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続きにあたる「流星群」を拍手お礼としてアップいたしましたので、興味のある方はご覧ください。
夏の始まりの風物詩。
と、いうことで。
『ビアガーデン』
事の始まりは、今朝のTVで放映されていたニュース。
毎年決まってこの時期に始められる、北でのイベントに。
やたらと反応を示したという、剣菱財閥会長夫妻。
「……だから、この有様ですか」
「そゆこと……」
「相変わらず、思いつきで行動するよなあ、お前ん家」
「思いつきを即座に実行できるだけの行動力が備わっているだけに、凄まじいですわよ」
「まあ、いいじゃないの。おじさまとおばさまの事は、今始まった事じゃないでしょ」
「そうそう。せっかくご招待を受けたんだし、楽しもうよ、ね?」
剣菱邸の庭の一角に、半日で設えられたのは、ビアガーデン。
色も鮮やかな提灯が無数に吊るされ、光に囲まれた一角で。
僕ら6人の目の前に、見苦しい大人2名の酒盛り光景。
「時宗、今夜はとことん呑むだがや!」
「おお万作!勿論だとも、呑み明かそう!」
……悠理と魅録の溜息に、同情の眼差しが注がれた。
*
「こうなりゃ、親父たちだけ楽しませても勿体ねえ!俺らも呑むぞー!」
どこか自暴自棄な魅録の雄叫びを合図に、僕らも酒盛りになだれ込み。
気がつけば4時間が経過して、辺りには死屍累々。
珍しく、魅録までもが撃沈し、気がつけば僕ひとり。
……いや、屍と化しているのは4人で。
(……悠理?)
仲間内でも実は一番の酒豪である、彼女の姿を探す。
「……あれ、清四郎?どったの」
「それはこちらの台詞です」
ひとり、悠理は煌々と明かりが灯る一角から離れ、据え付けられたベンチへ掛けて。
星空を眺めつつ、カウント不可能な程呑んだはずのジョッキを傾けていた。
「隣、いいですか」
「ん」
ベンチに置かれたジョッキの隣には、定番の枝豆。
明かりから離れ、微かな夜風を浴びて深呼吸すると、酔いが風に攫われて抜けて行くような感覚。
隣の悠理は、ちびちびと、でもペースを落とすことなくジョッキを空にして。
それでもウェストラインに全く支障がないのが、驚異的。
「お前もまだ呑む?」
「そうですね、いただきましょうか」
ジョッキを持ち上げて尋ねてくる悠理に答え、頷いた。
「……さすがに、腹キツいなあ」
「でしょうな」
2人で呑み始めてから、1時間。
大人2名の声が時折風に乗って届くのは、完全に無視を決め込んで。
気がつけば、ジョッキが互いに4杯目。
肴は、星。
「なあ、清四郎」
唐突に、悠理が僕の名を呼んだ。
「何ですか?悠理」
「夏、だな」
「……そうですね」
空を仰いで、呟く。
「もう少し待てば、流星群も見えますよ」
「流星群って……大量の流れ星だよな。マジで?」
「おや、よく覚えてましたね。そうですよ、7~8月は多いんです」
「へぇー……」
僕と同じように、空を仰ぐ悠理。
彼女の大きな瞳に星が映って、驚く程に綺麗で。
不思議な事に、遠く感じた。
「悠理」
「ん?」
「流星群、見たいですか?」
「?……うん」
「真夜中に起きていなくてはならないので大変ですが、今度見に行きましょうか」
「うん!じゃ、アイツらも……」
「──悠理」
僕は手を伸ばし、腕の中に悠理を閉じ込めて。
耳元に、呪文のように囁きを落とした。
「2人で、行きましょう」
「………………うん」
唇で触れた真っ赤な頬は、熱かった。
*
2人きりの、密かな約束。
これもまた。
僕らの夏の、風物詩。
(掲載期間 2008.7.21~2008.7.27)
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当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。