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季節的に「熱帯夜」がまだ起こるうちの方が、駄文のお蔵入りを防げるかと思いまして。
駆け足で上京していた際の妄想です。無駄に暑さが増します。
理由は、わかってるけど。
『熱帯夜』
(……暑い……)
真夜中の覚醒。視界には、見慣れた天井。
ここは、間違いなく自分の家。
本当なら、空調だってバッチリ効いてて。
真夜中に寝苦しくて目覚める事なんて、まず考えられない。
しかし。
(コイツのせいで……)
あたしは今夜、確実に、睡眠障害。
暗闇に慣れた目に飛び込んで来た、やけに綺麗な男の寝顔。
シャワー後の男には普段のオールバックの面影はなくて、下ろした前髪が額を覆ってる。
睫毛が案外長いってのも、こんな至近距離で見るからこそ発見できる、事実。
静かな寝息を立てる薄い唇は、今は緩やかに結ばれていて。
そういえばこいつには、地味に女装も似合ってたな、何てぼんやり思い出した。
本人の前でうっかり口にしようものなら……相応の制裁を受ける事、間違いないだろうが。
(……あ、動ける)
珍しく、やたらと頑丈な腕でがっちり拘束されてない事実に気付いて。
あたしはゆっくりと体をずらし、そっと離れた。
ダブルベッドの下に脱ぎ散らかされた衣類から、自分のTシャツを引っ張り出す。
パジャマ代わりに購入したそれは、相手の男にはぴったりサイズだけど、自分にはかなり大きめ。
すっぽり被ると、お尻まで隠れてしまうのが驚き。
下着も身につけようか逡巡して、結局そのまま床に足を下ろす。
素足が貼り付く感覚を楽しみながら、窓まで辿り着くと、外を眺める。
分厚いガラス窓の向こう、むせ返るような暑さの中、虫達が合奏。
都会のど真ん中だけど、贅沢にも広大な敷地が広がるウチの庭だからこその、光景。
微かに届く熱い空気と虫の音を感じながら、じっと外を眺める。
「……どうしました?」
不意に声がして、背中から抱き竦められたけれど、その声も気配ももう馴染みのもの。
「んーん、別に。目が覚めただけ」
あたしはさらりと答えてから、裸の腕にそっと自分の手を添えた。
見た目以上に筋肉質で力強い両腕が、あたしをがっしり捉えて離そうとしない。
背中に届く心音と、微かに感じる息遣いが、心地良い。
「外、暑そうだよな」
「そうですね。これで何日連続でしょうね?熱帯夜は」
あたしの言葉に同意したと思ったら、頭上に感じたのは男の頭の重み。
「重いぞ」
「さほどでもないでしょ?それに、慣れてるはずですよ、お前は」
抗議の声など端から無視して、微かに吐息で笑う気配が届くのが、ちょっと面白くない。
でも、この腕を振り解くなんてできないのが、わかりきってるから諦めて。
男の背中に、体重を預けてみた。
「……やっぱ暑い」
「この部屋は快適だと思いますけど?それに僕には、お前の体温が心地良いです」
「服着ろよ、このスケベ!」
「男にスケベは褒め言葉だと思いますがね」
背後で男が笑い声を上げて、そのまま体を反転させられて。
降りてきた唇を受け止めると、やけに熱く感じられて。
外の熱気が宿ったのかと、一瞬思った。
そのまま体を持ち上げられて、ゆっくりとベッドまで運ばれる。
横たえられたと同時に圧し掛かる男の重みと、吐息の熱さに眩暈を覚えて。
「悠理……」
耳朶へのキスと一緒に落とされた、掠れた声に惑わされて。
「……清四郎……」
あたしの喘ぎは、薄い唇へ飲み込まれた。
*
結局また、眠れない。
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当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。