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暇人が開設した二次創作保管庫です。「二次創作」をご存知ない・嫌悪を覚える方は閲覧をご遠慮ください。漫画『有閑』の会長と運動部部長を推してます。
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哀悼花様からお借りした素敵お題、その2です。悠理一人称から、最後にちょっとだけ清四郎へチェンジ。
今回は連作にせず、年代もばらばらな短文を寄せ集めるかたちとなりました。今回は中学編。
頭の中でのイメージは、清悠コンビの学級委員が誕生した少し後なんですが…伝わらないなあ(涙)

02. 職員室

とにかく嫌いな場所なのに、頻繁に出入りする羽目になったのが、不覚。


   *


担任教諭に泣きつかれ、教室で授業に使う資料とやらの製本作業を、黙々と片づける。
もう一人の委員の野郎は、何やら別件で学年主任だかに呼ばれてるらしく、作業はあたい一人。
(……ったく、サイアク)
心でずっと不満を零しつつも、何とか終わらせ、担任の元へ提出しに行った。
「先生、これ終わりました」
「あ?え、ええ、ありがとう剣菱さん」
どこかおっかなびっくりの態度の担任は、それでも製本された資料を受け取り。
ざっと点検し終わってから、やや引き攣りながらも笑う。
「どうもお疲れ様、もう帰っていただいて結構ですよ」
「はい」
やれやれ、と思いつつ、担任に一応無言で頭だけ下げてから、背を向ける。
「ええ、さようなら……あ、剣菱さん!」
担任が、不意に自分を呼び止めた。
「……何か?」
「どうかしら?委員のお仕事には、慣れましたか?」
「……はあ、まあ」
いきなりそんな事を聞かれ、どう答えたら良いかなんてわからず一応頷くと、担任は顔を輝かせ。
「まあ、良かったわ!今だから言いますけれど、正直ね、あなたにクラス委員が務まるかどうか、私は不安だったんですよ。でも菊正宗君もいることだし、あなたも私が思っている以上にしっかりと務めを果たしてくれて……本当に良かったわ。これからもよろしくね」
「……はい」
『菊正宗』の名前を出され、正直物凄くムカついたけど、担任に言っても仕方のない事で。
あたいはもう一度頭を下げ、今度こそ職員室から脱出した。
 

(すっかり遅くなっちまったなぁ……)
窓の外は、もう空が赤い。
せっかく今日は、早くからダチの家に遊びに行こうと思ってたのにな、なんてぼんやり考える。
最近物凄くストレスが溜まってて、夜遊びでもしなきゃ、やってらんない。
「……帰ろ」
教室へ戻り、薄っぺらい鞄を引っ提げて、玄関へのろのろ歩く。
今日は車も来られない筈だから、このままダチの家を目指すのも、いいかもしれない。
さてどうしようか、と夕焼け空を見上げたとき。
「剣菱さん!」
後ろから自分を呼び止める、耳慣れてしまった声。
振り返ると、笑顔で走ってきたのは、もう一人のクラス委員。
「……何だよ?菊正宗」
「いや、別に用はないですけどね」
そう言ってから、奴は何故かやたらと上機嫌そうにあたいを眺めると、不意に頭を下げた。
「先生から頼まれた作業、一人でやらせてしまいましたよね?すみません」
「……いいよ、別に。お前忙しかったんだろ?仕方ないじゃん」
生真面目なところがあるこの男は、どうやらあたいに対して心苦しかったようで。
そんな事のためにわざわざ走ってきたのかと思うと、驚きだった。


「気にすんなよな、そんなもん。じゃ、あたいこれで」
もう一度奴に言って、今度こそあたいはくるりと背を向け、歩き出す。
すると背後から、もう一度声が飛んできた。
「待って、剣菱さん。家に帰るんだよね?送って行きますよ」
「はぁ?」
「もうすぐ暗くなりますよ。女性の一人歩きは危ないでしょう」
どこまでも真面目そうな委員の、普通の女に対してだったら当然言うべき言葉に、爆笑。
「……け、剣菱さん?」
面食らった表情の男に向かって、あたいは笑いながら答えた。
「お前、面白いな!あたい、そんな冗談言われたの初めてだ!最っ高!」
「え?」
「イヤ、あたいマジで、お前見直したかも。菊正宗って面白い奴だな!んじゃ、また明日」
「あ、ちょ、け、剣菱さん!」
後で菊正宗が何か喚いていたけれど、完全にシカトして、あたいは歩き出した。
珍しく、夕焼けがすっごく綺麗に見えて。
久々に、真っ直ぐ家に帰ってみるのもいいかもしんない、なんて思いながら。


  ***


「……冗談なんかじゃ、ないんですけどね」
すっかり遠くなった彼女の背中を目で追いつつ、僕はぼそりと呟いてみる。
普段の僕の登下校は、ほぼ100%野梨子と一緒。
野梨子が昔から毛嫌いしている彼女に声をかける隙など、作れるはずもなく。
今のこの時間、彼女を見つけて、正直話をしてみるチャンスだと思っていたのだが。
(まさか、「送って行く」と言って笑われるなんて、予想もつかなかった)
剣菱悠理という女性が、いかに世間一般の女性から遠い所にいる存在であるのかが、伺える。
そして、それ以上に、興味が湧いた。

財閥令嬢として、いやそれ以上に女性として、型破りで。
なのに、あれ程人間的な魅力に溢れている少女。
そんな彼女に、少しでも、近づいてみたいと思う。
この気持ちに対して、どんな名を与えれば良いのかは、わからないけれど。
次こそは、一緒に帰るきっかけを作ろうと、僕は密かに決意した。





(お題配布元:哀悼花様)

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» 02. 職員室 【学校生活で5つのお題】
(IMEの調子が悪く、ちゃんとコメントできるか心配なんですが・・ほんとのブラインドタッチになってます。誤字、脱字ご容赦願います・・・)

中学時代までさかのぼってのSSは、あまり好きではないのですが・・・Mさまの文章はすんなり受けいることができるので、ちょっと自分でも驚き!!ほんわかとした二人のSS、もっと読みたいです。悠理がかわいくて・・・好きです!!
抹茶 2008/08/11(Mon)00:31:29 編集
» ありがとうございますー
>抹茶様
PCの調子がお悪い中でのコメントありがとうございます!
中学時代の話をまともに書いたのは、実は初めてなのですが、受け入れていただけて何よりでした。
今回のお題の中で、もう1作ぐらい中学時代の話を綴ってみたいと思っていますので、そちらもお楽しみいただければ、幸いです。
M@管理人 2008/08/11(Mon)10:36:17 編集
» わ~い
中坊時代だぁ♪
悠理らしい解釈の仕方ですよねぇ。
清四郎も、まさか「送って行く」で爆笑されるとは夢にも思わず(笑)
確かに、この頃の悠理にゃ冗談にしか聞こえんかったコトでしょうw
悠理たん最高!
りん 2008/08/12(Tue)00:32:17 編集
» 良かったー
>りん様
コメントありがとうございます。
私の中での中学生な彼らのイメージは、この文章に書いたような関係なのでしょうね。
「無自覚シリーズ」にもある程度通じるような2人組ですが、気に入っていただけたなら、何よりです。
M@管理人 2008/08/12(Tue)00:59:49 編集
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国産ヒト型40代、夫・息子1人がいます。徒然なるまま…ではないですが、勢いに任せ、所謂二次創作をちまっと数年続けてます。
当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。
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