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書きたかったのは『第3者から見ても仲良しな2人』ですが…相変わらず、全然伝わってないですね(涙)
一応2度目の高3時代をイメージしてます。
03. 事務室
教室でもなく、職員室でもない空間。
*
「すみません、在学証明書の発行をお願いしたいのですが」
滅多に訪れない場所である事務室へ、敢えて足を踏み入れた理由は、在学証明書の発行依頼。
使用するのは自分ではなく、父親で。
「お前の扶養に関する証明に使うんだから、急いで用意してくれ」と。
今朝食卓に着くなり頼まれ、急ぎ処理を行う羽目となったのだ。
申込用の書類へ記載し、提出してから、備え付けの長椅子に腰掛けて作業を待つ。
高等部の事務室は、事務長と事務員2名の静かな空間。
実際のところ、あまり一般生徒が足を踏み入れる機会はないだろう。
友人達の間で一番ここを利用するのは、電車通学の可憐。
「定期券買うのに、証明書作ってもらわなきゃいけないのよ。でもまあ、どうせ電車通学者なんて少ないから、ウチの事務室まだ空いてていいけどね。でも作業がトロいのよー」
苦笑いしつつ話していたのは、先月だったろうか。
ふとそんな事を考えたとき、意外な人物が、事務室の扉を開けて入ってきた。
「あれ?清四郎、どうしたの?」
「僕は在学証明書の発行手続きですよ、親父に頼まれましてね。悠理こそ、どうしたんですか?」
「あたい?届けモンだよ。あ、すみませーん」
事務員を呼ぶ悠理の手には、マチ付きの角3封筒。
ご丁寧に玉紐できっちり封をされたその封筒は、結構な厚みであろうと見て取れた。
悠理は事務員に小声で説明をし、封筒を渡すとこちらへやって来て、僕の隣へ腰を下ろした。
「どうしました?」
「ん?いや、お前暇そうだから、隣にでもいようかと思って。邪魔?」
「いえ、大丈夫です。そうですね、助かりますな」
僕は笑顔で頷いて、悠理と他愛もない話を始めた。
隣へちょこんと腰掛けた悠理の髪は、相変わらずふわふわと揺れている。
いつもの習慣で手を伸ばし、頭を軽く撫でてやると、悠理は猫のように目を細めた。
「何だよ、急に」
「すみませんね、つい癖で。ところで、先程の封筒の中身は何なんですか?」
僕が尋ねると、悠理は肩を竦ませて、首を微かに振って見せる。
「あたいも知らないんだ。今朝、兄ちゃんから預かっただけだから」
「豊作さんからだったんですか」
「そー。何か『OB会の原稿云々』とか言ってた気がすっけど、よく覚えてねーな」
悠理は首を傾げて記憶を紐解いているようだったが、やがてお手上げというように肩を竦めた。
「お前らしいですな。それにしてもアナログですね、手書き原稿とは」
「兄ちゃんも文句言ってたぞ、メールのが楽なのに、って。編集作業するOBの意向なんだって」
「それはまた面倒な」
「だろ?お前がOB会幹事になったら、改正してやれよな、そこんとこ」
「おや、何故僕が?」
「だって兄ちゃんが言ってたぞ。生徒会長って、幹事すんだろ?」
悠理の発言で、僕は初めてそんな事実を思い出した。
「ああ、そういえば僕が幹事長でしたねえ。昨年その関係書類を見ていたのを思い出しましたよ」
僕はそう答えてから、思考を巡らせて。
「言っておきますが、お前も幹事ですからね、悠理。その代毎の生徒会役員が幹事役なんですよ」
「げ、マジ?面倒じゃんかぁ」
「どうせお前は何もやろうとしないでしょ。まあ事務は僕がやりますから、大丈夫です」
「そっか、頼むよ清四郎ちゃん」
「……菊正宗君、お待たせしました。証明書ができましたよ」
「あ、清四郎、書類できたってよ」
「本当ですね。どうもありがとうございます」
悠理と話をしていた間に、時間は案外早く過ぎて。
僕は無事、封筒に納められた証明書を入手した。
「では行きましょうか、悠理。待ち時間に付き合ってもらったお礼に、帰りに何か奢りますよ」
「え、マジ?やっりぃ!」
上機嫌になった悠理と僕は談笑しつつ、扉を閉めて、その空間から立ち去った。
*
僕らが去った後で、事務員たちが「仲がいいわねー」と笑い合っていたことは、知らない。
(お題配布元:哀悼花様)
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当ブログへ掲載している作品は、小学生当時連載開始から読んでいた思い出の作品。数年前にちょっとだけ二次創作を綴っていましたが、いきなりブームが再燃しました。
更新ペースは超・いい加減でございますので、皆様どうぞご容赦を。