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「こういうのも、たまには面白いでしょう?」
「うん!」
知的好奇心旺盛……とはいかないが、あらゆるものに対して素直に感動できる彼女を連れて。
出かけたのは、真夜中。
『流星群』
辿り着いた先は、UFO研究会で穴場として教えられた事のある高台。
周囲に民家もなく、観測にはおあつらえ向きで、なおかつ知名度が低い穴場。
実際に僕ら以外の人影はなく、観測地としては最適だった。
現在の時刻は、午前2時を過ぎた頃。
並んで南の空を見上げていると、5分程していきなり悠理の歓声。
「わ!清四郎、あれ!」
悠理が指差した先で、白い輝きが空を走り、消えた。
「なあ、今のが流星?」
「そうですよ。さすがに見つけるのが早いですね、悠理」
「すっげー、あたい生で見たの初めて!あ、また!」
悠理は興奮気味に叫びつつも、空に向かって更に目を凝らす。
彼女の大きく見開かれた瞳が見つめた方角で、またひとつ、流星。
「綺麗だなー!」
「でしょう?」
僕も視線を悠理から空へと移し、しばし流星探しに意識を集中させた。
音もなく降り注ぐ、流れ星たち。
限られた期間だけ、楽しむことができる天体ショウ。
悠理は空に魅せられて、口まで微かに開いている始末。
単純明快、良く言えば純真無垢な彼女がここまで興味を惹かれている様子が、よくわかって。
嬉しいと感じる一方で、ほんの少しだけ胸が痛いのも本当。
(僕はここにいるんですがね……)
苦いものを噛み潰しつつ、視界に入った流れ星へ、思わず念じた。
『僕を見て。』
「……清四郎?」
不意に声をかけられて、はっとする。
慌てて視線を悠理に向けると、彼女は僕の腕にしがみつき、僕をじいっと見つめていた。
「何ですか?悠理」
「いやお前さ、大丈夫か?ココ、凄く皺寄ってるぞ」
白い手が僕の眉間に触れて、その温もりが、苦い感情を溶かしていく。
「何でもありませんよ」
「そっか?ならいいけど。ずっと運転もしてきたんだし、車ん中で休んだ方が良くね?」
悠理はなおも僕を案じ、視線を、そして心を僕に向けている。
そんな事実に思い至って、僕は自然と笑みを浮かべた。
「そうですね。あまり体が冷えてしまってもいけないですから、休みましょうか」
車に戻ると、途端に倒れ込むように眠ってしまった悠理。
静かな寝息が、空間に溶ける。
(星の力のおかげでしょうかね、お前が気遣ってくれたのは)
寝顔を眺めつつ、柄にもない事を考えて、苦笑い。
神頼みならぬ流れ星頼みなど、この自分の柄じゃない。
それとも、悠理の前ではそれ程までに、自分のペースを乱されるのか?
「……せい、し、ろ……」
不意に悠理が、僕の名を呼んだ。
「悠理?」
声をかけても反応をしないところを見ると、寝言のようで。
(僕の夢……見てくれて、いるんですか?)
子供のようなあどけなさを宿す寝顔に、愛しさが募る。
「悠理、いい夢を」
僕は悠理の額にかかる髪を掻き揚げ、軽くキスを落として。
眠る彼女に膝掛けをそっとかけてから、隣のシートで目を閉じた。
*
夢の中。
流星群の降る中で、僕は君を抱き締めて。
永遠を、誓った。
願わくば、いつか、現実でも。
(掲載期間 2008.7.28~2008.8.8)
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当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。