[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
清四郎の壊れっぷりが、もう止まりませんがご勘弁を。悠理一人称です。
2 綿の心地
例えば絹みたいな、上質な滑らかさじゃなくて。
欲しいのは、安心感。
*
「悠理……?」
遠くで清四郎の声がするけど、ゴメン、今は起きたくない。
今のあたいは、洗い晒しのシーツと仲良し。
瞼を持ち上げるのすらおっくうで、こうやって顔を埋めているのが、至福。
「眠いんですか?」
清四郎の声が、近くなって。
あたいよりも大きくて力強い手が、そっと頭を撫でる感覚。
本当ならここで目を開けて、笑顔のひとつも見せたいんだけど、今日はホント、勘弁して。
「悠理……悠理」
耳元に、吐息と一緒に清四郎の囁き声が届いてる。
温かくて優しくて、ちょっとくすぐったくて、不思議。
でも全然嫌なんかじゃなくて、むしろ心地いい刺激。
だけど、今だけは、寝かせて。
やがて、清四郎の溜息と、耳に軽く柔らかな、唇の感触。
清四郎の気配が、遠ざかる。
(ごめん……)
心の中に過ぎるのは、謝罪の言葉。
でも、どうしようもなく眠くて駄目。
だから……ごめん。
すると自分の周りの空気が、不意に変わる。
優しく、それでいてちょっと強引な、抱擁を受けてるみたいな。
(……あれ……?)
もぞりと体を動かすと、頭の下に、覚えのある硬さ。
本当は寝心地がいいわけじゃない筈なのに、不思議と安心できる枕。
───清四郎の、腕。
先程までドロドロだった意識が、驚異的なスピードで覚醒。
あんなに重かった瞼が、今は何の造作もなく開いた。
「……おや、起こしてしまいましたか?」
清四郎が気遣わしげな表情で、こっちを覗き込んでる。
それはいい、いいんだけど、どう見てもこの体制って。
「……なんで?」
「ハイ?」
「なんで、お前まで寝てんだ……?」
気がつけば、清四郎の片腕は自分の頭の下敷き、もう片方の腕は腰に回されて。
寝たままの体制で、抱き寄せられてる状況。
いけしゃあしゃあと涼しい顔の清四郎に、あたいは疑問をぶつける。
すると奴は、にっこり笑って。
「睡眠不足は僕も同じです。一晩中お前を寝かせなかったんですから。忘れましたか?」
いらん一言までおまけにつけて、とんでもない台詞を、さらりと吐いた。
「………!!」
あたいは絶句して、今度こそ体中の血液が沸騰するかと思うぐらい、全身熱くなって。
それでも、やっぱり清四郎の腕の中が、心地良かったのも本当だから。
心持ち擦り寄って、奴の胸に顔を埋めた。
「悠理?」
怪訝そうな清四郎の声がして、腰から移動した手が頭を撫でてくれて。
少し自分よりも高めの体温とか、抱き締められた時に届く心臓の鼓動とか、匂いとか。
清四郎の全部を感じて、シーツに顔を埋めてる以上に安心して。
自然に、瞼がもう一度、閉じた。
*
綿の感触みたいな、安心できる感触が好き。
温かくて、優しくて。
どんな時でも、眠れそうだから。
それはきっと、貴方に抱き締められたときの、安心感。
(お題配布元:空飛ぶ青い何か。様)
04 | 2025/05 | 06 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | ||||
4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 |
18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 |
25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。