったな。
目的地を目指すまでの間なんて、特に注意なんてしてなくて。
ただもう、移動時間は喋ったり笑ったりしてた。
周囲に関心を寄せるぐらいの、心の余裕というか、ゆとりというか。
そんなものを持ってなかった、自分。
だから、喧嘩したのかもしれないね。
お互いに、きちんと見えてるつもりで、見えてなかったのかな?
(………ヤバ)
視界が少しだけぼやけて、慌てて路肩に愛車を停めた。
安全運転しないと、さすがにバイクでこけるのは、いただけない。
そういえば、これを動かすのにも、いい顔されてなかったんだっけ。
幾ら運動神経が良くても、万が一と言うこともあるからって。
こっそり乗って遊んだ後に、必ずと言っていい位、叱られた。
何だか生活指導の先公みたい、って愚痴ったら、更に小言がパワーアップして。
終いには溜息と一緒に、苦しいぐらいの抱擁で御終い。
それでも確かに、あたしを思ってて、くれてたよね。
*
一緒にいて、幸せだと思ってたのは。
あたしだけだったの?
あなたはどうだったの?
*
唐突に、ポケットの携帯が激しく振動。
「あれ……!?」
着歴が有り得ないぐらい、一人の名前で埋まってる。
メールボックスも、同じ。
ずっとバイクで走ってたせいで、気付かなかったようで。
慌てて開封してみると、文句は全部一緒だった。
『早く帰って来い』
「………ったく、もう少し、捻りぐらい入れればいいのに」
見事なまでにガチガチの、お堅いメールが懐かしいぐらい。
ちょっとだけ考えてから、短く返信。
それからバイクに跨って、Uターン。
目指すのは、我が家。
どれくらいかかるかな?
……かかるけど、待っててくれる?
メットの中で、笑顔になってるのは、内緒。
*
『着いたら謝るから、お前も謝れ!』
そうしたら。
一緒にいても、また幸せだと思えるでしょ?
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当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。