３ 岩辺に腰を落とし 【夏の夜の海５のお題】

空飛ぶ青い何か。様からお借りしたお題、３作目です。清四郎一人称。
既に展開が読めた方もおいででしょうが、ベタな展開には目をつぶってやって下さいませ。
ちょっと過去話が入り乱れ過ぎと申しますか、わかりにくいように思います。ご容赦を。

３　岩辺に腰を落とし

見つめるのは、鏡のような静けさの海。

　　　＊

『もしもし？』

よそいきの声は、違和感。

「お久し振りです。元気でしたか？」
『……うん』

年よりも幼い返答の仕方に、安堵して。
変わらないものを、必死に探す。

あの日の貴女を。

 

 

『変わったね』
「そうですか？」
『うん』

『すごく、素敵になった』

言葉に詰まる。
あの日の貴女が、いない。

「お世辞なんていりませんよ」
『お世辞じゃないよ』

『……本当だもん』

「……ありがとうございます」

苦い気持ちを噛み締め、礼を告げる。

 

切れた通話。

再度かけ直すには、余裕がなかった。

　　　＊

見つめるのは、鏡のような静けさの海。
動かない、海。

僕の心のように。






（お題配布元：空飛ぶ青い何か。様）