５ 穏やかな夜 【夏の夜の海５のお題】

空飛ぶ青い何か。様からお借りした『夏の夜の海５のお題』完結編です。
短文な割に一人称が入れ替わり、大変読みにくい文章となっておりますが、ご容赦願います。

５　穏やかな夜

鏡が割れる。
耳に届く、旋律で。

　　　＊

「歌声………！？」

片時も忘れない、声が届いた。

走る。
走る。
走る。

歌声を辿って、ひたすらに。

 

 

月明かりの下。
佇む細い背中。

波音が遠い海に、染み入る歌声。

月明かりに溶けて、消えてしまいそうで。
抱き締めたのは、必然。

 

「！？」

肩を竦め、息を飲む気配。
確かに、あの日のままの貴女。

一度腕から解放して、向かい合う。

「悠理」
「……清四郎」

互いに名を呼び、呼ばれる。
視線が絡む。

互いに腕を伸ばし、抱き合う。

 

月明かりの下。
静かな海。

仄かな明かりの下の、ぎこちない抱擁。

見ているのは、月だけ。

　　　＊

夏の夜の海。
穏やかな海。

もう一度、出会う。

（お題配布元：空飛ぶ青い何か。様）