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暇人が開設した二次創作保管庫です。「二次創作」をご存知ない・嫌悪を覚える方は閲覧をご遠慮ください。漫画『有閑』の会長と運動部部長を推してます。
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悠理一人称。糖度高めな一作かと(笑)
タイトルを少し捻ってみたつもりでしたが、外してます。

幾度目かの、喧嘩の後だったような気がする。

合鍵を郵便受けに押し込んで。
一方的なさよならのメールを入れて、携帯は着信拒否にして。

これで終わらせようって、思った。

 


 『ラスト・キスを貴方に』

 


図らずも、久々の再会を果たしたのは、2年後。
気乗りしないパーティーの席で、ひときわ目立った長身の美形。
周囲がやたらと熱っぽい視線を投げる方向に、佇んでいて。

声をかける事すら、躊躇った。
昔っから大人っぽくて、タキシードでもあんまり違和感なかったけど。
年を重ねて、青年らしさを身に着けて、更に素敵な男になってた。
───本人を目の前にして、絶対に言うことはしないつもりだが。
そして、勇気ある一握りの女性陣が、男を囲んでいて。
ちくんと胸が痛む理由を考えるのは放棄して、顔を背ける。

大丈夫、気づかれてないはずだから。
このまま交わることがなければ、それで終わり。

 


「……悠理」

最悪のタイミング。
深呼吸してから振り返ると、予想通り片方の眉が上がった、不機嫌そのものの表情。

「あれ、清四郎?いたんだ。久し振り」
「随分なご挨拶ですね」

珍しく、不機嫌を露わにして。
強い光を目に称え、あたいを見下ろしてくる。
思わず、一歩後ずさりしそうになるのを堪える。

「……何だよ」
「それは僕の台詞です」

言うなり清四郎は、あたいの腕を強引に取って。
周囲の注目などお構いナシで、歩き始めた。

「ちょ、な、何!?どこ連れてく気だよ、お前!」
「………」

あたいの抗議は完全にシカトして、ずるずると引き摺られるまま会場を出て。
たまたま停まっていた営業車へとあたいを押し込み、自分も乗り込んだ。
行先を告げると、そのまま奴の表情は凍りつき、最早一言も口を開くつもりはないのを悟って。
あたいも結局、大人しく連れて行かれるままになった。
仏頂面の2名を乗せた運の悪い運ちゃん、ごめん。

 

 

着いた先は、何度か泊まった事のある清四郎のマンション。
無言で促されるままに、渋々エレベーターに乗り込み、勝手知ったる玄関を潜る。
落ち着いた色調の重たい扉が、静かに音もなく閉まって。
その刹那。
羽交い絞めにされたみたいに、背中から抱き締められた。

「何すんだっ!」
「………黙れ」

背後から届いた声の低さに、ぞっとした。

びくりと背を竦ませて、動きを止めたあたいを一度解放し。
清四郎は、今度は正面からあたいを抱き締める。
苦しいぐらいに、ぴったりと。

「……っ」

身を捩るけれど、拘束は更にきつくなるばかり。
抵抗なんて、無駄なのかもしれない。
あたいは所詮女だし、こいつは並以上に強い男だから。

仕方なく、息を吐いて抵抗を諦めると。
清四郎の声がした。

「やっと捕まえた」

声に妙な震えが走ってたのが、気のせいだと思えず、上を見上げて失敗。

「せ………」

いつもやたらと自信家で、山より高いプライドを自認してる男が。
あろうことか、泣きそうな顔。

どうして?

「悠理。やっと……逢えた」

あたいの頬を、そうっと撫でる手は優しくて。
降りて来る唇の熱は、あの日と同じ。

抗うことなんて、できなかった。

 

 


「………ごめん」

体が溶けそうなぐらい濃厚なキスの後、あたいが零した一言を、清四郎の指が留める。
優しい仕草も、温かい瞳の色も、覚えてるままで。
今度は自分の視界が、じんわりとぼやけた。

「僕も同じです。ごめん、悠理」
「ううん、悪いのはあたいだったから……。ごめんな、清四郎」
「悠理……」

優しい抱擁は、あたいの涙を更に溢れさせる。

「やっぱりお前は、泣き虫ですね」
「嬉しいんだから……いいじゃんかぁ」

「そうですね。嬉し涙だから、仕方ないですね」

清四郎は、ゆっくりと息を吐いて。
あたいは、顔を綻ばせて。

「数年越しの喧嘩は、これで終わりにしましょうか」
「……ん」

泣きたくなるぐらい、甘く切ないキスをした。


   *


喧嘩の終わりには、仲直りのためにキス。

次に交わすキスは。
もう一度始まるための、恋人のキス。

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» や~ん!
甘いわ~2人とも♪
そしてハードだわ!ナニがハードって、喧嘩して別れたのかと思えば「数年越しの喧嘩」?!
ナニそれ?そんな喧嘩ありデスカっ?爆
ホントに意地っ張りな2人ですこと(笑)
でも、清四郎のが我慢出来なかったんですねぇw
りん 2008/07/19(Sat)00:46:17 編集
» 彼と彼女の意見の相違(笑)
>りん様
悠理にとっては「別れ」ですが、清四郎にとってはあくまでも「喧嘩」なんですよ。納得してないから。
…ヤダなこんな男…。
そして今は、悠理がいつものように流されているんです。このまんま納得しちゃうんです。
それでも幸せなんだと思います(爆)

コメントありがとうございましたー!
M@管理人 2008/07/19(Sat)00:52:52 編集
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女性
自己紹介:
国産ヒト型40代、夫・息子1人がいます。徒然なるまま…ではないですが、勢いに任せ、所謂二次創作をちまっと数年続けてます。
当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。
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