[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
タイトルを少し捻ってみたつもりでしたが、外してます。
幾度目かの、喧嘩の後だったような気がする。
合鍵を郵便受けに押し込んで。
一方的なさよならのメールを入れて、携帯は着信拒否にして。
これで終わらせようって、思った。
『ラスト・キスを貴方に』
図らずも、久々の再会を果たしたのは、2年後。
気乗りしないパーティーの席で、ひときわ目立った長身の美形。
周囲がやたらと熱っぽい視線を投げる方向に、佇んでいて。
声をかける事すら、躊躇った。
昔っから大人っぽくて、タキシードでもあんまり違和感なかったけど。
年を重ねて、青年らしさを身に着けて、更に素敵な男になってた。
───本人を目の前にして、絶対に言うことはしないつもりだが。
そして、勇気ある一握りの女性陣が、男を囲んでいて。
ちくんと胸が痛む理由を考えるのは放棄して、顔を背ける。
大丈夫、気づかれてないはずだから。
このまま交わることがなければ、それで終わり。
「……悠理」
最悪のタイミング。
深呼吸してから振り返ると、予想通り片方の眉が上がった、不機嫌そのものの表情。
「あれ、清四郎?いたんだ。久し振り」
「随分なご挨拶ですね」
珍しく、不機嫌を露わにして。
強い光を目に称え、あたいを見下ろしてくる。
思わず、一歩後ずさりしそうになるのを堪える。
「……何だよ」
「それは僕の台詞です」
言うなり清四郎は、あたいの腕を強引に取って。
周囲の注目などお構いナシで、歩き始めた。
「ちょ、な、何!?どこ連れてく気だよ、お前!」
「………」
あたいの抗議は完全にシカトして、ずるずると引き摺られるまま会場を出て。
たまたま停まっていた営業車へとあたいを押し込み、自分も乗り込んだ。
行先を告げると、そのまま奴の表情は凍りつき、最早一言も口を開くつもりはないのを悟って。
あたいも結局、大人しく連れて行かれるままになった。
仏頂面の2名を乗せた運の悪い運ちゃん、ごめん。
着いた先は、何度か泊まった事のある清四郎のマンション。
無言で促されるままに、渋々エレベーターに乗り込み、勝手知ったる玄関を潜る。
落ち着いた色調の重たい扉が、静かに音もなく閉まって。
その刹那。
羽交い絞めにされたみたいに、背中から抱き締められた。
「何すんだっ!」
「………黙れ」
背後から届いた声の低さに、ぞっとした。
びくりと背を竦ませて、動きを止めたあたいを一度解放し。
清四郎は、今度は正面からあたいを抱き締める。
苦しいぐらいに、ぴったりと。
「……っ」
身を捩るけれど、拘束は更にきつくなるばかり。
抵抗なんて、無駄なのかもしれない。
あたいは所詮女だし、こいつは並以上に強い男だから。
仕方なく、息を吐いて抵抗を諦めると。
清四郎の声がした。
「やっと捕まえた」
声に妙な震えが走ってたのが、気のせいだと思えず、上を見上げて失敗。
「せ………」
いつもやたらと自信家で、山より高いプライドを自認してる男が。
あろうことか、泣きそうな顔。
どうして?
「悠理。やっと……逢えた」
あたいの頬を、そうっと撫でる手は優しくて。
降りて来る唇の熱は、あの日と同じ。
抗うことなんて、できなかった。
「………ごめん」
体が溶けそうなぐらい濃厚なキスの後、あたいが零した一言を、清四郎の指が留める。
優しい仕草も、温かい瞳の色も、覚えてるままで。
今度は自分の視界が、じんわりとぼやけた。
「僕も同じです。ごめん、悠理」
「ううん、悪いのはあたいだったから……。ごめんな、清四郎」
「悠理……」
優しい抱擁は、あたいの涙を更に溢れさせる。
「やっぱりお前は、泣き虫ですね」
「嬉しいんだから……いいじゃんかぁ」
「そうですね。嬉し涙だから、仕方ないですね」
清四郎は、ゆっくりと息を吐いて。
あたいは、顔を綻ばせて。
「数年越しの喧嘩は、これで終わりにしましょうか」
「……ん」
泣きたくなるぐらい、甘く切ないキスをした。
*
喧嘩の終わりには、仲直りのためにキス。
次に交わすキスは。
もう一度始まるための、恋人のキス。
04 | 2025/05 | 06 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | ||||
4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 |
18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 |
25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。