[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
突発思いつき駄文、悠理視点です。意味はほとんどないでしょう…。
ご訪問&拍手たくさんありがとうございます!
申し訳ありませんが、レス等は本日中に再度こちらで行いますので、今しばらくお待ち下さいませ。
案外好物の、理由。
『ビターチョコアイス』
「お嬢様、おやつを御持ちいたしました」
「ん、ありがと」
メイドが運んできたおやつを見て、あたいは笑顔で礼を言う。
するとメイドはにっこり笑って、一礼してから部屋を去った。
「さってと、食べよっ」
目の前には上品に更に盛られ、生クリームや果物で飾りを施された、チョコアイス。
銘柄も味も指定済みの、大好物。
「いっただっきまーす!」
一口目を口に含むと、濃厚な甘さとほろ苦さが広がった。
(……やっぱ、こんな感じだよね)
カカオ分高めのビターチョコアイスを食べてると、どうしても思い浮かぶ奴。
文武両道に秀でてる上に努力家の、優等生の悪友。
見た目と違って性格にはかなり難ありで、いつも人を見下してるんじゃないかって思えて。
でも本当に困ったときには、ちゃんと助けてくれる。
一見わかりにくい優しさを持ってる、実は案外いい奴。
優しさが、甘さじゃないって事を知ってる奴。
だから、思い出すのかな。
「ご馳走様でした!っと」
運ばれてきたお皿の中身を完食して、あたいは片づけを頼むために内線を使う。
程なく現れたメイドに向かって、「美味かったって伝えておいて」と言付けも忘れずに。
何といっても我侭聞いてもらって、最近おやつとして登場回数が多いのが、これだから。
度重なるリクエストにも文句のひとつも出ない、うちの厨房スタッフは、立派。
……でも。
「どうしてこんなに、ビターばっかり食べたくなっちゃうんだろーな」
頭を掠めるのは、ほんの少しの疑問。
今わかってるのは、自分がビターチョコアイスを頼む日。
(勉強会のない日と……後は、学校でアイツに会わなかった日、とかかなあ)
冷たくて、ほろ苦くて、でもとっても甘くて。
まるでアイツそのもののように、一筋縄じゃいかない味。
そして。
食べた後で、不思議と思い出すのが、あの笑顔。
「……何でだろ?」
ぽつりと漏らした言葉が、部屋の空気にじんわり溶けて。
一瞬だけ、チョコの香りが漂ったような、錯覚がした。
*
(……何て、のんびり考えてた頃が、懐かしい……)
スプーン片手に、ぼんやり空を見上げていたら。
不意に目の前に影が差して、ぱちん、と額を叩かれた。
「うわ!?」
思わずスプーンを落としそうになるのを堪え、あたいは自分の向かいに座ってる男を睨みつける。
すると相手は片眉を上げて、いつもと同じ人を小ばかにするような目で、こっちを見た。
「ったく清四郎、お前いい加減にしろって!」
「おや、何のことですか?悠理」
「……うっさいよ、お前」
あたいは何だかムカムカして、目の前のお皿に盛り付けれられたチョコアイスをばくり、と食べる。
途端に口の中に広がるのは、濃厚なチョコの味わいとほろ苦さ。
ああ、やっぱり。
「なあ、清四郎」
「何ですか?」
清四郎は、あたいの問いかけにも涼しい顔で答えるから。
「お前ってさ、こいつみたい」
「………………何故ですか?」
首を傾げる清四郎に向かって、曖昧に笑ってやった。
*
冷たくて、ほろ苦くて、でもとっても甘くて。
まるでアイツそのもののように、一筋縄じゃいかない味。
だから好きで、だから好物。
だから。
そんな事は、教えてやらない。
04 | 2025/05 | 06 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | ||||
4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 |
18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 |
25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。